米国株、3つの不安要素を抱え2月相場へ S&P500の月間見通し
2月のS&P500はパフォーマンスが低下傾向にある。トランプ関税によるインフレ再燃の懸念と金利上昇のリスク、そして米ハイテク株の割高感が意識されやすい状況も考えるならば、今月のS&P500は下落相場を警戒したい。
記事の概要
2月の米国株はパフォーマンスが低下傾向にある。この不安要素に加え、今年はトランプ関税によるインフレ再燃の懸念と金利の上昇リスク、さらに米ハイテク企業の割高感も意識されやすい状況にある。3つの不安要素に直面するS&P500は下落相場を警戒したい。月間の予想レンジは5,700-6,130ポイント。
目次
- 先週はダウ平均を除き下落、不穏ムードのなか2月相場へ
- S&P500、2月相場は軟調地合いの傾向に
- 3つの不安要素に直面する米国株、突然のボラティリティ拡大を警戒
- S&P500、今月の見通しと予想レンジ
先週はダウ平均を除き下落、不穏ムードのなか2月相場へ
先週のアメリカ株式市場では、ダウ平均を除く主要な株価指数が下落した。多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500は先月31日の市場で、同月24日の最高値6,128ポイントの手前で上昇が止められた。日足ローソク足のパターンは「陰線包み足」となった。高値圏での陰線包み足はトレンドの転換を暗示する。
一方、ナスダックはエヌビディア(NVDA)などの半導体株とクラウド収益で投資家を失望させたマイクロソフト(MSFT)の下落が響き100指数が1.36%、総合指数が1.64%とそれぞれ下落した。先月31日のナスダック100の日足ローソク足は長い上ヒゲ付きの上影陰線となった。高値圏での上影陰線は相場の下落を暗示する。不穏なムードが漂うなか、米国株は2月相場に突入する。
アメリカ株価指数の週間騰落率:1月27日~31日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
2月相場は低下傾向にあるS&P500
各月ごとのS&P500のパフォーマンスを確認すると、2月はパフォーマンスが低下の傾向にある。1957年から2024年までの平均騰落率で確認すると、1月と3月の高パフォーマンスに挟まれ、2月は「谷」のようにくぼんでいることが分かる(パフォーマンスが低下の傾向にある)。
S&P500は現在最高値圏の攻防にある。この状況で今年の2月は下で述べる不安要素も考慮する必要がある。今月のS&P500は下落相場に直面することを想定しておきたい。
S&P500の月間平均パフォーマンス:1957年~2024年
3つの不安要素に直面する米国株、今月は下落相場を警戒
不安要素1:2月のアノマリー
2月の米国株は、3つの不安要素に直面している。一つは、上で述べたパフォーマンスが低下傾向にある「2月のアノマリー」である。
不安要素2:トランプ関税、インフレ再燃の懸念、米金利の上昇リスク
2つめの不安要素は、インフレ再燃の懸念とそれに伴う米長期金利の上昇リスクである。トランプ米政権は今月4日からカナダ、メキシコからの輸入品に対して25%の関税を発動すると正式に表明した。また、中国の輸入品に対しても10%の追加関税を課すとした。
カナダのトルドー首相はトランプ関税の対抗措置として1,550億カナダドル相当の米国産品に25%関税を課すと表明した。一方、メキシコのシェインバウム大統領は、トランプ関税の最初の対抗措置について3日に会見で説明するという。
関税の報復合戦は、インフレ再燃の懸念を各市場で高めるだろう。なかでも米債市場の反応に注目したい。米国株のトレンドに影響を与える10年債利回り(長期金利)は、トランプ関税の影響によるインフレ再燃の可能性をある程度織り込み、先月の中旬に4.8%付近まで上昇した後、現在4.5%台で小動きの状況にある。しかし、この織り込み度合いの甘さが露呈する場合、米長期金利には再び上昇の圧力が高まることが予想される。
今週から来週にかけては経済指標にも注目したい。2024年12月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、前年同月比のコア指数を除き、昨年11月から上昇した。パウエルFRBが重視する物価指数でインフレの粘着性が確認された状況で今週7日の1月雇用統計、そして来週の同月消費者物価指数(CPI)がともに市場の予想を上回る場合は、インフレ懸念の高まりによる長期金利の上昇を警戒したい。「2月のアノマリー」と金利上昇のリスクが重なれば、最高値圏にあるS&P500には調整売りの圧力が高まることが予想される。
アメリカの長期金利:1時間足 1月9日~1月31日
不安要素3:米ハイテク企業の割高感、転落のエヌビディア
3つ目の不安要素が米ハイテク株の割高感である。先週の決算では、業績見通しでメタ・プラットフォームズ(META)とアップル(AAPL)が、かろうじて投資家の期待をつなぎとめた。一方、マイクロソフト(MSFT)は成長の中核を担うクラウド事業の増収率が投資家の期待を下回った。週間の騰落率を確認するとメタは6.44%、アップルは5.93%上昇した一方、マイクロソフトは6.53%下落し見事に明暗が分かれた。
