NY金、米国CPIとPPI次第で荒れ相場も 金相場の見通し
最高値の更新が続くNY金相場。今日以降はアメリカの物価指数にらみの展開となろう。内容次第で急騰も急落もあり得る。
![Source: Adobe images](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/uk/images/news-article-image-folder/Adobe_gold_bars_10-08-2024.jpeg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
記事の概要
NY金相場は最高値を更新する状況にある。だが、昨日のスポット金価格は高値2,942.93ドルまで上昇した後、2,900ドルを下方ブレイクする荒れ相場となった。今日以降のアメリカ物価指数次第で金価格は、上下に大きく振れる不安定な相場を警戒したい。スポットの金価格は節目の3,000ドル到達も急落もあり得る。
金価格、トランプ関税で最高値更新も荒れ相場に
NY金のスポット価格(以下では金価格)は、11日のアジア市場で2,942.93ドルまで上昇し最高値を更新した。しかしその後は利益確定の売りに圧され、2,900ドルを割り込む荒れた相場となった。
現在、金価格の押し上げ要因となっているのがインフレの再燃と経済の先行きに対する懸念である。そしてこの懸念を高めているのがトランプ関税である。
トランプ米大統領は10日、鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を課す大統領令に署名した。新しい税率はアメリカの東部時間3月12日午前0時1分に発動する。中国と欧州連合(EU)はさっそく反発している。EUのフォンデアライエン欧州委員長は11日、「断固とした相応の対抗措置」を取ると述べ、報復を示唆した。
インドのモディ首相は12〜13日に米ワシントンでトランプ氏との首脳会談に臨む。インドにとってアメリカは重要な鉄鋼の輸出国であり、米国製の武器やLNGの輸入拡大を提案することで「例外」交渉に臨む。しかしトランプ米政権が例外交渉に応じるかは不透明であり、世界的に関税の報復合戦が広がればインフレ再燃と経済の先行きに対する市場参加者の懸念がさらに高まるだろう。関税問題の混迷は、金価格のさらなる押し上げ要因となることが予想される。
冒頭で述べたとおり、今の金価格は変動幅(ボラティリティ)が拡大する状況にある。今日以降はアメリカの物価指標で変動幅が拡大する展開を警戒したい。今日は1月の消費者物価指数(CPI)で大きく動く可能性がある。
スポット金価格:5分足 2月11日の動向
![スポット金価格:5分足 2月11日の動向](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/Gold_chart_250212.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
出所:IGチャート
米インフレ期待が急上昇、CPIとPPIで金価格は変動幅が拡大する可能性も
ミシガン大学の調査のよる2月の期待インフレ率では1年先のそれが4.3%と、1月の3.3%から急上昇した。米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する5-10年先の期待インフレ率も3.3%と、2008年6月以来の高水準にある。
トレンドを確認すると、昨年11月以降、アメリカ消費者のインフレ期待が上昇基調へ転じている。大統領選挙でトランプ氏が圧勝し議会が共和党支配の状況となったことで、アメリカの消費者は主要なトランプ政策の実行とその影響により物価の上昇圧力が再び高まることを敏感に感じ取っていることを直近の上昇が示唆している。
ミシガン大学調査 期待インフレ率:2024年1月~2025年2月
![ミシガン大学調査 期待インフレ率:2024年2月~2025年2月](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/US_MichiganConsumerSentiment_250212.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
物価の動向に大きな影響を与える消費者のインフレ期待が高まるなか、今日は1月の消費者物価指数(CPI)、明日は同月の生産者物価指数(PPI)と重要な物価指数の発表が続く。注目は、金価格のトレンドに影響を与える米長期金利(以下では米金利)の反応となろう。
その米金利は先月中旬を境に低下基調へ転じた。そのきっかけとなったのが、米コアCPI(昨年12月分)の鈍化だった。今回もコア指数の動向が米長期金利のトレンドに影響を与えることが予想される。
前月比コアはCPIとPPIでともに昨年12月から上昇する見込みにある。一方、トレンドを示す前年同月比は鈍化の予想にある。期待インフレ率の上昇を受け米金利は現在、反発ムードにある。トランプ関税の不確実性も米金利の押し上げ要因になり得る。これらの状況でコアのインフレ率が予想外に上昇すれば、金価格はこれまでの上昇の反動で急落する展開を想定しておきたい。
