米国株に景気懸念という新たな火種、注目の米雇用統計 S&P500の見通しは?
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換を目の前にして、アメリカの株式市場では景気懸念が新たな火種となりつつある。アメリカの長期金利が4%を割り込んでも1日の株式市場で主要指数は下落した。景気懸念による株安は、経済指標の重要性が増していることを意味する。今日は7月の雇用統計が発表される。S&P500の見通しは?注目のチャート水準は?
記事のポイント
・将来の景気懸念が米国株の新たな火種に
・「長期金利低下 / 株安」は、経済指標の重要性が増していることを意味する
・今日は7月の米雇用統計が米国株のトレンドを左右しよう
・S&P500は、5,400ポイントの攻防に注目したい
S&P500、注目のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・5,563:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・5,497(5,500):フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・5,488:レジスタンスの水準
・5,456:フィボナッチ・リトレースメント23.6%
下値の水準(サポート)
・5,396(5,400):フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・5,320:89日線(8/1日時点)
・5,311:半値戻し
米国株を襲う新たな火種
景気懸念が新たな火種に
アメリカ株は不穏なムードに包まれている。景気懸念という新たな火種が、テーマに浮上してきたことで、1日のS&P500種株価指数(SPX)は前日比75.62ポイント(1.37%)安の5,446.68で取引を終えた。
一方、景気懸念はエヌビディア(NVDA)など主力半導体株の売り圧力を強め、ナスダック100(NDX)は前日比-472.04ポイント (2.44%)安の18,890.391ポイントで引けた。
景気懸念を強めたのが、昨日のアメリカ経済指標だった。米供給管理協会(ISM)が1日に発表した7月の製造業景気指数は46.8と、昨年11月以来8カ月ぶりの低水準へ落ち込んだ。景気判断の分かれ目である「50」も4カ月連続で下回った。
アメリカのISM製造業景気指数:月次 過去1年間
一方、米労働省が発表した7月27日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比1万4000件増の24.9万件と、昨年8月以来の高水準に増加した。
4週移動平均は過去1年間の平均を超え、アメリカ労働市場が次第に軟化している状況を示唆している(下のチャート、赤ラインを参照)。
アメリカの新規失業保険申請件数:週次 過去1年間
長期金利4%割れも米国株は下落
景気懸念の高まりを受け、アメリカ10年債利回り(以下では長期金利)はついに節目の4.0%を割り込んだ。ブルームバーグのデータでは、本レポート掲載時点で3.93%まで低下する局面が見られた。
長期金利の低下は米国株のサポート要因となってきた。しかし1日の米国株が下落した事実は、米金利の低下よりも今は景気懸念の方が重要なテーマであることを示唆している。ゆえに、経済指標の重要性が急速に増している。
米長期金利のチャート:日足 年初来
出所:TradingView
今日の注目材料は7月の米雇用統計
その経済指標で今日注目したいが、7月の雇用統計である。短期金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が今年3回の利下げに踏み切ることを完全に織り込む状況にある。ゆえに「強い経済指標→株安」の展開となる可能性は低下している。
景気懸念が意識されている状況を考えるならば、強い雇用統計はむしろ株高の要因になると予想する。一方、今晩の雇用統計で労働市場の軟化が示される場合は、「景気懸念→株安」の展開を警戒したい。
アメリカの雇用統計 各項目の動向:23年7月以降
S&P500の見通しとチャート分析
焦点は5,400の攻防
多くの機関投資家が運用のベンチマークにしているS&P500種株価指数(SPX、以下ではS&P500)は現在、分岐点に差し掛かっている。
その分岐点となる水準が、5,400ポイントである。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準(5,396レベル)の維持が、今日以降の焦点となろう(下のチャート、黒矢印を参照)。
日足のMACDはゼロラインを下回ってきた。モメンタムも再び低下トレンドへ転じている。いずれもS&P500の地合いの弱さを示唆する動きである。
今晩の7月雇用統計で労働市場の軟化を示唆する場合は、上で述べたとおり景気懸念の高まりを受け、S&P500の5,400ブレイクを予想する。
5,400レベルがレジスタンスのラインへ転換すれば、来週以降89日線(8月1日時点 5,320レベル)そして半値戻しの水準5,311レベルを視野に下落幅が拡大する展開を警戒したい。
S&P500種株価指数のチャート:日足 今年4月以降
出所:TradingView
反発の局面では5,500のトライが焦点に
7月の米雇用統計で労働市場の堅調さが確認される場合は、S&P500(SPX)の反発要因となろう。
1時間足のストキャスティクスは、売られ過ぎの水準でゴールデンクロスの状況が確認されている(下のチャート、緑矢印を参照)。RSIでも同じ状況が確認される場合、まずはフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準5,456レベルを突破する展開を予想する。
S&P500が反発相場へ転じる場合、目先注目したいのが、5,500ポイントのトライ&ブレイクである。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準5,497レベルを突破できるか?が焦点となろう。
S&P500が38.2%戻し(5,500レベル)をトライするサインとして注目したいのが、7月26日以降、相場の反発を何度も止めている5,488レベルの攻防である(下のチャート、赤ラインを参照)。この水準の上方ブレイクは、5,500をトライするサインとなろう。
S&P500が5,500台の攻防へシフトする場合は、昨日の反発を止めたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準5,563のトライが焦点に浮上しよう。しかし、S&P500がこのテクニカルポイントまで反発するためには今晩の雇用統計だけではなく、来週以降の重要経済指標で景気懸念を払しょくする内容が求められる。
S&P500の反発が5,488レベルで止められる場合は、上で述べたサポート水準を意識する状況が続く展開を予想する。
S&P500種株価指数のチャート:1時間足 7月15日以降
出所:TradingView
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