米国株に激震 S&P500急落 雇用統計で経済見通し不安深刻化
アメリカの雇用統計は失業率が2年9か月ぶりの高さ。S&P500は3か月半ぶりの3週続落となり、株式市場のムードは一変している。
アメリカの株式市場に激震が走った。S&P500種株価指数の2日の終値は1週間前比で2.06%安となり、3週連続での値下がり。7月半ばの史上最高値からの下落率は5%を超えた。2日に発表された7月雇用統計で失業率が2年9か月ぶりの高さになるなど、経済の見通しへの懸念が一気に深刻化したためだ。この結果、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まり、長期金利(10年物米国債)は急落。しかし経済悪化懸念による金利低下は株価の下支えにはなっていない。投資家の不安度は地銀の経営破綻があった2023年3月以来の水準まで高まっており、株式市場の悪いムードは当面続きそうだ。
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アメリカのS&P500は3週続落 雇用統計の悪化で失速
S&P500(SPX)の2日の終値は5346.56。3週連続での値下がりは半導体株の急落や中東情勢悪化があった4月15-19日週までの3週以来、3か月半ぶりだ。7月16日の最高値(5667.20)からの下落率は5.66%に達し、2024年に入って38回も記録を塗り替えた勢いが失われている。
株式市場の様相を一変させたのは2日に発表された7月雇用統計だ。非農業部門の就業者数は前月比11.4万人増で、ロイターがまとめた市場予想の17.5万人増を大きく下回る結果。失業率は4.3%で市場予想(4.1%)を超え、2021年10月(4.5%)以来の悪い数字となった。さらに平均時給の伸び率は前年同月比3.6%で、6月から低下している。いずれも労働市場の弱まりが経済の見通しを悪くする結果だといえる。
FRBは9月0.5%利下げも 長期金利は7か月ぶりの低さに
こうした雇用統計の数字を受けて、金融市場ではFRBの利下げ観測が一気に深化。9月の連邦準備制度理事会(FOMC)では、0.5%の利下げが行われるとの見方が強まった。CMEグループのデータによると、9月の0.5%利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間3日午前の段階で69%。前日までの33%程度から大きく上昇している。
FRBが利下げに向けてアクセルを踏むとの見通しは長期金利の低下を招いた。ニューヨーク債券市場での2日の長期金利(10年物米国債利回り)の終値は3.796%となり、12月27日(3.789%)以来、約7か月ぶりの低さだ。長期金利下落は国債価格の上昇を意味し、安全資産としての米国債の人気の高まりを示す。
米国の中小型株も下落 長期金利低下は追い風にならず
これまで長期金利の低下は物価上昇の緩和がFRBの利下げにつながるとの見方から起きるケースが多く、株式の投資先としての魅力を相対的に高める要因とされてきた。しかし今回の長期金利低下は経済悪化不安が理由とあって株価の下支えにはなっていない。
米国の株式市場では2日、S&P500だけでなく中小型株で構成される株価指数のラッセル2000(RUT)も前日比3.52%安と急落。週次での下落率は6.67%となり、S&P500よりも大幅に悪い結果となった。中小型株企業は変動金利での借り入れが多く、金利低下の追い風を受けやすいとされる一方、経営規模の小ささから景気悪化の悪影響も受けやすいとされる。
VIX指数は1年4か月ぶりの高さに 投資家の不安強まる
こうした経済状況の見通しの悪化は、FRBのジェローム・パウエル議長が7月31日に行ったFOMC後の記者会見のトーンとは対照的だ。パウエル氏は労働市場について「強いうえに過熱もしていない状況だ」と述べるなど、米国経済の堅調さを強調。このまま物価上昇の鎮静化と労働市場の安定が続けば、9月には前向きな形での利下げができるとの方向性を示していた。31日の米国株式市場ではS&P500が前日比1.58%高となっていた。
9月FOMCが開かれる17、18日までの間には8月雇用統計の発表もあり、結果次第で米国の労働市場に対する印象が好転する可能性もある。ただ、投資家の不安は急激に高まっており、ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数(VIX)の2日の終値は23.39まで上昇した。米地銀シリコンバレーバンクの経営破綻後の混乱期にあたる2023年3月20日(24.15)以来の高水準だ。
2日の株式市場では前日の取引時間終了後に2024年4-6月期決算を発表したアマゾン・コム(AMZN)の株価が8.78%安となるなど、大手ハイテク株や半導体株も大きく値下がりした。アマゾンの株価下落にはインターネット通販をはじめとする小売事業の成長減速という経済の悪化を連想させる事情がある。今後も米国経済の弱さを感じさせるデータが出れば、S&P500の見通しはさらに暗くなると考えられそうだ。
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