4Q企業業績見通しのハードルを乗り越えるか?
米国ウィークリー 2020年1月21日号
- 2019年10-12月期の決算発表の時期が到来した。JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM)、シティグループ(C)などの大手銀行株が債券トレーディング収入や消費者向け金融事業の好調な推移を受けて好決算となり、航空会社のデルタ航空(DAL)も北米需要の堅調さから好決算となった。また、医療保険を手掛けるユナイテッドヘルス・グループ(UNH)も民間保険加入者増を受けて好決算を発表するなど、現時点までは好調な滑り出しのように見える。
- ただし、1/17発表のファクトセットのEarnings Insightによれば、S&P500構成企業における2019/4Q(10-12月)の純利益に係る実績および予想の総計が前年同期比2.1%減となっており、12/31時点の同1.5%減から悪化している。更に、4Qの純利益率は2Qおよび3Qの11.5%から0.8%ポイント低下の10.7%と悪化している。純利益率に関しては、2020/1Q(1-3月)および2020/2Q(4-6月)の予想が各々11.0%、11.5%であり、4Qでの底入れ観測が強まっているものの、足元の4Qにおける純利益および純利益率の見通し悪化は、1/17時点でダウ工業株30種平均(NYダウ)が史上最高値を更新し、終値で29,348ドルを付ける株式市場の最近の動向とは矛盾しているように見受けられる。
- S&P500の11業種の内、8業種における4Qの純利益率見通しが前年同期比で悪化している。特に「エネルギー」が同2.7%ポイント低下の4.7%、「情報技術(IT)」が同1.3%ポイント低下の21.4%、「一般消費財・サービス」が同1.1%ポイント低下の5.9%と低下幅が大きい。その一方、純利益率の見通しが改善している3業種は「公益事業」、「金融」、「素材」であり、それぞれ同0.8%ポイント上昇の9.8%、同0.6%ポイント上昇の16.2%、同0.5%ポイント上昇の8.5%である。純利益率見通しが改善している業種は当面の狙い目となり得るように思われる。
- FRBは短期金利の急騰を防ぐための短期金融市場への資金供給を年明け後も連日実施しており、時価総額上位企業を中心とした買いの加速を呼び込みやすい状況を後押ししている。FRBの金融調節を担うNY連銀より1/14に、国債などを担保に資金供給を行うレポオペを少なくとも2月中旬まで継続する旨、発表された。株式市場の時価総額を名目GDPで割って算出する「バフェット指数」は既に155%に達しており、ITバブル時のピークである2000/3の水準を超えた。足元の企業業績見通しを軽視して買われ過ぎているとの懸念は否定できない面もあろう。楽観の中にも懐疑的な視線を織り交ぜる必要がある局面だろうか
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(1/17現在)
■主な企業決算の予定
●1月21日(火):キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ネットフリックス、ZBナショナル・アソシエーション、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、IBM、コメリカ、ハリバートン
●1月22日(水):シトリックス・システムズ、SLグリーン・リアルティ、テキサス・インスツルメンツ、レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル、ベイカー・ヒューズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、フィフス・サード・バンコープ、アンフェノール、ノーザン・トラスト、プロロジス、キンダー・モルガン、アボットラボラトリーズ
●1月23日(木):ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズ、SVBファイナンシャル・グループ、スカイワークス・ソリューションズ、Eトレード・ファイナンシャル、インテュイティブサージカル、ユニオン・パシフィック、VF、サウスウエスト航空、キンバリー・クラーク、コムキャスト、M&Tバンク、トラベラーズ、キーコープ、インテル、アメリカン航空グループ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ハンチントン・バンクシェアーズ、フリーポート・マクモラン
●1月24日(金):アメリカン・エキスプレス、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ、シンクロニー・ファイナンシャル、ネクステラ・エナジー
●1月27日(月):ワールプール、パーキンエルマー、F5ネットワークス、ジュニパーネットワークス、アーコニック、DRホートン
■主要イベントの予定
●1月21日(火)
・世界経済フォーラム(ダボス会議、24日まで)
●1月22日(水)
・FHFA住宅価格指数 (11月)、中古住宅販売件数 (12月)
●1月23日(木)
・ECBが政策金利発表、ラガルド総裁記者会見
・新規失業保険申請件数 (1月18日終了週)、景気先行指標総合指数 (12月)
●1月27日(月)
・新築住宅販売件数(12月)、ダラス連銀製造業活動(1月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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