米3月雇用統計は好調続く見通し 7日発表　株価やドルには下落圧力も

米国で7日に発表される3月の雇用統計は好調さが続く見通しだ。市場予想では非農業部門の就業者数は24万人の増加、失業率は低水準のまま横ばいになるとみられている。3月はシリコンバレーバンク（SVB）の経営破綻を機に金融システムへの不安が広がったが、今回の数字に大きな悪影響は出ないもようだ。労働市場の強さが材料視された場合は、米連邦準備制度理事会（FRB）による利上げが意識され、週明け10日以降の株価に下押し圧力がかかる可能性がある。また、金融システム不安を経て米国経済の先行きへの懸念が強まったこともあり、利上げの可能性拡大にも関わらずドルが売られる要因になる局面も想定されそうだ。

非農業部門就業者数は24万人増の見通し

ロイター通信がまとめたエコノミスト調査によると、3月の非農業部門の就業者数は前月比24万人増となるとみられている。1月の50万4000人増、2月の31万1000人増を下回るものの、引き続き労働市場の好調が示される形だ。また失業率は2月と同じ3.6％になるとみられており、歴史的な低水準が続くと予想されている。平均時給の前年同月比伸び率は4.3％になるとみられている。

米国では10日のSVBの経営破綻以降、金融機関が経営難に陥ったり、企業への貸し出し姿勢を厳格化したりすることで、経済に悪影響が及ぶことへの懸念も出た。しかしFRBのパウエル議長は22日の連邦公開市場委員会（FOMC）後の記者会見で「労働市場は極めて力強い」と言及。雇い手の労働力に対する需要が供給を大きく上回っていることが賃金や物価の上昇につながっているとの見方を示した。

1月と2月は好調な数字で株価が下落

こうした中、3月の雇用統計で労働市場の強さが印象付けられれば、株価に下押し圧力がかかる可能性がある。1月と2月の雇用統計はいずれも市場予想を上回る好調さで、発表当日のS&P500種株価指数は下落した。労働市場の強さが物価高につながることを警戒するFRBが利上げを長期化させ、企業業績の逆風になるとの観測が出たことが要因のひとつだ。

ただし1月の雇用統計発表時と2月の雇用統計発表時で相場が逆に動いた市場もある。1月の雇用統計発表時はFRBの利上げ長期化観測が長期金利（10年物米国債利回り）を引き上げ、ドル買いにつながった。一方、2月の雇用統計発表はSVB経営破綻と同じ日だったこともあり、FRBが短期的には利上げに向かっても、いずれは利下げに転じざるをえなくなる側面が材料視された。この結果、発表当日や週明けの長期金利は下落し、ドル円相場も値下がりした。

3月の雇用統計が発表される7日はSVB経営破綻からちょうど4週間後にあたる。この間、金融システムへの不安は落ち着きをみせているものの、FRBは3月22日のFOMCで0.25％の利上げを決めており、今後も経済活動にブレーキをかけていく可能性は高い。7日は聖金曜日のため米国の株式市場は休場で、株価に影響が出るのは週明け10日からとなるが、FRBが雇用の強さに促されて利上げを進めるシナリオが意識されれば、米国経済の中期的な先行き不安が相場を動かすこともありえる。