米国株、消えない不安 S&P500週次横ばい 雇用悪化見通しは後退
アメリカのS&P500の混乱は収まった。しかし大手ハイテク株には傷跡も残り、今後も経済指標の発表ごとに大きな値動きとなる可能性がある。
アメリカの株式市場をめぐる不安が続いている。9日のS&P500種株価指数の終値は1週間前比で0.04%安。5日以降に大きな値下がりと値上がりを繰り返した後、ほぼ横ばいでの着地となった。7月雇用統計を機に高まった労働市場の悪化見通しはひとまずは後退したようだ。ただし株式市場には大手ハイテク株の下落といった傷跡も残り、ドル円相場で進んだ円高がキャリートレードの見通しを暗くした状況にも変化はない。来週も物価や雇用をめぐる注目度の高い経済指標の発表が控えており、S&P500の値動きが不安定になることも考えられる。
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アメリカのS&P500は4週連続値下がり
S&P500(SPX)の9日の終値は5344.16。週次での値下がりは4週連続で、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利高止まりが意識された2023年9月25-29日週までの4週連続以来の悪い記録となった。ただ、7月雇用統計の悪化を受けた5日に前週末比3.0%安となるなど、投資家心理の大幅な悪化がみられた後としては穏便な着地点だったといえる。
S&P500をめぐる不安を和らげたのは米国の労働市場への期待の復活だ。8日に発表された7月28日-8月3日週の新規失業保険申請件数は23万3000件で、ロイターがまとめた市場予想の24万件を下回った。S&P500はこの日、前日比2.30%高という2022年11月30日(3.09%高)以来の高い伸びを記録しており、労働市場の悪化が米国経済の見通し不安を高めるという構図が緩んだ。
大手ハイテク株が下落 エヌビディアにも期待膨らまず
ただしS&P500を引っ張ってきた大手ハイテク株の値動きには傷跡も残る。電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)の9日の終値は200.00ドルで週次3.69%安。半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)も2.35%安となった。週次での値下がりはテスラが5週連続、エヌビディアが4週連続だ。
エヌビディアの株価はこれまで決算発表の1か月ほど前から好決算への期待で値上がりが始まるケースが多かったが、2024年5-7月期決算をめぐっては発表日の8月28日が近づく中でも盛り上がりに欠けている。投資家の不安度を示すVIX指数(VIX)は9日の終値で20.37となり、5日につけた38.57の半分程度に下がったものの、7月中旬までつけていた12台からの跳ね上がりは収まっていない。
雇用情勢の見通しは不透明 経済指標次第で波乱も
またS&P500の値下がりの背景となった円キャリートレードをめぐる見通しの悪化も続いている。ドル円相場(USD/JPY)は5日に一時、1ドル=141.66円を記録。日本銀行が追加利上げを見据え、FRBが利下げを見据える状況の中、日本の超低金利がいつまでも続くわけではないという投資家の見通しが感じられた。ドル円相場の9日のニューヨーク市場の終値は1ドル=146.61ドルで、1週間前の146.54ドルとほぼ同じ水準だが、改めて円高に振れる可能性はぬぐえず、円を借りて米国株などのリスク性資産に投資するキャリートレードのリスクは高まった。
さらに米国の雇用関連指標が改めて悪化するおそれもある。新規失業保険申請件数は8日発表分のデータこそ好材料として受け止められたものの、1月半ばの19.4万件を底として上昇基調をたどっていることは確か。失業率上昇との相関関係も感じられ、次回発表(15日)が上振れれば改めて投資家の不安を高めかねない。このほか米国では14日に7月の消費者物価指数(CPI)、15日には7月小売売上高の発表も予定されており、米国の物価や経済の見通しをめぐる動向がS&P500の値動きを大きくすることも考えられそうだ。
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