2024年の金価格見通しは？　10％高予想も　米経済好調はリスク

2024年の金価格はさらなる上昇が期待されている。ニューヨーク商品取引所（COMEX）の先物価格は12月1日に終値ベースでの史上最高値を約3年4か月ぶりに更新。2024年もこの勢いを維持するとの見方から、JPモルガンは1年後の金価格は現状から10％高の水準になると予想している。金価格への強気な見通しの背景にあるのは米連邦準備制度理事会（FRB）の金融政策が利下げに向かうとの見立て。ただしアメリカ経済が景気後退を回避すれば、利下げの度合いが弱まる筋書きも想定され、金価格にとって下押し圧力として働くリスクもある。

JPモルガンが金価格の9.8％上昇を予想

金価格は2023年に値上がり基調をたどった。LSEGによると、COMEXの先物価格（中心限月）の22日の終値は1トロイオンス＝2069.1ドルで、2022年末比で13.3％高の水準だ。12月1日に2020年8月6日以来の史上最高値となる2089.7ドルを記録した後、12日には1993.2ドルまで後退する場面もあったが、改めて勢いを取り戻した。金スポット価格（スポット金）も同様に高値で取引されている。

こうした中、金融市場では金価格が2024年も上昇するとの期待が高まっている。米投資銀行大手のJPモルガンは13日に公表した2024年の経済見通しの中で、2024年10-12月期の金価格は平均2175ドルになるとした。2023年10-12月期の平均価格の見通し（1980ドル程度）と比べれば、1年後の金価格は約10％値上がりしているとの予想だ。

JPモルガンは値上がり予想の理由として「FRBの利下げサイクルと実質金利の低下が金価格を押し上げる」ことを挙げた。金融市場では一般的に、金利が下がれば債券などの投資先としての魅力が下がり、相対的に金の投資先としての魅力は上がるとされる。また、米国の金利水準が下がった場合は、外国為替市場ではドル安が進むことが多い。こうしたドル安の環境下では、米国以外の投資家にとって金が割安になることから金が買われやすくなるとも説明される。

2024年は金利低下で金価格が上昇か

米CMEグループのデータによると、FRBが2024年3月の連邦公開市場委員会（FOMC）までに利下げに踏み切ることについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間の26日正午すぎの段階で約75％と見積もられている。こうした中、ドルの相対的な強さを示すドルインデックス指数（DXY）は11月に入ってから下落基調が続いており、金価格の史上最高値更新を後押しした。

ただしFRBの利下げがどの程度の積極度になるかは不透明だ。LSEGのデータによると、金融市場では2024年末までに0.25％利下げが6回程度あると見積もられているが、これはFRB自身が13日に示した3回を大きく上回るペース。米国経済が今後も好調なままで、しかも物価上昇圧力の弱まりが感じられない事態が起きれば、FRBの利下げペースが想像以上に緩やかになる可能性もある。

このようにFRBの利下げが期待外れの小ささになれば、ドル安の進行が限定的となり、金価格上昇の足を引っ張る筋書きも考えられそうだ。また米国経済の好調さが株価上昇につながった場合も、投資資金が安定資産としての金から株式に向かう可能性があり、米国経済の先行きが金価格を左右する場面も想定される。