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【米国株】第2次トランプ政権発足、100本の大統領令署名へ 焦点は関税 S&P500は米金利にらみ

いよいよ第2次トランプ政権が発足、始動する。まずは関税政策の動向と米長期金利の反応に注目したい。今週のS&P500の見通しと予想レンジについて。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

1月20日に第2次トランプ政権が発足、始動する。アメリカの主要メディアは、トランプ氏が就任直後に100本前後の大統領令に署名すると報じている。現在のアメリカ株式市場では、インフレの再燃が主要なテーマとなっている。よって今週は、インフレ再燃の可能性を高めるトランプ政策の動向、特に関税政策とこれに対する米長期金利の反応でトレンドが左右されるだろう。今週(21日以降)のS&P500の中心予想レンジは5,870-6,100。


インフレ再燃が主要テーマであることを示した先週の米国株

先週15日に発表された2024年12月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比の上昇率が2.9%となった。11月の2.7%から伸びが加速した。しかし市場予想の範囲内でおさまった。

各市場の参加者が注目したのが、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数だった。前月比と前年同月比でともに市場予想を下回り、かつ昨年の11月から鈍化した。

アメリカの消費者物価指数(CPI):2023年12月以降

アメリカの消費者物価指数(CPI):2023年12月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:2024年12月の結果

主要なアメリカ株価指数の年初来騰落率を確認すると、今月15日にトレンドが急転換していることが分かる(下のラインチャート、緑ゾーンを参照)。主因は上で述べた米CPIコア指数の鈍化を受け、「インフレ懸念がひとまず後退→米債市場で長期ゾーンの利回りが急低下」したことだった。

15日以降の米国市場の動き(米金利の急低下と米国株の急反発)は、今のアメリカ株式市場が、いかにインフレの再燃を恐れているのか、を示唆している。

アメリカ株価指数の騰落率:年初来

アメリカ株価指数の騰落率:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成

投資家心理は落ち着いている

中小型株の指数ラッセル2000の上昇幅が拡大した状況は、米国株が再びリスク選好相場へ傾きつつあることを示唆している(上のパフォーマンスチャートを参照)。

また、投資家の不安心理を表すVIXとVXNはともに20ポイントを下回る水準にある。トランプ氏の大統領就任式を前に投資家の心理は落ち着いている。

VIXとVXNの動向:日足 2024年12月1日~2025年1月17日

VIXとVXNの動向:日足 2024年12月1日~2025年1月17日

ブルームバーグのデータで筆者が作成

S&P500は割高感が意識されやすい状況にある

一時4.8%まで上昇したアメリカの10年債利回り(長期金利)は現在、4.6%台まで低下している。一時は4.5%台へ低下する局面が見られた。しかし、現在のS&P500は割高感が意識されやすい状況にある。予想PERは26倍前後で2021年11月以来の高水準にある。長期金利とS&P500の株式益回りが逆転し、イールドスプレッドはS&P500の割高感を示唆している。

投資家の心理は落ち着いている。しかし何らかのリスクイベントが発生すれば、S&P500の割高感が株安の要因となる可能性がくすぶっている点には注意しておきたい。そのリスクイベントとして目先注視したいのが、トランプ政策の象徴のひとつ関税政策の動向と米長期金利の反応である。

S&P500の予想PER、米長期金利、イールドスプレッドの動向:週足2021年以降

S&P500の予想PER、米長期金利、イールドスプレッドの動向:週足2021年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

第2次トランプ政権が始動、まずは関税政策の動向と米債市場の反応を注視

アメリカ共和党のドナルド・トランプ氏は20日(日本時間21日未明)、第47代大統領に就任する。米国の主要メディアは、トランプ氏が就任直後に100程度の大統領令に署名する予定と報じている。

注目は関税政策の動向である。トランプ氏は昨年11月25日、就任初日にメキシコとカナダからのすべての輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名すると述べた。中国に対しては10%の追加関税を課すとしている。また、すべての国からの輸入品に一律10〜20%の関税を課すことも宣言している。そして今月14日には、関税などの徴収を扱う「対外歳入庁(ERS)」を新設し、関税の引き上げに意欲を見せた。

