米国株に不安急拡大 S&P500大幅安 キャリートレード見通し暗転
アメリカのS&P500は5日に3%下落。VIX指数はコロナ禍期以来の高さとなった。急激な円高が株式相場の変動につながったともみられている。
アメリカの株式市場で不安が急拡大している。S&P500種株価指数の5日の終値は前週末比3.0%安で約1年11か月ぶりの下落率。ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数は新型コロナウイル禍に見舞われていた2020年秋以来の高さとなった。5日の東京市場での史上最大の株価下落で投資家の不安が高まったことに加え、円高進行でキャリートレードの巻き戻しが起きていることが影響したとの見方もある。一方、株式市場では米国経済の底堅さに期待する声もあり、今後のS&P500の行方は投資家心理の先行きにかかっている側面もありそうだ。
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S&P500は3日続落の3%安 1年11か月ぶりの大きさ
S&P500(SPX)の5日の終値は前週末比3.00%安の5186.33。下落率は、予想以上の物価上昇が株価の見通しを暗くした2022年9月13日(4.32%)以来の大きさだった。2日発表の7月雇用統計の弱さで加速した株価下落が、さらに勢いづいた形だ。3日続落の末、7月16日につけた最高値(5667.20)からの下落率は8.49%に達した。
投資家不安の高まりは、シカゴ・オプション取引所が算出するVIX(VIX)の値動きでも明らかだ。VIXの5日の終値は38.57で、2020年10月28日(40.28)以来の高さ。取引時間中には65台に達する場面もあった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出される数値で、数字が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。
ドル円相場の円高がキャリートレードの巻き戻しを誘発か
投資家心理を悪化させた要因のひとつが、日本の株式市場で5日に起きた日経平均株価(N225)の急落だ。5日の日経平均の終値は前週末比4451.28円安という史上最大の下げ幅。下落率の12.40%でみても、米国の株価が急落したブラック・マンデーの翌日にあたる1987年10月20日(14.90%安)以来、歴代2位の大きさだった。日経平均の歴史的な下落はやはり、米国の7月雇用統計で示された米国経済の見通し不安が要因のひとつで、5日のS&P500の下落は世界的な株安の連鎖といえそうだ。
またS&P500の下落の背景には、ドル円相場(USD/JPY)での円高がキャリートレードの巻き戻しを引き起こしたとの指摘がある。円を低金利で借りてドルなどの通貨に交換し、米国株式などのリスク性資産に投資するキャリートレードを行っていた投資家は、円高が進むと、円建ての借り入れを返済する際により多くの外貨建て資金を用意せねばならない。こうした投資家は足元の円高でより多くの株式などを売却して手元に資金を確保する必要性にさらされているとみられ、さらに円高が進むと考えるならばキャリートレード自体をやめることも強いられる可能性もある。
足元の円高は日本銀行が7月31日に政策金利を0.1%から0.25%へと引き上げ、さらに植田和男総裁が記者会見で追加利上げも辞さない姿勢を示したことがきっかけで加速した。5日のドル円相場(USD/JPY)では1ドル=141.66円をつける場面もあり、約1か月前の7月3日につけた37年半ぶりの高値(161.99円)から20円以上の円高が進んでいる。また、7月31日には米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が9月利下げ見通しに言及したことも、日米金利差縮小を連想させる円高圧力となっている。
アメリカ経済には底堅さも 投資家心理の見通しは?
一方、米国経済の見通しは株式市場の悪化ほどは暗くはなっていないとの指摘もある。米サプライマネジメント協会(ISM)が5日に発表した7月の非製造業(サービス業)の景況感指数は51.4で、前月の48.8から上昇。市場予想の51.0も上回った。また世界的な株価下落を引き起こした7月雇用統計の弱さについても、7月にテキサス州に上陸したハリケーンによる一時的な影響が失業率の悪化などの形で現れたとの声も多い。
とはいえ、日本の超低金利環境に変化が生じ、FRBが利下げに向かうという現状は、金融市場の環境をめぐる見通しが大きく変化する節目を感じさせる。今後のS&P500の値動きでは、投資家心理の揺れ動きに沿って急落や急反発が繰り返される荒れた相場が続くことも考えられそうだ。
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