PCE物価は減速停滞か 7月予想 S&P500の復調に冷や水も
アメリカの7月のPCE物価上昇率はコア指数が4.2%上昇の見込み。復調の兆しが出た株式市場の足を引っ張る可能性も。
アメリカで31日に発表される7月の個人消費支出(PCE)物価指数は伸び率が6月よりも大きくなる見通しだ。物価上昇の減速が停滞していると受け止められれば、金融市場で米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが意識される可能性がある。一方、29日の米国株式市場ではS&P500種株価指数が約3か月ぶりの上昇率を記録し、8月の不調から抜け出す兆しをみせた。雇用関連の統計が経済活動の過熱感の和らぎを感じさせたためだが、7月のPCE物価の結果に水をさされる展開も想定される。
アメリカの7月のPCE物価指数はコアで4.2%上昇予想
PCE物価指数は31日午前8時30分(日本時間午後9時30分)に米商務省が発表する。ロイター通信のエコノミスト調査によると、総合指数の伸び率は前年同月比3.3%となり、6月の3.0%から物価上昇が強まる見込み。また、エネルギーと食品を除いたコア指数の伸び率は4.2%となり、こちらも6月の4.1%から大きくなる見通しだ。
FRBは物価上昇率の基準としてPCE物価指数を重視している。コア指数の伸び率は2022年11月以降、4.7%前後で横ばいが続き、2023年6月にようやく4.1%に下がったばかり。7月の数字が予想通りになれば、改めて物価上昇圧力の根強さが感じられそうだ。FRBのジェローム・パウエル議長は25日のワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で、目標とする物価上昇率2%の達成に確信は持てていないとの立場を表明し、経済指標次第で追加利上げする可能性を示唆している。
雇用市場の落ち着きでS&P500は大幅上昇
一方、29日の米国株式市場では、経済活動の落ち着きを感じさせる統計が歓迎された。米労働省が発表した7月の雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数が882.7万件となり、事前予想の946.5万件を大きく下回った。1000万件を下回るのは3か月連続だ。また、自発的な離職率は2.3%となり、2021年1月(2.3%)以来の低さとなった。自発的な離職率の低さは、労働者が次の仕事を見つけられる自信の少なさを示し、雇用市場の冷え込みの現れだとみなされる。
29日のニューヨーク債券市場では、米国経済の過熱感が薄れてFRBの追加利上げが遠のくとの見方から、長期金利(10年物米国債利回り)が4.122%まで低下。また、2年物米国債の利回りは4.890%となり、4営業日ぶりに5%を割り込んだ。こうした中、S&P500種株価指数(SPX)の終値は前日比1.45%高となり、6月2日(1.45%)以来の上昇率を記録。前日まで3.39%だった8月の下落率を1.99%まで縮めた。外国為替市場では1ドル=147円台に到達していたドル円相場(USD/JPY)が一気に145円台まで円高ドル安に振れた。
ただ、31日発表の7月のPCE物価指数が強い数字とみなされれば、FRBの利上げが改めて意識され、株価に下落圧力がかかる可能性がある。9月1日には8月の雇用統計の発表も予定され、株式市場は経済指標に左右される展開が続きそうだ。
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