アメリカ大統領選挙で混乱増幅 政府閉鎖見通し再燃 長期金利上昇要因
アメリカの下院は18日、10月以降の予算をカバーするつなぎ予算の可決に失敗。政治の混乱は長期金利の上昇要因になりえる。
アメリカ大統領選挙まで約1か月半となる中、連邦政府機関閉鎖の懸念が改めて浮上してきた。米下院は18日、10月から始まる2025会計年度をカバーするつなぎ予算案を否決。法案を提出した多数派の共和党が一枚岩になれておらず、可決のめどが立っていない。またつなぎ予算案には大統領選挙などに関連し、投票者が米国市民権を保有していることを厳格に確認する条項が盛り込まれていることも混乱の要因。共和党の大統領候補のドナルド・トランプ前大統領が支持している条項で、つなぎ法案可決に民主党の協力を得られない背景になっている。米国政治の混乱は米国債の信用を低下させることから長期金利(10年物米国債利回り)の上昇要因といえ、金融市場の見通しを不透明にしている。
下院がつなぎ予算の可決に失敗 共和党結束できず
下院は18日午後6時44分(日本時間19日午前7時44分)につなぎ予算案を賛成202、反対220の反対多数で否決した。議会で多数派を占める共和党からは199人が賛成したが、14人は反対、2人は白票を投じた。投票に参加しなかった5人を加えると、共和党内の21人がつなぎ予算案可決に協力しなかったことになる。一方、民主党からの賛成は3人にとどまった。
つなぎ予算案は、10月からの2025会計年度の予算が成立していないことを踏まえ、現在の予算を3月28日まで6か月延長する内容。しかし米メディアによると、共和党内では歳出削減が行われないことや国防費の増額がないことなどへの反発があるという。一方、民主党はつなぎ予算の期限を3か月とするよう求めている。
アメリカ大統領選挙の投票に関わる条項も混乱要因
こうした混乱に拍車をかけているのが大統領選挙だ。つなぎ予算には、大統領選挙や連邦議会の選挙の投票に関し、投票者が米国市民権を持っていることを書類で証明することを義務化する条項が盛り込まれている。
この「セーブ・アクト」と呼ばれる条項はトランプ氏が強く支持している。トランプ氏は18日の投票前、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、セーブ・アクトが盛り込まれないのであれば「共和党はつなぎ予算に賛成すべきではない」と強調。今回の大統領選挙に関連し、民主党が不法な投票者を数万人単位で投票させようとしているとし、前にセーブ・アクトを成立させるよう主張した。一方、民主党は予算と無関係な条項を伴わないつなぎ予算の成立を目指している。
政府閉鎖危機は1年前にも 長期金利上昇とS&P500下落招く
政府機関閉鎖をめぐっては1年前も緊張感が高まり、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが2023年9月25日に政府機関閉鎖は米国の信用にマイナス影響を与えるとの見解を公表し、政治の二極化を問題視した。これに先立つ8月1日には米国の債務上限問題での混乱をめぐり、格付け会社のフィッチ・レーティングスが米国債の格下げを発表。米国債が売られた結果、長期金利が上昇する事態に至った。こうした中でS&P500種株価指数(SPX)は下落傾向をたどった。
1年前の混乱時には、9月30日になってようやく11月半ばまでのつなぎ予算が成立。その後も2024年3月までの間に、3回の予算成立を繰り返す形で政府機関閉鎖が回避されきた。このため、今回のつなぎ予算をめぐる混乱でも最終的には共和党と民主党の妥協点が探られるとの見方もある。ただ、セーブ・アクトの存在が民主党の歩み寄りを困難にする中、民主党が多数派の上院での可決も考えれば見通しには不透明感も強い。
米国の長期金利をめぐっては18日に連邦準備制度理事会(FRB)が0.5%幅の利下げを決め、今後も政策金利を引き下げ、米国の金利水準を低くする方向性を示している。その一方で、大統領選挙を目前に控えた政治の混乱は長期金利の上昇要因として働く可能性があり、投資家心理に微妙な影を落とすことも考えられそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。