S&P500勢いづくか 雇用統計堅調予想 米国半導体株の上昇加速も
アメリカの2月雇用統計は就業者数が20万人増の予想。6月利下げ観測が裏付けられ、半導体株が米国株の追い風になりそうだ。
アメリカの労働省が8日に発表する2月の雇用統計は堅調な結果が見込まれている。就業者数の増加幅は20万人となる見通しで、経済の過熱も冷え込みも感じさせない理想的な結果と受け止められる公算が高い。予想通りになれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が6月に利下げに踏み切る確度が高まり、半導体株が牽引しているS&P500種株価指数の上昇の勢いが増しそうだ。ただ、雇用統計の結果が想定以上に弱かった場合は、米国経済の悪化が企業業績の逆風になるとの思惑が広がり、S&P500に下押し圧力がかかる可能性もある。
2月の雇用統計は就業者数が20万人増の予想
米労働省は8日午前8時30分(日本時間8日午後10時30分)に2月雇用統計を発表する。ロイターがまとめた事前予想によると、非農業部門の就業者数は前月比20万人増になる見込み。1月の35.3万人増から伸びが縮まるものの、経済の拡大が巡航速度で進んでいると受け止められそうだ。また、失業率は1月同様、低水準といえる3.7%になる見通し。平均時給の前年同月比伸び率は4.4%で、1月(4.5%)から低下するとみられている。
前回の1月雇用統計で労働市場の想定以上の強さが確認された2月2日は、S&P500は1.07%の値上がりで反応した。経済活動の好調さが素直に好感されたうえ、雇用の強さが物価上昇圧力として働くシナリオについても、大きな懸念材料としてみなされなかった。今回、2月の雇用統計の結果が予想通りになった場合は、景気の底堅さと物価上昇圧力の緩和が同時に示される内容といえ、やはり株式市場では好材料と受け止められそうだ。
FRBのパウエル議長は利下げの方向性を示唆
こうした米国経済への安心感はFRBの「6月利下げ観測」を裏付けることになる。FRBのジェローム・パウエル議長は6日の下院金融委員会での公聴会で、予想通りに経済状況の改善が進んでいけば、「年内のいずれかの時期に引き締め的な金融政策を元に戻し始めることが適切になるだろう」と述べた。2023年7月までの利上げで5.25-5.50%まで高まった政策金利を今後、引き下げていく筋道を描いた形だ。
CMEグループのデータによると、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間7日午前11時段階で68%。6日のニューヨーク債券市場の長期金利(10年物米国債利回り)の終値は4.104%で、2月6日(4.092%)以来の低さとなった。
利下げの確度が高まればS&P500や半導体株には追い風
FRBによる利下げへの期待は株価にとっては追い風だ。6日の株式市場ではS&P500(SPX)が前日比0.51%高となり、3日ぶりに反発。半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)が3.18%高となって相場を牽引したほか、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が2.68%高、クアルコム(QCOM)が3.99%高となるなど、半導体株の躍進が目立った。半導体株は人工知能(AI)開発やサービス展開に不可欠で、関連各社の業績拡大が期待されており、利下げ期待で株価上昇の推進力が増すことが想定される。
ただし2月雇用統計で米国経済の弱さが感じられた場合は半導体株やS&P500にとっては悪材料になる。米国株の好調さは景気後退回避と物価上昇抑制が両立する「軟着陸」(ソフトランディング)シナリオが期待されてきたためだが、景気後退への懸念が膨らめば株高の前提条件が揺らぐことになる。2001年以来の高さで維持されている政策金利が企業や個人の経済活動の重荷になっていることは間違いなく、雇用をめぐる経済指標の悪化が投資家の不安を呼び起こす可能性も残っていそうだ。
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