米国株、急落再現の不安　S&P500上昇減速　経済見通しに疑心暗鬼

アメリカの株式市場で急落への警戒が続いている。S&P500種株価指数の27日の終値は1週間前比0.62％高。3週連続の上昇で最高値更新を繰り返しているが、上昇率は徐々に低下しており、投資家の不安が続いているようだ。一方、物価や雇用をめぐる経済指標は堅調な数字が続き、半導体株の値動きに明るさが感じられるなど、S&P500の見通しは暗いばかりではない。ただしS&P500は1か月前にも3週続騰の後の急落を演じており、10月4日発表の9月雇用統計などの経済指標で、投資家心理が大きく悪化することも考えられそうだ。

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アメリカのS&P500は3週連騰　上昇率は徐々に低下

S&P500（SPX）の27日の終値は5738.17。週次での上昇は3週連続で、26日には5745.37をつけ、最高値を塗り替えた。最高値更新は18日の連邦準備制度理事会（FRB）の利下げ決定以来4度目だ。ただし週次での上昇率は、9-13日週（4.02％）、16-20日週（1.36％）から徐々に低下しており、見通しが明るくなっているわけではない。

投資家心理の低調なムードは、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数（VIX）の値動きからも感じられる。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの27日の終値は16.96で、18日（18.23）以来の高さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数字が大きいほど今後の値動きが激しくなることへの警戒が強いことを示す。

8月PCE物価や失業保険件数は堅調な結果　見通しに明るさ

一方、米国経済をめぐっては明るい材料も目立つ。27日に発表された8月の個人消費支出（PCE）物価指数は、総合指数の伸び率が前年同月比2.2％となり、2021年2月（1.8％）以来の低さ。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は前年同月比2.7％で、前月の2.6％から物価上昇が加速したが、事前予想通りの結果とあって大きな悪材料としてはみなされなかった。

また26日発表の15-21日週の新規失業保険申請件数は21.8万件で、ロイターがまとめた事前予想の22.5万件を大きく下回った。米国経済では失業率の上昇が、物価上昇とならぶ課題とされているだけに、失業保険申請件数の下振れは見通しを明るくしたといえる。

9月雇用統計が見通しを左右か　1か月前は週次4％急落

さらに、このところの株式市場では半導体株が上向いている。半導体大手NVIDIA（エヌビディア、NVDA）の27日の終値は1週間前比で4.66％高となり、前週の2.60％安から大きく反発。半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ（AMAT）は週次6.64％高で、前週の1.96％高から加速した。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス（ARM）も週次4.81％高と勢いづいている。マイクロン・テクノロジー（MU）は25日の決算発表で、2024年9-11月期の業績について市場予想を超える見通しを示しており、人工知能（AI）ブームを背景にした半導体需要増加の継続を感じさせている。

こうした中、S&P500の今後の見通しは10月4日発表の雇用統計をめぐる思惑が左右することになりそうだ。S&P500は8月中旬から下旬にかけても3週連続での上昇を果たしながら勢いは乏しく、9月6日発表の8月雇用統計への悲観的な見方が週次4％超の値下がりにつながった。10月1日に米サプライマネジメント協会（ISM）が発表する9月の製造業景況感指数も投資家心理を揺らす可能性があり、S&P500が再び波乱に見舞われる可能性もありそうだ。