一方、今週のアメリカ物価指数でインフレ再燃の懸念がひとまず後退すれば、金価格は節目の3,000ドルを視野に上昇幅が拡大する可能性があろう。いずれにせよ目先は、アメリカ物価指数で金価格の変動幅(ボラティリティ)が急拡大する展開を想定しておきたい。
米国 消費者物価指数と生産者物価指数:2024年1月~12月
![米国 消費者物価指数と生産者物価指数:2024年1月~12月](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/US_InflationData_250212.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:25年1月の市場予想
金価格の見通しと注目のテクニカルライン
米物価指数とトランプ関税の報道次第では節目の3,000ドルが視野に
今日のスポット金価格(以下では金価格)は、1月の米CPIで上下に大きく動く展開が予想される。米CPIが長期金利の低下要因となれば、金価格の強気相場の勢いが増すだろう。このケースでは、15分足にプロットした2つのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。トランプ関税の不確実性を意識される新たな報道もあれば、昨日の最高値2,943ドルをトライする展開も想定しておきたい。この水準の上方ブレイクは、節目の3,000ドルを視野に上昇幅が拡大するサインと捉えたい。
・昨日高安の半値戻しの水準2,912ドルはレジスタンスラインへ転換する可能性がある。短期レジスタンスラインの上方ブレイクは、半値戻しをトライするサインと考えたい
・フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準2,928ドルは昨日、相場の反発を止め2,900ドル割れの基点となった(15分足、黒矢印を参照)。今日の上昇局面では、これら2つのフィボナッチラインの攻防に注目したい
・金価格は現在、変動幅が拡大しやすい状況にある。今日の1月米CPIが予想外に大きく鈍化し、かつトランプ関税とそれにともなう世界的な報復合戦の懸念を高める新たな報道が重なれば、金価格の上昇幅が拡大する展開が予想される。このケースでの金価格は昨日付けた最高値2,942.93ドルのトライを想定したい。この水準をも完全に上方ブレイクすれば、明日の米PPI次第で節目の3,000ドルが視野に入ろう
レジスタンスライン:15分足
・2,942.93:2月11日の高値(過去最高値)
・2,928:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・2,912:半値戻し
調整売り加速なら2,800ドルの維持が焦点に
昨日の日足ローソク足は、長い上ヒゲ付きの上影陰線となった。最高値での上影陰線は下落相場への転換を暗示する。今週のアメリカ物価指数、特にコア指数でインフレ圧力の根強さが示される場合は、金価格の急落相場を警戒したい。このケースでは2,800ドルを目先の下限と想定し、以下でまとめたサポートラインの攻防に注目したい。
・最初の焦点は5日線の攻防となろう。この移動平均線のトライは、2,880ドルの維持を見極める攻防となろう
・金価格が2,880ドルを下方ブレイクする場合は、2,850ドル台の維持が次の焦点となろう。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント23.6%戻し2,857ドルと10日線(今日現在2,852ドル)の攻防に注目したい
・金価格が10日線をも難なく下方ブレイクすれば、2,800ドルを視野に下落幅の拡大を警戒したい。2,805レベルはフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。すぐ下には20日線が上昇している(今日現在2,798レベル)。また、昨年の最高値2,790ドルがサポートラインへ転換する可能性もある。2,790~2,800がサポートゾーンとして相場を支える展開も想定しておきたい
サポートライン:日足
・2,883:5日線
・2,857:23.6%戻し、下に10日線
・2,805:38.2%戻し、下に21日線、予想レンジの下限
・2,790:2024年の最高値
金価格のチャート
15分足:2月11日以降
![15分足:2月11日以降](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/XAUUSD1_20250212.png/jcr:content/renditions/original-size.webp)
出所:TradingView
日足:2024年10月以降
![日足:2024年12月以降](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/XAUUSD2_20250212.png/jcr:content/renditions/original-size.webp)
出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。