米国株に下落リスク 8月物価に加速見通し S&P500は一進一退
アメリカのS&P500の上昇がFRBの利下げにも関わらず勢いづかない。失業率上昇だけでなく、物価上昇鎮静化にも不安があることが背景にある。
アメリカの株式市場に下落への不安がつきまとっている。S&P500種株価指数の25日の終値は前日比で反落。3日連続での最高値更新はならず、一進一退の状況だ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げにも関わらず、長期金利(10年物米国債利回り)は改めて上昇に転じており、株価の重荷になっている。こうした中、27日に発表される8月の個人消費支出(PCE)物価指数は食品とエネルギーを除いたコア指数で物価上昇が加速する見通し。実際の結果が今後のFRBの利下げを難しくする要因として受け止められれば、長期金利の高止まりがS&P500に下落圧力をかける可能性がある。
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アメリカのS&P500は小幅安 長期金利は改めて上昇
S&P500(SPX)の25日の終値は前日比0.19%安の5722.26。最高値の連続更新は2日で途絶えた。FRBが4年半ぶりの利下げを決めた18日からの6営業日での伸び率は1.56%で、株価上昇が勢いづいているとは言い難い。
S&P500の重荷となっているのは長期金利の上昇だ。25日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は3.781%で、前日から0.045%ポイントの上昇。前日は米国の景況感の悪化を示す経済指標が出たことを受け、午後から長期金利の低下が進んだが、25日は朝から長期金利が上昇を続けた。
長期金利の上昇は中小型株にとってより大きな下落圧力になっている。中小型株企業はS&P500を構成するような大企業に比べて変動金利での借り入れが多く、足元の金利水準の影響を受けやすいとされるからだ。中小型株の値動きを反映する株価指数のラッセル2000(RUT)の25日の終値は前日比1.19%安の2197.45。FRBの利下げ決定からは0.36%の値下がりとなっている。
8月PCE物価指数に不安 コア指数上昇加速見通し
長期金利上昇の背景には米国経済が物価上昇抑制と景気後退回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)を達成することへの不安がある。米商務省が27日午前8時30分(日本時間27日午後9時30分)に発表する8月のPCE物価指数は、LSEGのまとめた予想によると、総合指数で2.3%、コア指数で2.7%となる見通し。総合指数は前月の2.5%から減速するが、コア指数は前月(2.6%)から加速する形だ。
物価上昇の根強さはFRBのジェローム・パウエル議長も注意を払っている。パウエル氏は利下げを決めた18日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、8月のPCE物価指数の伸び率について、総合指数で前年同月比2.2%、コア指数で2.7%との見通しに言及。そのうえで、物価上昇との闘いが終わったとの見方を否定し、これまでの進展に勇気づけられているとしながらも、「物価上昇率が2%近くでしばらく推移することを確認したい」と述べていた。
労働市場の悪化阻止と物価上昇の鎮静化の両立なるか
8月PCE物価指数が物価上昇懸念を強めた場合には、FRBの今後の利下げが難しくなるとの見方が長期金利の上昇を招き、S&P500を下落させることも想定される。また、米国経済をめぐっては労働市場悪化の懸念もくすぶりつづけている。米労働省が26日に発表する15-21日週の新規失業保険申請件数は22.5万件となる見通しだが、上振れた場合には米国経済の後退懸念が株価の逆風になりそうだ。
2020年から深刻化した新型コロナウイルス禍や2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻による世界経済の大混乱が引き起こした米国の物価上昇は記録的な厳しさだった。PCE物価のコア指数の伸び率は2022年2月に前年同月比5.6%となり、1983年3月(5.6%)以来の大きさだった。足元の物価上昇率は、2007年や2019年の利下げ開始時の物価上昇率よりも高く、失業率の上昇が始まる中でFRBが踏み切った利下げが、結果として物価上昇圧力を強めるとの見通しもS&P500の足かせになっている可能性がある。
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