日本の賃上げは力不足 物価高に届かず 成長率にも不安で円安要因に
日本の7月の実質賃金は下落率が拡大し、4-6月期のGDP成長率は下方修正。日銀の大規模金融緩和継続を予感させる。
日本経済の前向きなムードが崩れてきた。8日に発表された厚生労働省のデータでは、実質賃金の下落率が2か月連続で拡大。勢いづくかにみえた賃上げに物価高を克服するだけの勢いがないことが分かった。また、2023年4-6月期GDPの改定値でも企業や個人の経済活動が下方修正されている。賃上げを伴った形で物価が上がり、企業業績が良くなってさらなる賃上げにつながるという好循環の達成への期待を後退させる内容だ。日本銀行の懸念を裏付ける結果といえ、大規模金融緩和継続の可能性を強める円安要因になりそうだ。
日本の7月の実質賃金は2.5%減
厚労省が8日に発表した7月の毎月勤労統計によると、名目賃金にあたる1人当たりの現金給与総額は前年同月比1.3%増だった。19か月連続のプラスだが、上昇率は5月(2.9%)や6月(2.3%)を下回っている。物価上昇を考慮した実質賃金は2.5%減で、16か月連続のマイナス。下落率は5月(0.9%減)、6月(1.6%減)から拡大した。実質賃金の計算に使われる物価上昇率は7月に前年同月比3.9%となっており、賃上げペースが物価上昇ペースに追いついていない実態が明らかになった。
日本の賃上げをめぐっては、基本給にあたる所定内給与の5月の伸び率(1.7%)が25年11か月ぶりの高さとなり、春闘での賃上げ効果が出たと受け止められた。日銀の植田和男総裁も、7月28日の記者会見で「企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しがうかがわれる」としていた。今回発表された7月の所定内給与は1.6%増で引き続き高い水準といえるが、残業代などを反映する所定外給与が0.5%増にとどまり、全体の足を引っ張っている。
日本の4-6月期GDPの実質成長率は4.8%へ下方修正
また、内閣府が8日に発表した4-6月期GDP改定値も日本経済の先行きへの不安を感じさせた。実質成長率は前期比年率換算で4.8%という高い数字とはいえ、速報値の6.0%から下方修正されている。改定値では企業の設備投資の伸び率がマイナスに転じたほか、個人消費の減少も大きくなった。ロイター通信のエコノミスト調査では、実質成長率の改定値は5.5%と見込まれていただけに、予想を下回る悪い結果だったといえる。
日本経済は長らく賃上げが実現しない中で消費が伸びず、経済成長が停滞するという悪循環が続いてきた。一方、日本の物価は2022年2月のロシアのウクライナ侵攻による資源高を機に上昇基調がはっきりしている。春闘に際しての賃上げムードが物価上昇への一時的な対応に終わり、しかも賃上げ率が物価上昇率を下回る状況が続けば、国内消費の活性化は望めないのが現実だろう。
植田氏は春闘での賃上げムードを歓迎しつつも、一過性の現象で終わる可能性を踏まえ、大規模金融緩和の本格的な修正には慎重だ。日本経済の現状は植田氏の懸念通りになる兆しが出ているといえる。外国為替市場にとっては、ドル円相場(USD/JPY)などでの円安要因として働くことになりそうだ。
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