円相場と株式の関係について
現在の円相場は株式の影響を受けやすい局面へシフトしています。実際に相関係数で確認すると、そのトレンドが鮮明となってきたのが2019年10月以降です。その理由とは?そしてドル円の上値の焦点は?詳細はマーケットレポートをご参照ください。
2019年は「株高→円安」の関係は見られず
中東リスクが後退したことを受け、米国株式は再び堅調地合いとなっている。もうひとつの株安要因である米中通商リスクについては「フェーズ1」の合意調印が今週予定されていること、またトランプ米政権サイドからリスク回避を煽る言動が見られないことも考えるならば、目先の米株は調整を挟みながら底堅さを維持することが予想される。
さて外為市場だが、株高局面の影響を最も受けやすいのが円相場である。この点を①米国株のベンチマークであるS&P500 と世界株式(MSCI)との関係、②2つの時間軸-2019年から2020年1月13日時点と2019年10月から2020年1月13日時点-、そして③相関係数で確認する。尚、通貨ペアについてはIG証券での取引量等を鑑み筆者の任意でピックアップした。
まず2019年から2020年1月13日時点の相関係数を確認すると、株式と円相場の数値は総じてゼロ付近のマイナスとなっている。つまり、金融政策の方向性の違いを背景に2005年以降発生した「株高→円安」という関係は見られない。言い換えれば、株高による影響が小さかったことを意味する。なぜそのような展開となったのか?要因は主に2つ-FEDの連続利下げによる米長期金利(以下米金利)の低下と米ドル高局面が多く散見されたことにあると考えられる。具体的には、前者の要因でドル円は昨夏に104円台まで下落し株高の恩恵を受けることができなかったこと、そして後者の要因でクロス円の上昇が抑制された、ということである。
変化が生じはじめた 2019年10月以降
次に2019年10月から2020年1月13日時点の相関係数を確認してみる。なぜ2019年10月なのか?その理由は、米ドル相場が上昇基調から下落基調へ転じ始めたのが2019年10月以降であり、米株の上昇圧力が再び高まり最高値を更新しはじめたのも同じく昨年10月以降だったからである。つまり、昨年10月以降、外為市場と米株は新たな局面へシフトしているということである。新たな局面へシフトしてからの相関係数を確認すると、総じてプラスへ転じていることがわかる。しかもその数値を確認すると0.7以上となっており、「株高→円安」という関係が復活している。特にクロス円の相関係数がドル円のそれを上回っている事実を考えるならば、個別リスクの後退-例えば英ポンド相場ならばブレグジット・リスクの後退、豪ドル相場ならば中国経済リスクの後退-が重なった通貨ペアは株高の恩恵を最も受けていると言える。よって、現在の円相場は株高トレンド、特に米株が堅調地合いを維持する限り円高リスクを警戒するフェーズにはない。逆に言えば、米株にネガティブショックがある場合、円高リスクを警戒すべきだろう。目先そのリスク要因として注視すべきは、中東リスクの再燃と冴えない企業決算と思われる。
尚、110円台を視野に上昇しているドル円だが、米金利が膠着状態であることを考えるならば、株高だけに頼った上昇には限界があろう。テクニカル面での焦点は114.54(2018年10月4日高値)を起点とした短期サポートラインの突破となろう。このラインは今日現在110.00レベルで推移している。また、21日MAとの乖離率で考える場合、プラス1%乖離の水準は110.26レベルとなる。110.00から110.20にかけては断続的にオファーが観測されている。
ドル円チャート
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
シニアマーケットアナリスト / 公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 / CMA® 国内金融機関において為替ディーラーとしてのキャリアをスタート後、2009年3月にIG証券の前身であるFXオンラインジャパンに入社。 2010年4月よりマーケットの分析業務に従事。為替市場を専門としながらも国内外の株式市場や債券市場まで幅広くカバーする見識を持つ。 主要メディアへの露出も多く、そのハイクオリティな分析レポート及びコメントはロイター、ブルームバーグ、ダウジョーンズ、時事通信、日経新聞等の主要ニュース配信会社に掲載されている。 またその定評のある分析能力から、レギュラーコメンテーターとして下記のテレビ及びラジオ番組にも出演中。 テレビ番組:日経CNBC「朝エクスプレス」/ ストックボイス「ランチエクスプレス(毎週木曜日)」「ワールドマーケッツ」「FXフォーカス」/ラジオ番組:ラジオNIKKEI「前場の広場-FXショートコメント」/ ツイッターでも随時マーケット情報を配信中。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。