米国株、熱狂なき最高値 S&P500上昇減速 長期金利の見通しは?
アメリカのS&P500は週次の上昇率が前週から低下。FRBの利下げにも関わらず長期金利は下がっておらず、見通しを暗くしている。
アメリカの株式市場が盛り上がりに欠けている。S&P500種株価指数の20日の終値は1週間前比で1.36%高。18日の連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利下げ発表が好材料となったが、上昇率は前週の4%から低下。利下げが決まった18日以降の3営業日では、当日を含む2日でS&P500が値下がりするという勢いのなさだ。FRBの利下げにも関わらず長期金利(10年物米国債利回り)は上昇しており、株価の見通しを暗くしている。一方、米国経済の不安材料となっている雇用情勢は底堅さを維持しており、投資家心理の悪化も進んでいない。S&P500を牽引してきた大手ハイテク株の値動きには勢いも出始めた。とはいえ米国経済の先行き不透明感は強く、今後、S&P500の上昇にブレーキがかかる可能性もありそうだ。
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アメリカのS&P500は週次1.36%高 前週から減速
S&P500(SPX)の20日の終値は5702.55。FRBが利下げを決めた18日に前日比0.29%安に沈んだ後、翌19日は1.70%高の5713.64をつけて約2か月ぶりに最高値を更新した。しかし20日は再び0.19%安と不振にあえぎ、週次での上昇率は1.36%にとどまっている。前週(9-13日)は利下げへの期待を背景にS&P500が4.02%高という大幅上昇を記録していただけに失速感は否めない。
長期金利はFRBの利下げ後に上昇 今後は低下の見通しか
S&P500の重荷となっているのは長期金利の上昇だ。20日のニューヨーク債券市場の長期金利の終値は3.728%。利下げの2日前にあたる16日につけた3.621%よりも高くなっている。米国債の値動きをめぐっては共和党と民主党の対立の結果、10月以降の連邦政府機関閉鎖のおそれが浮上しており、債券市場の不確定要素として働いている可能性がある。
ただしFRBの決定内容を踏まえれば、長期金利は今後は低下していく見通しだ。FRBの利下げ幅は金融市場で有力視されていた0.5%で、投資家の期待が裏切られたわけではない。またFRBは年内に合計0.5%幅の利下げを行う見通しも示しており、やはり米国の金利の先安観を示す内容だった。
また、米国の雇用情勢をめぐっては好材料も続いている。19日に発表された8-14日週の新規失業保険申請件数は21.9万件で4か月ぶりの低さ。ロイターがまとめた市場予想の23万件も大きく下回った。申請件数は4週連続で予想からの上振れが出ていない。S&P500の値動きでは、7月雇用統計での失業率の上昇や、8月雇用統計での就業者数の不振が悪材料とみなされてきたが、9月の労働市場は堅調さを保っているようだ。
投資家心理には落ち着き 大手ハイテク株の見通しに明るさ
こうした中、投資家心理は落ち着きを取り戻しつつある。シカゴ・オプション取引所によると、「ウォール街の恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の20日の終値は16.15で、2日連続で前日の数字を下回った。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が高いほどS&P500の値動きが大きくなることへの投資家の警戒感が強いことを表す。
アメリカ経済の軟着陸の見通しには不透明感も
とはいえ、米国経済がFRBの思惑通り、物価上昇の鎮静化と景気悪化の回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)を実現できるかには不透明感もある。FRBの利下げで長期金利が下がっていったとしても、これまで続いてきた金利高が米国経済を冷やす効果がこれから顕在化していけば、S&P500にとっては逆風だ。一方、27日に発表される8月の個人消費支出(PCE)物価指数について、ジェローム・パウエル議長は総合指数の伸び率が前年同月比2.2%まで低下するなどの予想を示しているが、結果が上振れるなどすればS&P500の今後の見通しにとっては新たな不安材料になることも想定される。
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