注目のヘルスケア関連銘柄10選
ノボノルディスクとイーライリリーは肥満糖尿病治療薬の開発により好調な業績を上げています。この記事では注目のヘルスケア関連銘柄10選を紹介します。取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。
肥満治療と糖尿病治療で投資が活発化
世界保健機関(WHO)は、10億人以上が肥満を抱えていると推定しています。肥満とそれに伴う2型糖尿病という2つの疫病が世界的に蔓延したことで、肥満治療薬と糖尿病治療薬を開発した大手製薬会社2社は大躍進を遂げています。ノボノルディスクの時価総額は、本拠地デンマークのGDPである4312億5000万ドルにほぼ匹敵するまでに急成長しました。
一方で、米国発のイーライリリーの市場展開はかなり遅かったものの、その業績には目を見張るものがあります。直近の12ヵ月間で、同社の株価は139%上昇しました。わずか数年前まで、同社の時価総額は1000億ドル程度にとどまっていました。現在その額は7000億ドルを超え、世界で最も価値のある製薬会社となっています。
数多くの医薬品を販売してきたノボノルディスクよりも、イーライリリーがさらに高い評価を獲得した要因は何でしょうか。要因の一つには、デンマークの株式市場を対象とするファンドマネージャーに対し、個別銘柄の保有額を制限していることが挙げられます。ナスダック・コペンハーゲンの時価総額6220億ユーロのうち、3分の2を同社が占めているため、これは大きな問題となっています。
また、2社間の評価の不均衡が生じているさらに根本的な原因として、ノボノルディスクにはないアルツハイマー病の有望な治療薬をイーライリリーが開発していることも挙げられます。
次世代の世界的な特効薬を生み出す競争で優位に立ち続けるには、莫大な費用がかかります。ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティス、グラクソ・スミスクライン(GSK)といった製薬大手は、資金調達と負債削減のため、研究集約型以外の事業を分社化してきました。そして、サノフィも現在同様の動きを見せています。
2024年に注目のヘルスケア関連銘柄10選
ここでは、2024年に注目のヘルスケア関連銘柄10選を紹介します。取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。また、過去の値動きは将来の株価動向を示すものではありません。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)
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アッヴィ(ABBV)
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アストラゼネカ PLC(AZN)
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イーライリリー・アンド・カンパニー(LLY)
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ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
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メルク・アンド・カンパニー(MRK)
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ノバルティスAG(NOVN)
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ノボノルディスク A/S(NOVO)
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ロシュ・ホールディングAG(RO)
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サノフィSA(SASY)
アボット・ラボラトリーズ(ABT)
アボット・ラボラトリーズは医療機器、診断薬、栄養剤、ジェネリック医薬品を製造する米国の製薬会社です。
2023年の通期決算で同社は、401億900万ドルの売上高に対し、57億2300万ドルの純利益を計上しました。糖尿病治療、心臓血管、神経疾患のための医療機器が売上高の42%を占め、次いで診断薬が100億ドル、栄養剤が81.5億ドル、新興市場向けブランドジェネリック医薬品が50億ドルの売上高となっています。同社の医薬品事業は2013年に分社化されました。
2024年2月23日時点での時価総額は2065億2000万ドルでした。
アッヴィ(ABBV)
アッヴィは米国の研究開発型製薬企業であり、2023年、アボット・ラボラトリーズから製薬事業を独立させる形で設立されました。その社名は、独立元のアボットと、フランス語で生命を意味する「vie」に由来しています。
2023年の通期決算で同社は、543億1800万ドルの売上高に対し、48億6300万ドルの純利益を計上しました。事業別では、免疫領域が261.4億ドル、神経科学領域が77.2億ドル、腫瘍領域が59.2億ドル、美容領域が52.9億ドルの売上を計上しています。
関節炎治療薬の「ヒュミラ」は総売上高の27%を占めています。同社の最も有名な医薬品には「ボトックスビスタ」が挙げられます。ボトックス関連の同年の売上高は、ボトックス化粧品が26.8億ドル、ボトックス治療薬が29.9億ドルでした。
2024年2月23日時点での時価総額は3122億2000万ドルでした。
アストラゼネカ PLC(AZN)
アストラゼネカは、オックスフォード大学と共同で開発した新型コロナウイルスワクチン「バキスゼブリア」で知られています。180カ国以上に31億回分が分配された同ワクチンにより、2021年の同社の売上高は374億1700万ドルとなり、全体の売上高を急増させました。同社の躍進は止まることなく、2023年の2型糖尿病治療薬「フォシーガ」の売上高は59億6000万ドル、肺がん治療薬「タグリッソ」の売上高は58億ドルにも上りました。
同社は1999年にスウェーデンのアストラテックABと1993年にICIから独立した英国のゼネカ・グループPLCが合併して設立されました。現在は本社を英国のケンブリッジに構えています。
2024年2月23日時点での時価総額は1555億8000万ポンドでした。
イーライリリー・アンド・カンパニー(LLY)
