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【アメリカ大統領選挙レポート:米国株の展望 前編】年末に向けて強気相場維持か、焦点は大統領選挙直後の株価動向

アメリカ大統領選挙が2週間後に迫ってきた。共和党のドナルド・トランプ候補と民主党のカマラ・ハリス候補の支持率が拮抗するなか、米国株は最高値圏の攻防にある。選挙後も米国株は強気相場を維持し、株高で2024年を終えることができるのか?アメリカ大統領選挙後から今年末までの米国株の展望について、前編と後編の二回に分けて考察する。

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記事のポイント

・アメリカ大統領選挙の年は、米国株が上昇する傾向にある
・米国経済は底堅さを維持し、ソフトランディング期待が今の米国株を支えている
・どちらの候補者が勝利しても、年末に向けて米国株は上昇する可能性が高い
・トランプ候補勝利なら、選挙後の”株高スタートダッシュ”を想定しておきたい


米大統領選挙と「株高アノマリー」

アメリカ大統領選挙の年は株高の傾向に

11月5日にアメリカ大統領選挙が行われる。今年最大のビッグイベントが2週間後に迫るなか、アメリカの株市場は強気相場を維持している。10月18日の市場でダウ平均とS&P500種株価指数(以下ではS&P500)はそろって過去最高値を更新した。

また、これまで出遅れていた中小型株の代表的な指数ラッセル2000も約3年ぶりの高値水準へ上昇している。中小型株にまで買いが広がる今の状況は、米株高のすそ野が広がっていることを示唆している。

米国株はアメリカ大統領選挙の後、今年の年末に向けて今の強気相場を維持できるのか?過去のデータを重視するならば、答えは「Yes」である。1960年以降、アメリカ大統領選挙が行われた年の米国株の騰落率を以下の一覧表にまとめた。10%超の株高となった年を「緑」、上昇で終えた年を「白」、そして下落で終えた年を「赤」で示した。

赤の下落をみると、アメリカ大統領選挙の年にダウ平均が下落して終えたのは4回しかない。S&P500はさらに少ない3回である。

一方、10%超上昇の緑をみるとダウ平均は7回、S&P500は8回も10%を超える株高となった。緑と白の上昇した年を合わせるならば、「アメリカ大統領選挙の年は株高」のアノマリー(過去の経験から観測できるマーケットの規則性)が見てとれる。

アメリカ大統領選挙の結果と各年の株価指数の騰落率:1960年~2020年

米大統領選挙と株価指数の動向:1960年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米大統領選挙後も強気相場を維持か

次に、アメリカ大統領選挙の年に米国株が下落した状況を下の棒グラフで確認すると、1984年のダウ平均の下落を除き、いずれも景気が後退した局面で株安となっている。特に2000年のドットコム(IT)バブルの崩壊と2008年の世界金融危機の時は、ダウ平均とS&P500の下落幅が拡大した。

翻って現在の米国経済は、雇用、個人消費そして企業活動といった重要な経済指標で景気の底堅さが確認されている。また、ソフトランディング期待の高まりで、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが緩慢になるとの観測が強まる状況にある。

上で述べた「アメリカ大統領選挙の年の株高」のアノマリーと、年内に米国経済が景気の後退局面に陥る可能性が限りなく低いことを考えるならば、米国株は今年の年末に向けて強気相場を維持することが予想される。

アメリカ大統領選挙の年の株価指数の騰落率:1960年~2020年

アメリカ大統領選挙後の株価指数の騰落率:1960年~2020年

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米大統領選挙後の”スタートダッシュ”

アメリカ大統領選挙が行われる年は株高のアノマリーが見て取れる。

では、最高値圏の攻防にある今の米国株が、今年の年末に向けてさらに上値を目指すことができるのか?これを見極めるうえで注目すべきは-

アメリカ大統領選挙後に”株高のスタートダッシュ”を切れるか

である。この点について2000年以降のS&P500のトレンドで確認すると、アメリカ大統領選挙後から上昇幅が拡大した年は、年末に向けて株高トレンドが加速する傾向にある。

注目したいのが、株高のスタートダッシュに失敗した2012年の動きである(下のチャート、右上のグレーラインを参照)。最終的には株高で終えたが、スタートダッシュに成功した年と比べて、アメリカ大統領選挙後の上昇幅は限定的だった。

S&P500の動向:アメリカ大統領選挙後から各年の年末まで

S&P500の動向:米大統領選挙後から各年の年末まで

ブルームバーグのデータで筆者が作成

アメリカ大統領選挙後の”スタートダッシュ”が重要なのは、ダウ平均も同じである。株高のスタートダッシュに失敗した年は、総じて下落して終えていることが分かる。

ダウ平均の動向:アメリカ大統領選挙後から各年の年末まで

ダウ平均の動向:米大統領選挙後から各年の年末まで

ブルームバーグのデータで筆者が作成

どちらが勝っても米国株は上昇か

トランプ勝利ならスタートダッシュの株高を意識

上で述べたとおり、アメリカ大統領選挙の年は「株高のアノマリー」がある。一方、景気が後退する局面ではアメリカ大統領選挙の年に米国株が下落する傾向にある。しかし、今の米国経済は底堅さを維持している。

