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地政学リスクによる原油価格高騰は続くか?

米国ウィークリー2019年9月18日号

Source: Bloomberg
  • 原油価格の高騰は続くのだろうか?9/14にサウジアラビアの主要石油施設がイエメンの反政府武装組織によるドローン攻撃を受け、同国の石油日量生産能力の約半分が停止した。これにより世界の石油供給量の5%にのぼる石油生産に支障が生じると想定され、NYMEXのWTI原油先物が9/16に1バレル63ドル台まで上昇した。9/15にトランプ大統領が米国の戦略石油備蓄の放出許可を発表したことから株式市場は落ち着いた動きを示し、NYダウは9/16終値が27,076ドルと前日比142ドル安の下げにとどまった。債券市場も米国10年国債利回りが9/13には1.90%超まで上昇していたものの9/16には1.84%近辺まで低下。株式相場の先行き不透明感を表すVIX指数も9/16は14%台と低水準に留まった。
  • トランプ大統領はイランの関与が明確になれば報復攻撃することを示唆し、本来なら緊張が高まって株式市場への下落圧力となりそうである。しかしながら、9/11にトランプ大統領が対イラン強硬派のボルトン補佐官を解任したことから米国とイランの交渉の余地があると市場が見ている可能性に加え、米中貿易摩擦問題が米中両国の歩み寄りによって好転していることも株式市場を下支えしていると思われる。10月開催予定の米中閣僚級貿易会議に向けて9/11に中国が25%の追加関税対象から除外する米製品のリストを公表し、それを受けてトランプ大統領は2,500億ドル分の中国製品への関税を30%に引き上げる制裁の発動を10/15まで2週間先送りすると発表。9/12には中国政府が米国産農産物の輸入手続き再開を表明した。更に9/13には中国が対米報復関税で大豆や豚肉など一部の農産品を対象から除外すると報道された。それに加え、9/18のFOMCにおける0.25%の利下げ期待も株式市場をサポートしていると思われる。
  • 原油価格の持続的上昇は現時点では難しいと考えられる。その理由は、先ず、米国は原油輸出国であり世界的な供給不足懸念に対しては米国からの原油輸出増により供給不足を補える。次に、原油価格の上昇基調維持のためにはグローバル経済の景気拡大が必要となると考えられる中、グローバル経済の寄与度が高い中国経済は9/16発表の工業生産(8月)、固定資産投資(1-8月)、小売売上高(8月)のいずれも前年同月比の伸び率が7月を下回った。原油価格が落ち着けば株式市場にはプラス要因だろう。その一方、米中問題に関し、5/5および8/1に発表された追加制裁関税のように株価が高値圏にあると米政権による対中強硬政策発動の可能性が高まる点は要注意だろう。(笹木)

S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(9/16現在)

■主な企業決算の予定

●9月17日(火):フェデックス、アドビ

●9月18日(水):ゼネラル・ミルズ

●9月19日(木):ダーデン・レストランツ

●9月24日(火):オートゾーン、カーマックス、ナイキ

■主要イベントの予定

●9月17日(火)

・FOMC(18日まで)

・連邦選挙委員会(FEC)、選挙に関する虚偽情報防止のシンポジウム開催

・第74回国連総会(ニューヨーク、30日まで。24日から一般討論演説)

・イスラエル再選挙

・鉱工業生産(8月)、NAHB住宅市場指数(9月)、証券投資(7月)、

・独ZEW景況感指数(9月)、中国新築住宅価格(8月)

●9月18日(水)

・FOMC声明発表、パウエルFRB議長記者会見

・ブラジル中銀、政策金利発表

・住宅着工件数(8月)

・欧州新車販売(7、8月)、ユーロ圏CPI(8月)、英CPI(8月)

●9月19日(木)

・アップル、ゲーム定額サービス「アップル・アーケード」スタート

・英イングランド銀行、南ア中銀、台湾中銀、インドネシア中銀、政策金利発表

・経常収支(2Q)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(9月)、新規失業保険申請件数(14日終了週)、景気先行指標総合指数(8月)、中古住宅販売件数(8月)

・豪雇用統計(8月)、ニュージーランドGDP(2Q)

●9月20日(金)

・ボストン連銀総裁講演

・アップル、iPhoneの新モデル発売

・家計純資産(2Q)

・ユーロ圏消費者信頼感指数(9月)

●9月23日(月)

・シカゴ連銀全米活動指数(8月)、マークイット米国製造業・サービス業・コンポジットPMI(9月)

●9月24日(火)

・FHFA住宅価格指数(7月)、S&PコアロジックCS20都市指数、S&PコアロジックCS住宅価格指数(7月)、リッチモンド連銀製造業指数(9月)、コンファレンスボード消費者信頼感指数(9月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)



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