【IG米国株レポート】 焦点は中東情勢とテスラの決算 / 今週の米国株は下値トライを警戒しておきたい
13日の外為市場と金価格の動きは、世界的に市場の心理が悪化に傾いていることを示唆した。ゆえに今週の米国株は下値トライを警戒したい。米国株の下落要因として注目したいのが、中東情勢のさらなる緊迫化とテスラの決算である。詳細はIG米国株レポートをご覧ください。
※ナスダック100の見通しについては、こちらのレポートをご覧ください
サマリー
・13日の外為市場では米ドル、日本円、スイスフランが買われた
・一方、国際商品市況では金価格が急騰し市場心理の悪化傾向を示唆した
・これらグローバル市場の動きを考えるならば、今週の米国株は下値トライを警戒したい
・今週の注目材料は、中東情勢の新たなニュースとテスラの3Q決算となろう
市場心理の悪化を示すサイン
米ドル、日本円そしてスイスフランが上昇
先週13日のグローバル市場で筆者が注目したのが、外為市場の動きだった。
この日の米債市場では利回りが低下した。それにもかかわらず、外為市場では米ドル買い優勢の展開となった。米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は、再び107ポイント台を視野に米ドル高トレンドへ回帰している。
そして、13日の動きでより注視すべきは、米ドル買い以上に日本円とスイスフランが米ドルに対して上昇したことである(下のパフォーマンスチャートを参照)。これらの通貨(日本円とスイスフラン)は、市場心理が急速に悪化する局面で米ドル以上に上昇することがある。
13日の外為市場で、米ドル買い以上に日本円とスイスフランの買い圧力が高まった状況は、世界的に市場心理が悪化の方向に向かっていることを示唆した。
また、米国債の買戻し(米金利の低下)と米ドル高が同時に発生した状況も、安全資産への需要が高まっている動きと捉えることができる。
米ドル相場の動向:10月13日
金価格の急騰
市場心理の悪化は、国際商品市況でも見られた。
この点を端的に示唆したしたのが13日の金価格(GOLD)の急騰だった。
その時の状況を日足チャートで確認すると、滅多に見られない大陽線が示現し21日線や50日線のみならず、弱気相場を象徴する2つの短期レジスタンスラインすらも一気に突破したことが分かる。
上で述べたとおり13日の外為市場は米ドル高優勢の展開となった。米ドル高は金価格の下落要因である。それにも関わらず金価格が急騰した事実は、世界的に市場心理が悪化の方向へ傾き、安全資産の需要が高まっていることを示唆している。
金価格のチャート:日足 23年4月以降
米銀の好決算でも主要指数は下落
13日の米国株市場はダウ平均(DJI)こそ小幅に上昇して終えたが、他の主要な株価指数は下落した。
この日、米大手銀行のモルガン・チェース(JPM)が第3四半期(7~9月期)の決算を発表した。収益の柱である純金利収入(NII)が30%増の229億ドルとなり、通期のNII見通しも従来の870億ドルから890億ドルに上方修正した。
一方、ウェルズファーゴ(WFC)も第3四半期(7~9月期)の決算を発表し、純金利収入が前年同期比で8.3%増の131億ドルと、アナリスト予想平均の128億ドルを上回った。
両銀行とも売上高と一株利益(EPS)がアナリスト予想を上回り、この日の株価は上昇して終えた。しかし、主要な株価指数が下落した状況は、経済の先行きリスクの方を強く意識した動きと捉えることができる。
そのリスクを高める要因として今週は、以下で述べる中東情勢に注目したい。
米銀行株と主要株価指数の動向:10月13日
今週の注目材料
中東情勢のヘッドライン
市場心理が悪化の方向へ傾いている最大の要因は、中東情勢のさらなる緊迫化に対する市場参加者の懸念である。
イスラエル軍は14日、パレスチナ自治区ガザでの「大規模な地上作戦」を準備していることを明らかにした。陸海空から連携して攻撃する次の段階に入る可能性があるという。
一方、レバノンの親イラン民兵組織「ヒズボラ」のアルマナルTVは、イスラエル軍が拠点とする4カ所を攻撃したと伝えた。
そしてイランのアブドラヒアン外相は先週、レバノンのベイルートでハマスおよび過激派組織「イスラム聖戦」の幹部と会談した。また、同外相は14日、カタールの首都ドーハでパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの指導者ハニヤ氏とも会談した。
こうしたイランの動きをけん制すべく、オースティン米国防長官は14日、原子力空母ドワイト・アイゼンハワーを東地中海に派遣すると発表した。米軍の艦隊派遣に対してトルコは地域の緊張をさらに高めると懸念している。また米国は、カタールにヒズボラとの仲介役を依頼したとの報道もある。
各国の思惑が交錯するなか、イスラエルとハマスの武力紛争がイランやその勢力を巻き込んで拡大する場合、中東情勢のさらなる緊迫化を受けたリスク回避のムードがグローバル市場で急速に高まることが予想される。
ゆえに、今週の米国株のトレンドを考えるうえで最も注視すべきは、中東情勢に関する新たなニュースとなろう。中東情勢のさらなる混迷を伝える情報が多く伝われば、米国株は下値をトライすることが予想される。
企業決算ではテスラが焦点に
米電気自動車大手のテスラ(TSLA)は18日、第3四半期(3Q)の決算を発表する。
同期の世界販売台数は前四半期比で6.7%減の43万5,000台となり、市場予想(45万9,949台)を下回った。
また、相次ぐ値下の影響により第3四半期の収益は243.7億ドル(前四半期249.27億ドル)、一株利益は0.646ドル(前四半期0.780ドル)と、それぞれ前四半期から減収減益となる見通しである。
アナリストが予想する現時点での第4四半期(4Q)の見通し(ガイダンス)を確認すると、3Qから収益改善が予想されている。景気の先行きリスクが意識されているタイミングで3Q決算が予想を上回っても、ガイダンスで投資家の期待を裏切る結果となれば、テスラ株は下落する可能性がある。
決算を受けてテスラ株が下落する場合、米国株全体のムード悪化につながることが予想される。
一方、ガイダンス(見通し)も含めて今回の決算内容が予想以上に良好な内容となる場合は、テスラ株の上昇が米国株全体をサポートすることが予想される。
しかしそのような展開となっても、株高が一時的な現象で終われば、上で述べた中東の地政学リスクに対する市場参加者の警戒心の高さを認識することになろう。
テスラの決算予想
テスラ株のチャートポイント
テスラ株(TSLA)のトレンドを日足チャートで確認すると、現在はテクニカルの面でトライアングルの攻防となっていることが分かる。
直近の株価は、50日線(13日時点250.29レベル)でサポートされている。3Q決算が株安の要因となる場合は、50日線の下方ブレイクとトライアングルの下限をトライする展開を想定しておきたい。
テスラ株がトライアングルの下限(上昇トレンドのサポートライン)を完全に下抜ける場合は、9月27日の安値234ドル水準のトライが次の焦点として浮上しよう。このサポート水準をも下方ブレイクする場合は、8月18日の安値212ドルの水準を視野に下落幅の拡大を警戒したい。
一方、決算が株価の上昇要因となる場合は、トライアングル上限のライン(抵抗ライン)のトライおよびブレイクアウトが焦点となろ。このラインは今週、267.70台から265.20台へ推移していく。
テスラ株のチャート:日足 23年4月以降
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