米10年債利回り(長期金利)はすでに4.8%まで上昇する局面が見られた。長期金利の上昇は米株高の調整売りを促した。これらの状況は、「関税の強化→インフレ再燃の可能性」をある程度織り込んでいる動きと考えることができる。今週も米金利の上昇が抑制されるか低下基調を維持する場合、米国株は反発基調を維持することが予想される。このケースでは、下で取り上げているレジスタンスラインの攻防に注目したい。

米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が16日の米CNBCテレビのインタビューで、インフレの鈍化が続けば今年前半の利下げについて考えると述べた。しかし米長期金利は4.6%現在、下げ止まっている。1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げ見送りの予想が大勢である。3月と5月の利下げ確率は、レポート掲載時点でともに20%台まで低下している。今年前半の利下げ期待が後退するなかでトランプ氏が新たな関税措置に言及する場合は、長期金利に再び上昇の圧力が高まる可能性がある。長期金利が上昇へ転じれば、上で述べたS&P500の割高感が意識されるだろう。このケースでは、下で述べる3つの移動平均線の攻防が焦点となろう。


S&P500、今週の見通しと注目のテクニカルライン

今週の米国株も長期金利にらみの状況が続くだろう。トランプ氏が就任式直後に関税の大統領令に署名しても米長期金利の反応が限定的ならば、米国株は反発基調を維持する展開が予想される。今週のS&P500の中心予想レンジは5,870-6,100ポイント。なお本日は、キング牧師の生誕記念日でアメリカの株式と債券市場は休場となる。

上昇局面では6,100ポイントのトライが焦点に
・S&P500は先週17日、節目の6,000ポイントへ到達する局面が見られた(高値6,014)。第2次トランプ政権発足を前に投資家の心理が落ち着いている状況で長期金利の上昇が抑制される場合、S&P500はさらに上値を目指す展開が予想される

・週間予想レンジの上限は、2024年の最高値水準6,100ポイント。このラインを目指すサインとして、以下で取り上げている3つの水準の攻防に注目したい

・最初の水準は、相場の上昇を二度止めたフィボナッチ・エクステンション61.8%戻し6,024である(1時間足、緑矢印を参照)。このテクニカルラインを完全に突破する場合は、昨年12月26日の高値6,050のトライを想定したい

・最後の水準は、フィボナッチ・エクステンション76.4%戻し6,083である。このテクニカルラインの上方ブレイクは、レンジの上限6,100をトライするサインと捉えたい

レジスタンスライン
・6,100:予想レンジの上限(日足)
・6,083フィボナッチ・エクステンション76.4%(1時間)
・6,050:昨年12月26日の高値(1時間)
・6,024:フィボナッチ・エクステンション61.8%(1時間)

株安再燃ならば3つの移動平均線に注目
今週、米長期金利が上昇へ転じる場合は株安の再燃を警戒したい。S&P500は3つの移動平均線の攻防に注目したい。

・今週S&P500が再び下値をトライする場合は、3つの移動平均線の攻防に注目したい。まずは50日線のサポート転換が焦点となろう。下落の局面でこの移動平均線を維持する場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう

・50日線を下方ブレイクする場合は、サポート転換の兆しが見える75日線の維持が焦点となろう。この移動平均線をも下方ブレイクする場合は、3つ目の移動平均線、89日線までの下落を想定したい。この移動平均線は先週17日の時点で5,870レベルにある。この水準を週間予想レンジの下限と想定したい

・トランプ氏が新たな関税に言及する場合は、米株安が進行する可能性がある。このケースでは、瞬間的に5,800のラインをトライする展開を想定しておきたい。休場明けの21日にトレンドチャネルの下限(フィボナッチ・チャネルのサポートライン)が5,800ポイントへ到達する。テクニカルの面でも5,800レベルを重要なサポートラインとなろう

サポートライン
・5,967:50日線(1/17時点)
・5,907:75日線(1/17時点)
・5,871:89日線(1/17時点)、予想レンジの下限
・5,800:トライアングルの下限


S&P500のチャート

日足:2024年7月以降

日足:2024年7月以降

出所:TradingView

1時間足:2024年11月以降

1時間足:2024年11月以降

出所:TradingView


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