米国株への期待失速 S&P500見通し晴れず 半導体、ハイテク不調
アメリカのS&P500は7日に反落。エヌビディアは最高値から27%超安と失速が顕著だ。円高の一服は好材料だが、投資家心理は暗い。
アメリカの株式市場の失速が続いている。7日のS&P500種株価指数の終値は前日比0.77%安で、一時は18%を超えた2023年末比での伸び率は9%まで半減した。人工知能(AI)ブームに沸いてきた半導体株の勢いも失われており、先行きが危ぶまれる状況だ。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が保有するアップル株を半減させたとのニュースもあり、S&P500を牽引してきた大手ハイテク株をめぐるムードも盛り上がっていない。一方、キャリートレードの巻き戻しにつながったドル円相場の円高には歯止めがかかったものの、日本の超低金利状態が終わりに向かうとの見通しは投資家心理を暗くしたままのようだ。
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S&P500は0.77%安 2023年末比上昇率は9%まで半減
S&P500(SPX)の7日の終値は5199.50。5日までの3日連続での急落の後、6日は1.04%高と反発したが、勢いは続かなかった。2023年末比での伸び率は9.01%で、7月16日につけた最高値(5667.20)時に記録した18.81%の半分以下になっている。
アメリカ半導体株不振 エヌビディアは最高値から27%安
S&P500の見通しの悪さは半導体株の値動きでも明らかだ。AI開発に不可欠な高性能半導体で高いシェアを持つNVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価の7日の終値は前日比5.12%安の98.91。6月18日につけた最高値(135.58ドル)からの下落率は27.05%に達している。また7日の取引ではブロードコム(AVGO)も5.32%安。S&P500構成銘柄ではないものの、エヌビディアに匹敵する株価上昇をみせていた英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も5.56%安となり、7月10日の最高値(186.46ドル)から42.57%下落した。
またS&P500を牽引してきた大手ハイテク株も失速している。電気自動車(EV)大手のテスラの株価(TSLA)は7月23日の2024年4-6月期決算発表直前の終値から22.17%下落。同じ日に決算を発表したアルファベット(GOOGL)も同様に12.57%安となっている。いずれも決算発表の内容が利益面での不安を高めた結果だ。また、8月1日に決算を発表したアマゾン・コム(AMZN)の株価も7日までに11.57%安となった。大黒柱である小売関連事業の収入の伸びが減速し、世界経済減速のおそれを感じさせたことが悪材料となった。大手ハイテク株は時価総額が大きく、S&P500の値動きへの影響も大きい。
バフェット氏のアップル株は半減 S&P500の見通し悪化も
こうした中、バフェット氏が率いる投資会社のバークシャー・ハザウェイ(BRKB)が3日に発表した4-6月期決算発表では、保有するアップル株の評価額が6月末で842億ドルであることが判明。アップルの6月末の株価を基にして計算すれば保有株数は4.0億株程度とみられ、3月末の約7.9億株から半減していることが分かった。株式市場での注目度が高いバフェット氏が、時価総額が3兆ドルを超えるアップル株に「売り」の判断を示したことはS&P500の見通しを暗くする要因だ。
一方、低金利で調達した円を米国株などのリスク性資産に振り向けるキャリートレードの巻き戻しを引き起こした急激な円高には一服感が出た。日本銀行の内田真一副総裁が7日の北海道での講演で過度な利上げ見通しの折り込みを牽制したためだ。ドル円相場(USD/JPY)の7日のニューヨーク市場の終値は1ドル=146.69円で、前日比2.39円の円安ドル高となった。
VIXは上昇 日銀の利上げ見通しは投資家心理に影落とす
ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)などの主要中央銀行が2022年以降に利上げを繰り返す中でも大規模金融緩和を貫いてきた日銀が、ようやく利上げに本腰を入れるという見通しは金融市場にとっては大きな環境の変化といえる。シカゴ・オプション取引所によると、S&P500のオプション取引の動向から算出され、投資家の不安度を示すとされるVIX指数(VIX)の7日の終値は27.85で、前日の27.71から上昇した。米国経済の先行きへの不安もくすぶり続ける中、S&P500の上昇への期待がしぼんでいるといえそうだ。
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