年末株高劇場、影の主役はFRBか?
米国ウィークリー2019年12月17日号
- 米国は12/15に中国製のスマートフォンなどを対象に15%の関税を上乗せする「第4弾」の残り1,600億ドル分の発動を予定していたが、中国との合意を受けて適用を見送った。米通商代表部(USTR)の発表によると、適用済みの制裁関税については家電・家具など第1-3弾(2,500億ドル分)にかける25%の税率は維持する一方、9月に発動したスマートウォッチなど1,200億ドル分の関税率は15%から7.5%に下げると報じられた。米国株式市場もこれら一連の「トランプ劇場」による貿易協議での第1段階の合意を好感し、12/13にはダウ工業株30種平均株価(NYダウ)が28,290ドルの史上最高値を付けた。ただし、中国は米国から農産品の輸入を拡大するものの金額は後日に発表すると述べ、米国はトランプ大統領が中国に年400-500億ドル規模の米農産品の購入を確約するよう求めるなど、今後の協議の先行きに懸念を残す面もある内容だった。
- 制裁関税第4弾については、8/1に10%の税率で発表され、その後15%に引き上げられた上で9/1に約1,120億ドル分が先行して発動されていた。今回の第1段階の合意は、この先行部分の税率が半分になっただけであり、7月時点と比較すると状況は悪化しているという見方もできよう。7月のNYダウは7/12以降月末まで27,000ドル台前半で推移していた。当時より制裁関税が厳しくなっている点に着目すれば仮にNYダウが27,000ドルを下回っても不思議ではないだろう。
- 当時と現在との大きな違いは、FRBが総資産を8月末の3兆7,600億ドルから拡大させている点にある。折しも12/12に、FRBの金融調節を担当するニューヨーク連邦準備銀行が年末にかけての金融調節の方針を公表し、ドル金利高騰を防ぐために越年の資金供給を計4,900億ドル実施する予定となった。予定通りに資金が供給されれば年末時点のFRBの総資産は過去のピークだった2015-2017年の4兆5,000億ドルに迫る水準の4兆3,000億ドル前後に膨らむと見られる。QE4(量的金融緩和・第4弾)を意識し始めた市場参加者が株式の買い意欲を高めている可能性もあろう。特に、2019年夏まで低迷していた日本株が8月末以降に上昇に転じたことはFRB、ECB、および日銀の総資産残高合計が8月末以降に増加していることと関係している可能性があることも考えられよう。
- その一方、S&P500構成企業における時価総額上位5社占有率が1999年以来の16.5%に達し、米国株全体の時価総額の対GDP比率は149%に上昇した。過剰流動性により株式が買われ過ぎている可能性にも要注意だろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(12/13現在)
■主な企業決算の予定
●12月17日(火):シンタス、フェデックス
●12月18日(水):ペイチェックス、ゼネラル・ミルズ、マイクロン・テクノロジー
●12月19日(木):ダーデン・レストランツ、コナグラ・ブランズ、ナイキ
●12月20日(金):カーマックス
■主要イベントの予定
●12月17日(火)
・ダラス連銀総裁が講演、ボストン連銀総裁が講演、ニューヨーク連銀総裁が記者会見
・住宅着工件数(11月)、鉱工業生産(11月)、求人件数(10月)
・欧州新車販売台数(11月)、英失業率(8-10月)
●12月18日(水)
・シカゴ連銀総裁が講演
・タイ中銀が政策金利発表
・ユーロ圏CPI(11月)、独IFO企業景況感指数(12月)、英CPI(11月)
●12月19日(木)
・大統領選挙、民主党指名争う候補者による討論会(ロサンゼルス)
・英中銀が政策金利発表、インドネシア中銀が政策金利発表
・経常収支(7-9月)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(12月)、新規失業保険申請件数(12月14日終了週)、中古住宅販売件数(11月)、景気先行指標総合指数(11月)
・豪雇用統計(11月)、ニュージーランドGDP(7-9月)
●12月20日(金)
・暫定予算の期限
・ポルトガルから中国へのマカオ返還20周年
・GDP(7-9月、確定値)、個人所得(11月)、個人支出(11月)、ミシガン大学消費者マインド指数(12月)
・ユーロ圏消費者信頼感指数(12月)、英GDP(7-9月、確定値)
●12月23日(月)
・シカゴ連銀全米活動指数(11月)、新築住宅販売件数(11月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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