米国株、上昇減速 S&P500最高値届かず 雇用の見通し不安続く
アメリカのS&P500は3週連続の値上がりとなったが、上昇率は縮まってきた。最高値を目前にして、雇用への不安が重荷になっている。
アメリカの株式市場の上昇が減速している。S&P500種株価指数の30日の終値は1週間前比で0.24%高。3週連続での上昇とはいえ、最高値を前にして上昇率は縮まってきた。30日に発表された物価指標に過熱感はなかったが、米連邦準備制度理事会(FRB)の9月の利下げ幅が大きくなるとの期待は膨らまず。株式市場は半導体大手NIVIDIA(エヌビディア)の好決算にも冷淡な反応を示しており、投資家心理の変化も感じられる。米国経済の見通しをめぐっては8月初めから、労働市場悪化への不安がつきまとっており、9月6日発表の8月雇用統計の重要性が増しそうだ。
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アメリカのS&P500は3週続伸 上昇率は徐々に低下
S&P500(SPX)の30日の終値は5648.40。7月小売売上高の堅調さなどが好材料になった12-16日週以来、3週連続の値上がりとなった。ただし上昇率は1週目の3.93%高から、翌週の1.45%高、今回の0.24%高と徐々に縮まっている。7月16日につけた最高値(5667.20)が目前に迫る中、心理的な節目として意識されているようだ。
物価上昇に過熱感なし FRBの利下げ見通しは深まらず
30日の株式市場には物価上昇をめぐる追い風も吹いた。朝方に発表された7月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数が前年同月比2.5%、食品とエネルギーを除いたコア指数が2.6%。いずれも6月から横ばいの数字で、市場予想を下回る結果だった。しかしS&P500は午前中に前日比プラス圏で推移した後、午後には一時マイナス圏に沈む場面もあった。取引時間終了に向けて上げ幅を広げていったものの、7月PCE物価に対する株式市場の反応は冷静だったようだ。
CMEグループのデータによると、9月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅が0.5%になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間31日午前の段階で30%程度。前日の34%から低くなっている。物価上昇の落ち着きがFRBの利下げ見通しを強めて、S&P500に上昇圧力がかかるパターンには陰りがみられる。
半導体株も伸びず エヌビディアは週次で7.7%安
株式市場はエヌビディア(NVDA)が28日に発表した2024年5-7月期の好決算にも沸かなかった。エヌビディアの株価の30日の終値は119.37ドルで、1週間前比7.73%安。同様にブロードコム(AVGO)も2.13%安、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も2.67%安となっている。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も2.03%安と冴えない。
8月雇用統計が投資家心理を改善させる可能性も
物価や半導体株での好材料でも株式市場の見通しが明るくならない背景には、雇用をめぐる不安がぬぐいきれないことがある。S&P500は7月雇用統計で失業率が4.3%まで高まった2日に前日比1.84%安を記録。週明けの5日には雇用統計を機に進んだ円高がキャリートレードの巻き戻しを招いたことが悪材料となり、1年11か月ぶりの下落率となる3.00%安となった。その後、週次の失業保険関連統計では大きな波乱は出ていないが、投資家心理の重荷になっているようだ。
このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、6日に発表される8月雇用統計の重要度が高い。7月雇用統計の悪い結果にはテキサス州に上陸したハリケーンによる一時的な影響があったとの指摘もあり、8月の数字が雇用情勢の改善を示せば、S&P500の上昇見通しを強める可能性がありそうだ。
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