今週はGoogleを傘下に持つアルファベット(GOOGL)とアマゾン(AMZN)が決算を発表する。焦点はやはり業績の見通し(ガイダンス)となろう。中国の新興AI企業ディープシークの登場で、米ハイテク株の割高感が意識されやすい状況にある。この点を象徴したのが、先週のマイクロソフトの下落である。アルファベットとアマゾンが現在の株価水準を投資家に納得させるだけの力強い成長見通しを示すことができなければ、米ハイテク株売りの圧力が高まる可能性があろう。
アルファベットとアマゾンの売上高および1株利益の予想
ブルームバーグがまとめたアナリスト予想 / 1月31日時点
中国の新興AI企業DeepSeek(ディープシーク)の台頭で、米ハイテク企業に対するバリュエーションの再評価が進むだろう。警戒したいのがエヌビディア(NVDA)である。同社の株価は先週15.81%急落した。
ディープシークがAI産業に与える影響について今月も様々な報道が見られるだろう。特にトランプ米政権の動きには常に注意を払いたい。アメリカ当局はディープシークが規制を回避してシンガポールのサードパーティー経由でエヌビディア製の先端半導体を購入した可能性を巡り調査をしているとの報道がある。調査の結果次第では、新たな規制強化の動き(またはその可能性を匂わす報道)が出てくる可能性がある。
また、今月下旬に発表される第4半期決算も重要である。同社のPERは現在47倍、PBRは44倍そしてPSRは26倍にある(1月31日時点)。力強い業績の見通しを示すことができない場合は、成長懸念から同社の株価の割高感が意識され、下で述べるサポートラインを視野に下落幅が拡大する可能性があろう。
日足チャートでトレンドを確認すると、200日線をローソク足の実体で完全に下方ブレイクし弱気シグナルが点灯している。フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準114.54ドルを下方ブレイクする場合は、76.4%戻しの105.43ドルを視野に下落幅の拡大を想定したい。後者のテクニカルラインをも下方ブレイクする場合は、昨夏以来となる節目の100ドル割れが視野に入ろう。
エヌビディアの株価:2024年8月以降
出所:TradingView
S&P500、今月の見通しと予想レンジ
予想レンジの下限は5,700
・今月のS&P500の予想レンジ下限は5,700レベル。上で述べた3つの不安要素が意識され下落相場が場合は、以下でまとめたサポートラインの攻防に注目したい
・50日線と90日線の下方ブレイクは、下落相場が進行するサインと捉えたい。これら移動平均線がレジスタンスラインへ転換するかどうか?この点も2月相場のトレンドを考える上で重要な焦点となろう
・昨年9月6日の安値と今年1月24日の高値の半値戻し5,765レベルは、サポートラインへ転換する局面が見られた水準である。この重要ラインをも下方ブレイクする場合は、予想レンジの下限5,700のトライを想定したい
サポートライン
・5.990:50日線(1/31時点、日足)
・5,911:90日線(1/31時点、日足)
・5,851:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(日足)
・5,765:半値戻し(日足)
・5,700:想定レンジの下限
予想レンジの上限は6,130
・一方、トランプ関税とその影響を織り込み米長期金利の上昇が抑制される場合、S&P500は上で取り上げたサポートラインで反発する展開を想定したい。アルファベット、アマゾンそしてエヌビディアの四半期決算が投資家の期待に応える内容となれば、予想レンジの上限は1月24日の高値水準6,130レベル
・週明けの米株価指数CFDは急落スタートとなった。本レポート掲載時点でS&P500(米国500)は5,900ポイントの前半で推移している。先物市場も前週末比で100ポイント超の急落となっている。よって目先の焦点は6,000ポイント台の再上昇とこの水準の維持となろう
・S&P500が6,000ポイント台で底堅さを維持すれば、予想レンジの上限6,130ポイントを視野に上昇幅の拡大を想定したい
・週明けの急落で可能性は低下しているが、6,130ポイントを上方ブレイクする場合は、フィボナッチ・エクステンション100%の水準6,176ポイントを視野に上昇幅が拡大する展開も想定しておきたい
レジスタンスライン
・6,176:フィボナッチ・エクステンション100%(日足)
・6,128:1月24日の高値(日足)
・6,100:レジスタンスライン
S&P500のチャート
日足:2024年8月以降
出所:TradingView
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