【米国株 ウィークリーレポート】 今週の注目イベントの内容に一喜一憂する展開に
今週の米国株は景気先行の経済指標、四半期決算そしてFRB要人の言動に一喜一憂する不安定な展開が予想される。それぞれの注目ポイントは?詳細は米国株ウィークリーレポートをご覧ください。
【サマリー】
・不透明感が漂ってきたアメリカの個人消費
・個人の貯蓄が尽きかけ現在は借金で消費をする状況に
・チャールズ・シュワブ、ネットフリックス、テスラの決算に注目
・経済指標では景気先行指標が変動要因となる可能性あり
・20日から21日にかけてウォラー理事などFRBのキーマン達が講演を行う
不透明感が漂ってきたアメリカの個人消費
アメリカの商務省が14日に発表した3月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比1.0%減と、2か月連続で減少した。
内訳をみるとインターネット通販などの無店舗小売りが1.9%と増加したものの、ガソリンスタンドが5.5%減と急速に落ち込んだ。
また家電が2.1%、自動車関連が1.6%、家具が1.2%とそれぞれ減少した。22年以降からの推移を確認すると、昨年の後半以降、個人消費の落ち込みが目立つようになってきた。
アメリカ小売売上の推移
アメリカの消費動向(消費者マインド)を考察する際、連邦準備理事会(FRB)が公表している消費者信用残高も重要な指標である。
この経済指標はクレジットカードなど個人向けの信用供与の残高を示すが、直近のデータによれば消費者信用残高の合計額は4.8兆ドル超と過去最高を更新した。リボルビング払いの合計額も急速に増加の一途を辿っている。
これらの動向は、コロナパンデミックによりアメリカ政府から3回に渡って支給された給付金(コロナ給付金)が底を尽きかけ、個人の貯蓄に余裕がなくなっていることを示唆している。
アメリカ消費者信用残高の推移
では次に、その貯蓄動向をチャートで確認してみると、アメリカ政府が最後に現金給付を行った21年3月をピークに急速に減少していることが分かる(下チャートの点線)。
直近の推移を確認すると、昨年6月に底打ち感が出ており若干ながら回復の傾向を維持してはいる。
しかし、消費者信用残高が過去最高を更新するなか、3月の消費者物価指数(CPI/前年比)では住居費が8.1%、サービスが7.1%といずれも高止まりしていることが判明した。そしてコモデティ市場では、原油価格(WTI)が再び反発のムードにある。
借金をして個人が消費をする状況にあるなか、インフレが低下しないリスク(=インフレが高止まりするリスク)が顕在化すれば、消費者の利払い負担が増すだろう。また、長引く高インフレは景気不安を高め企業は採用活動を絞ることが予想される。このような負のスパイラルにアメリカ経済が陥れば、経済のけん引役である個人消費は急速に冷え込むことになろう。
アメリカの貯蓄動向
チャールズ・シュワブ、テスラ、ネットフリックスが決算を発表
今週の米国株は、引き続き決算にらみの展開が続くだろう。市場参加者の関心は金融機関の決算に向いている。
金融システム不安を受け、年初来から株価が39%急落しているチャールズ・シュワブ(SCHW)が17日に1Q決算を発表する。コンセンサス予想は1株利益(EPS)が$0.9、売上高が$5.154Bとなっている※。
※:ブルームバーグのコンセンサス予想
金融システム不安を受けて約8兆ドルの市場規模を誇るエージェンシーMBS(住宅ローン担保証券)市場に動揺が広がっている。ウォールストリートジャーナル紙によれば、チャールズ・シュワブは2,370億ドルと多額のエージェンシーMBSを保有しているという。今回の決算を乗り切っても、インフレと金利の動向次第では同社が金融システム不安を再燃させる可能性はくすぶるだろう。
先行きリスクが意識され、同社の株価は20日MAすら突破できずに低空飛行の状況が続いている。
チャールズ・シュワブの株価チャート
今週は18日に動画配信サービス大手のネットフリックス(NFLX)、19日に大手電機自動車のテスラ(TSLA)がそれぞれ1Q決算を発表する。
ネットフリックスのコンセンサス予想は1株利益(EPS)が$2.87、売上高が$ 8.18 B※1、テスラのそれは1株利益(EPS)が$0.86、売上高が$ 23.49 B※2となっている。これら企業の決算内容はアメリカの株価指数、特にナスダック100指数(NDX)を大きく動かす要因となり得るため注目しておきたい。
※1,2:ブルームバーグのコンセンサス予想
ネットフリックスとテスラの株価チャート
今週注目しておきたいアメリカの経済指標は?