これら過去の経験則を重視するならば、2024年のアメリカ大統領選挙で共和党のトランプ候補と民主党のハリス候補、どちらが勝利しても米国株は、今年の年末に向けて強気相場を維持すると筆者は考えている。

そしてトランプ候補が勝利する場合は、「株高のスタートダッシュ」となる可能性が高いだろう。そう考える理由は、共和党とトランプ候補が掲げる減税政策にある。

トランプ陣営は、2025年末に期限を迎える「トランプ減税」の恒久化を目指している。

2025年末に期限を迎えるトランプ減税の概要

2025年末に期限を迎えるトランプ減税の概要


また、トランプ候補は9月5日の米ニューヨークでの講演で「米国内で製品を生産する企業に限り、法人税率を15%まで引き下げる」と述べた。その他、米国を拠点とする製造業者の研究開発に関する税額控除の拡大も主張している。接客業の従業員に対するチップ課税を廃止することも、共和党の政策綱領に盛り込まれた。

トランプ陣営が掲げる減税や税控除の政策がすべて実現するかどうかは不透明である。だが、アメリカ大統領選挙と同時に行われる上下両院の選挙では、共和党が上院を制する可能性があるとの報道が見られる。下院でも共和党が多数派を維持する場合は、政策実現の可能性が各段に高まるだろう。

実際にアメリカ大統領選挙でトランプ候補が勝利し、上下両院を共和党が制する「トリプルレッド」の結果となれば、期待先行で選挙直後から「株高のスタートダッシュ」が発生し、米国株はその勢いを今年末で維持する可能性が出てくる。

トランプ陣営の経済政策 概要

トランプ陣営の経済政策

ハリス勝利でも株高が予想されるが

一方、民主党のハリス候補も新興の小規模事業者の税額控除を現行の5,000ドルから最大5万ドルに引き上げることを主張している。しかし、同時に法人税率を21%から28%へ増税すること、そして富裕層を対象に株式など投資の収益にかかるキャピタルゲイン課税などを28%に引き上げる方針も示している。

4年間で300万戸の住宅建設を目指すなどの住宅促進策、薬価の引き下げ継続などを盛り込んだ医療費支援などの経済政策も打ち出している。しかし、ウォール街にとって受けが良いのは、やはりトランプ陣営の減税政策の方だろう。

それでも上で述べた「株高のアノマリー」と今の景気の強さを考えるならば、ハリス候補が勝利しても、米国株は上昇すると筆者は考えている。

しかし、トランプ候補の勝利と比べて選挙直後に「株高のスタートダッシュ」となるかは不透明である。

米国株の状況を左右する鍵は、やはり上下両院の選挙の動向にある。民主党が下院を制しても共和党が上院を制する場合は、ハリス候補が掲げている増税政策が議会を通る可能性が低くなる。ゆえに、「株高のスタートダッシュ」となる可能性がある。

だが、米国株は最高値圏での攻防にある。ゆえに、「ハリス増税」は調整売りの要因(口実)になり得る。「株高のスタートダッシュ」に失敗する場合は売り買いが交錯する相場が予想される。しかし年末に向けて株高が徐々に進行し、前年比で上昇して2024年の相場を終えると筆者は考えている。

ハリス陣営の経済政策 概要

ハリス陣営の経済政策

米大統領選挙後の注目材料

経済指標

アメリカ大統領選挙が終わった後、米国株のトレンドを左右する材料として2つのことに注目したい。ひとつは、経済指標である。

選挙後は景気と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースがメインテーマとなるだろう。ゆえに雇用、個人消費そして企業活動に関連した経済指標の内容が、米国株のトレンドに大きな影響を与えるだろう。

選挙後も総じて強い内容が続けば、出遅れ感のあるバリュー株や優良な中小型株の買いを促す要因となろう。バリュー株の買いはダウ平均を下支えしよう。

エヌビディアの3Q決算

経済指標以外で注目すべき材料が、11月20日に予定されている米半導体大手エヌビディアの第3四半期(3Q)決算である。

2025年初頭にも、次世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」が出荷される見通しにある。ブラックウェルを含め総合的な業績見通し(ガイダンス)で投資家の期待を上回る強気の予想が示される場合は、他の主力半導体株の上昇をけん引するだろう。

半導体株の上昇は、S&P500ナスダック100の下支え要因となろう。

※主要なアメリカ株価指数と注目のセクターについては、後編のレポートを参照を参照してください。


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