良好な臨床試験結果を受け、第一三共の株価が上昇
日経平均株価の多くの銘柄が下落する中、第一三共はがん治療薬であるパトリツマブ・デルクステカンとエンハーツ®の良好な臨床試験結果を発表し、株価は1週間で約3%の上昇を見せた。
3月第4週、多くの企業の株価が下落する中、第一三共(4568)は好調に推移した。
良好な臨床試験結果を受けて同社の株価は3月上旬に上昇し、相次ぐ銀行破綻や世界的な金利上昇などへの懸念による下落トレンドの影響を相殺した。
第一三共は、がん、脳卒中、血液凝固などの治療薬に特化した医薬品メーカーであり、とりわけ、がん領域と循環器領域の治療に注力する。
同社の収益性と株価は、新薬の開発と市販薬の継続的な販売競争に左右されすい。3月第3週、がん治療薬の良好な臨床試験結果を受けて同社の株価は上昇し、日経平均をけん引した。
試験結果を受けて第一三共の株価が上昇
第一三共は、1ヶ月の間に2種類の医薬品に関する臨床試験結果を発表した。いずれも良好な結果を示しており、同社の収益源として期待できる。
3月20日、同社は、肺がんおよび乳がんの治療薬であるパトリツマブ・デルクステカンが、引き続き良好な臨床活性を示したことを発表した。
3月第2週には、乳がん治療薬「エンハーツ®」が複数の臨床試験で有効かつ持続的な作用を示したことを発表した。3月15日のエンハーツ®事業説明会では、エンハーツ®ががん領域でグローバル トップ10に入ることを2030年ビジョンに掲げていると示した。同薬はすでに第一三共グループの強力な収益源となっている。
この発表を受け、同社の株価は3月14日から3月20日までの1週間で約3%上昇し、日経平均採用銘柄の中でも好調となった。
第一三共は近年、研究開発費を増加させており、2019年には収益の20%を、2020年・2021年には24%を研究開発に投入した。2022年第3四半期最新の決算では、研究開発費は前年比43%増となっている。2020年・2021年は研究開発費が増加したため利益は減少したが、今後の開発状況により業績が改善する可能性がある。
第一三共は市場拡大で株価上昇となるか?
長期的には、第一三共の収益性と株価の推移は、主要な医薬品を継続的に提供できるかどうかで決まる。例えば、エンハーツ®、脳卒中予防薬リクシアナ、潰瘍治療薬ネキシウムの継続的な収益性など、同社の提供する医薬品には安定した収益が見込まれる。これらの医薬品市場において、英国のアストラゼネカと提携したことが、同社のシェア獲得につながった。
同時に、同社は海外市場への進出も継続しており、海外の売上高比率は2017年の36%から2021年には47%へと急増した。同社の海外市場の大半は北米で、同地域における収益性も高い。実際に、2021年の全世界の医薬品売上高の49%を北米が占めている。
ただ、第一三共にはいくつかの難点もある。同社が注力するがんや循環器領域は狭く、最大のライバル企業である武田薬品から国内でシェアを奪うには苦戦を強いられるだろう。
また、アストラゼネカ社との提携によって従来以上に利益を提携先に分配することとなり、コスト負担が増加した。株価が低迷する中、同社は今年も厳しい状況に直面している。海外進出が進むにつれ、為替レートの影響による収益減少も懸念される。
しかし、会社組織として第一三共は堅調であると考えられる。前四半期の売上高は16.9%増、売上原価は2.2%減となっており、効率化が進められているように見える。
投資家は、研究開発の促進や新型コロナウイルスによる影響が想定されていはいるものの、2018年・2019年当時の70円配当への回帰を期待することもできるだろう。
第一三共の3月期の業績は好調だった。新薬開発の躍進や収益の柱となる治療薬の新たな進歩により、長期的な利益に期待できるといえる。
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