現在、アメリカの株式市場では景気の先行きリスクが意識される状況にある。ゆえに、経済指標で米国株が上下に大きく振れる展開が予想される。
今週、注目しておきたい経済指標は、以下4つの景気先行指数である。
【注目のアメリカ経済指標】
・4月ニューヨーク連銀製造業景気指数(17日/予想:-18.0)
・4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数(20日/予想:-19.7)
・3月景気先行指標総合指数(20日/予想:-0.7%)
・4月購買担当者景気指数(PMI)速報値(21日/総合の予想:51.2)
上で取り上げた経済指標は、いずれもアメリカの景気動向を予想する上で重要である。
上から2つの経済指標は、ISM製造業景気指数と高い相関関係にある。下のチャートを見ると両指数とも低下基調にあるが、4月は前月から改善する見通しとなっている。
景気先行指標総合指数では雇用、消費財受注、非国防資本財受注、建設許可件数、株価、マネーサプライなど景気に先行して反応する10項目の経済指標から算出される先行指数に注目したい。下のチャートをみるとマイナス圏での推移が続いている。3月は、前月から落ち込む予想となっている。
今週21日に発表される購買担当者景気指数(PMI)は近年、景気の方向性を予測する上で重要な経済指標として多くの市場参加者に注目される。下のチャートをみると昨年12月で底打ち感を強め、景気判断の分かれ目である「50」を上回り回復の基調にある。しかし4月は製造業、サービス業そして総合でいずれも3月から低下する見通しとなっている。
強弱入り乱れる状況と見通しとなっているが、いずれの景気先行指標はいずれも市場参加者が抱く景気リスクの思惑を大きく左右するだろう。よって、一つ一つの結果に対してどのような反応を示すのか?をチェックすることは、短期的な米国株のトレンドを考える上で重要な材料となろう。
特に、強い結果に対して株価指数が下落する場合は、利上げリスクが再びマーケットのテーマに浮上していることを示唆するシグナルとなり得る。CMEのFEDウォッチによれば、5月会合での0.25%利上げは完全に織り込まれている。一方、6月会合では約70%の確率で5.00~5.25%で据え置き予想となっている(一番下のチャートを参照)。つまり現時点では、5月会合で利上げサイクルが終了すると市場参加者は予測している。
各経済指標の推移
FRB要人の言動も米国株の変動要因に
今週20日以降、FRB要人の講演などが予定されている。
連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は20日、Global Interdependence centerのイベントに参加する。同理事は先週14日に一段の利上げが必要との考えを示した。
クリーブランド連銀のメスター総裁は同日、アクロン大学主催のイベントで経済と金融政策の見通しについて議論する。質疑にも応じる。同総裁も今月4日の講演でインフレが長引く可能性に言及し、追加利上げを支持する姿勢を示した。
21日にはアトランタ地区連銀のボスティック総裁とフィラデルフィア連銀のハーカー総裁が、経済の情勢や見通しについての講演を行う。
ボスティック総裁は13日、5月会合で0.25%の利上げを実施すれば利上げサイクルをいったん休止できるとの見方を示した。ハーカー総裁は11日、フェデラル・ファンド(FF)金利を5%超に引き上げ、その後しばらくはその水準を維持すると述べた。
次回の連邦公開市場委員会(FOMC、5月2日~3日開催)が近づくなか、FRB要人の言動は各市場の参加者が抱く利上げ政策の思惑に影響を与えるだろう。
なお、ウォラー理事とハーカー総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ。
米利上げ政策の予想確率
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