米国発のイーライリリーは業績が一時低迷していたものの、血糖値を調整して食欲を抑制するGLP-1受容体作動薬「チルゼバチド」によって再び経営が勢いづいています。人口の40%が過体重または肥満である米国において、同治療薬は「マンジャロ」という商標名で2型糖尿病治療薬として、また「ゼップバウンド」という商標名で肥満治療薬として認可されています。この2つの医薬品の売上は軒並み好調で、直近1年間で株価を139%押し上げています。同社はその需要の高まりを受け、ドイツに工場を設立中です。
2023年の通期決算では、売上高が341億2400万ドル、純利益が57億1300万ドルでした。同社は2024年の予想売上高を404〜416億ドルとしています。
2024年2月23日時点での時価総額は7081億ドルでした。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは米国の製薬および医療技術会社です。
2023年の通期決算では、売上高851億6000万ドル、純利益133億3000万ドルを計上しました。その売上の3分の2を新薬事業が占めています。売上上位には、売上高108億6000万ドルの自己免疫疾患治療薬「ステラーラ」と97億4000万ドルのがん治療薬「ダラザレックス」が入りました。医療技術では、外科領域で100億ドル、整形外科領域で89.4億ドルを売り上げました。
同社はコンシューマーヘルス事業をケンビュー(KVUE)という新会社に分離し、2023年5月に新規株式公開(IPO)を果たしました。
2024年2月23日時点での時価総額は3864億9000万ドルでした。
メルク・アンド・カンパニー(MRK)
米国の製薬会社であるメルク・アンド・カンパニーはドイツのメルク(MRCG)の米国子会社として始まり、1917年以降はそれぞれ独立しています。
2023年の通期決算でメルク・アンドカンパニーは、売上高601億1500万ドル、純利益3億6500万ドルを計上しました。がん治療薬「キイトルーダ」は同社の世界売上高の42%を占めています。その他主力商品では、HPV治療薬「ガーダシル」が88.9億ドル、糖尿病治療薬「ジャヌビア」が33.7億ドルの売上高を記録しました。
また、大規模な獣医療事業も展開しており、2023年の売上高は56億ドルに達しています。
2024年2月23日時点での時価総額は3275億5000万ドルでした。
ノバルティスAG(NOVN)
ノバルティスはスイスの製薬会社で、1996年にチバガイギーとサンド(SDZ)の合併により設立しました。2003年、同社はすべてのジェネリック医薬品およびバイオシミラー事業をサンドに統合し、2023年には上場会社として独立した企業となりました。
サンドのジェネリック医薬品事業を除く継続事業において、2023年のノバルティスの売上高は454億4000万ドル、純利益は85億7000万ドルでした。医薬品売上高の上位には、心臓病治療薬「エンレスト」の60億ドル、関節炎治療薬「コセンティクス」の49億8000万ドル、免疫疾患ITP治療薬「PROMACTA(レボレード)」の22億7000万ドルが並んでいます。
2024年2月23日時点での時価総額は2062億7000万スイスフランでした。
ノボノルディスク A/S(NOVO)
ノボノルディスクは、糖尿病と肥満の治療に特化したデンマークの製薬会社であり、「オゼンピック」と「ウゴービ」という2つの肥満治療薬で目覚ましい成功を収めています。「セマグルチド」と呼ばれるこれらの薬剤は、2型糖尿病治療と体重減少の目的で処方され、週1回注射します。同薬剤は「GLP-1アゴニスト療法」と呼ばれるクラスの薬で、インスリンを増加させつつ、血糖値を下げ、食欲を抑制させる効果を示します。オゼンピックは2018年2月に、ウェゴービは2021年6月に米国で上市しました。
2018年に1118億3000万デンマーク・クローネだった売上高は、2023年には2倍以上の2323億クローネに増加しました。純利益は2022年比51%増の836億8000万クローネと、こちらも2018年の2倍以上の伸びを示しています。株価は過去5年間で416%上昇しました。
同社は、高まる自社医薬品への需要に対応できず、議決権株式の77%を保有する親会社のノボ・ホールディングスに資金援助を要請しました。ノボ・ホールディングスは2024年2月、ノボノルディスクからの配当金を充当することで、医薬品受託製造会社のキャタレント(CTLT)を約165億ドルで買収すると発表しました。
2024年2月23日時点での時価総額は2兆8540億デンマーク・クローネでした。
ロシュ・ホールディングAG(RO)
ロシュはスイスの医薬品・診断薬会社です。1960年代には抗うつ薬「リブリウム」と抗不安薬「バリウム」を発売しており、現在では、がん治療薬で高い評価を得ています。
2023年の通期決算では、売上高604億4000万スイスフラン、純利益123億6000万スイスフランを計上しました。医薬品部門の売上高は全体売上の77%を占めています。売上の上位には、売上高64億スイスフランの多発性硬化症治療薬「オクレバス」、41億5000万スイスフランの血友病A治療薬「ヘムライブラ」、37億7000万スイスフランの乳がん治療薬「パージェ」、37億7000万スイスフランの肺がん治療薬「テセントリク」が並んでいます。
同社は、バイオテクノロジーのパイオニアである米国のジェネンテックを完全子会社としているほか、日本の中外製薬(4519)の株式も保有しています。
2024年2月23日時点での時価総額は1868億6000万スイスフランでした。
サノフィSA(SASY)
サノフィはフランス発の製薬・ヘルスケアグループです。サノフィのワクチン部門の前身であるサノフィパスツールは、世界最大規模のヒト用ワクチンの製造販売会社となっています。同社の躍進には、皮膚炎、喘息、副鼻腔炎治療用の生物学的製剤「デュピクセント」が貢献しており、同薬の2023年の売上高は107億1500万ユーロに上りました。
同社は消費者向けヘルスケア事業を分社化し、フランスを拠点とする上場企業にすることを計画しています。2024年2月、ブルームバーグは、ブラックストーン(BX)とCVC(CVC)の2企業が同部門の買収案を検討していると報じました。2022年、ブラックストーンは同社の多発性骨髄腫治療薬「サークリサ」の開発費用に最大3億ユーロを投資することで合意していました。その見返りとして、同社はサークリサの売上に応じたロイヤルティをブラックストーンに支払うことを約束しています。
2024年2月23日時点での時価総額は1122億4000万ユーロでした。
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