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アメリカ株 二転三転のトランプ関税に右往左往 物価指数次第でS&P500も調整入りが視野に

11日のS&P500は、先月19日の最高値から一時10%下落する局面が見られた。今日と明日の物価指数でインフレ懸念が高まれば、ナスダックに続きS&P500も調整局面入りが予想される。

Souce:Bloomberg Souce:Bloomberg

記事の概要

二転三転するトランプ米政権の関税政策を巡り、米国株は右往左往の状況にある。11日の株式市場でS&P500は2月19日の高値から一時10%下落する局面が見られた。目先の注目材料は、今日と明日に発表される2月の物価指数となろう。景気の減速が意識されるなかでインフレ再燃の懸念を高める内容が続けば、ナスダック指数に続きS&P500も調整局面入りの展開が予想される。


ナスダックに続きS&P500でも調整局面入りのシグナルが点灯

11日の米株式市場で主要な株価指数が下落して終えた。多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500は取引時間中に2月19日の最高値か10%下落し、一時調整局面入りのシグナルが点灯した。その後の買い戻しで終値ベースでの調整入りはかろうじて避けたかたちとなったが、連日の陰線引けで地合いの弱さを市場参加者に印象付けた。

S&P500の弱気地合いは、日足の一目均衡表でも見て取れる。転換線が基準線を下抜け、遅行線は上から下に株価を下抜けた。その株価は雲を下抜け「三役逆転」の状況にある。MACDとモメンタムの低下トレンドも弱気相場に勢いがあることを示唆している(日足チャート、黒矢印を参照)。ラッセル2000とナスダック指数に続きS&P500も調整局面入りが視野に入る。

S&P500のチャート:日足 2024年7月以降

S&P500のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView


二転三転のトランプ関税、物価指数とインフレ懸念、株安進行を警戒

現在のアメリカ株式市場は景気不安が主要なテーマにある。その景気不安を煽っているのが、二転三転するトランプ米政権の関税政策である。

トランプ米大統領は11日、カナダの鉄鋼とアルミ製品への追加関税を25%から50%に引き上げると表明した。しかしその数時間後に、この措置を中止する可能性を示唆し、撤回した。

方向性の定まらない政策の方針を受け、昨日の取引後半の米国株は売りと買いが交錯する展開となった。トランプ米政権は関税を取引(ディール)の手段と考えているため、相手国の動向を見ながら国益を軸に方針を二転三転させてくるだろう。関税を巡る米国株の不安定な状況を想定したい。

トランプ関税が警戒される理由は、インフレの再燃につながるからだ。そのインフレ動向を見極めるうえで、今日は2月の消費者物価指数(CPI)が重要視されるだろう。ブルームバーグがまとめた市場予想では、前月比と前年同月比はともにインフレが抑制される見通しにある。ゆえに、警戒すべきは上振れリスクにある。景気の減速懸念が高まるなかで2月CPIがインフレ圧力の根強さを示せば、スタグフレーションの可能性が意識され米国株には売りの圧力が高まることが予想される。

米国 消費者物価指数の動向:直近1年間

米国 消費者物価指数の動向:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:2月の市場予想

明日は、2月の生産者物価指数(PPI)が発表される。CPIと同じくインフレが抑制される見通しにある。PPIでも警戒すべきは上振れリスクとなろう。

一方、これら2つの物価指数が予想以下となれば、米国株の買い戻し要因になり得る。しかし、トランプ関税を巡る不透明感は今後も続くだろう。ゆえに景気減速の懸念もそう簡単には後退しないだろう。よって、単月の物価指数が現在の弱気相場を反転させる可能性は低い。株価反発の局面では、新たなレジスタンスラインの見極めが焦点となろう。

米国 生産者物価指数の動向:直近1年間

米国 生産者物価指数の動向:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:2月の市場予想


S&P500の見通しとテクニカルライン

高まる投資家の不安心理
11日のIGコモディティレポートで取り上げた米国債の先行き変動リスクを示すMOVE指数は昨日、114ポイント台まで上昇した。現在の米金利の低下を考えるならば、安全資産としての米債買い需要が高まる可能性を示唆している。

MOVE指数:日足 2024年7月以降

MOVE指数:日足 2024年7月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

一方、米国株の代表的なボラティリティ指数VIXとVXNはともに30ポイントを視野に上昇している。MOVE指数とこれら2つのボラティリティ指数の動向は、トランプ関税の不確実性とそれが景気にもたらす悪影響を投資家が強く懸念していることを示唆している。

VIXとVXN指数:日足 2024年7月以降

VIXとVXN指数:日足 2024年7月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

インフレ懸念高まれば、S&P500も調整局面入り
投資家の不安心理が高まるなか、今晩の2月米消費者物価指数(CPI)が予想外に上振れすれば、景気減速の懸念が米国株の重石となることが予想される。明日のPPIもインフレ懸念を高める内容となれば、ラッセル2000ナスダック100に続きS&P500の調整局面入りを想定したい。注目のサポートラインを以下にまとめた。

・今日と明日の物価指数がS&P500の下落要因となれば、5,400ポイントの維持が焦点となろう。この水準は、昨年9月6日の安値水準(5,402ポイント)でもある。このサポートラインをトライするサインとして、まずは昨日の安値5,528ポイントの下方ブレイクを確認したい

・S&P500が5,528ポイントを下方ブレイクする場合は、日足チャートのフィボナッチ・リトレースメント61.8%水準5,512ポイントの攻防が焦点に浮上しよう。このテクニカルラインのトライは、5,500ポイントの維持を見極める重要な攻防となろう

・S&P500が5,500ポイントをも難なく下方ブレイクする場合、明確なサポートラインが見当たらない。よってこのケースでは、一気に5,400ポイントをトライする展開を想定しておきたい

サポートライン
・5,528:3月11日の安値(日足)
・5,512:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(日足)
・5,500:サポートライン(日足)
・5,400:サポートライン、昨年9月6日の安値(日足)

反発の局面では5,700レベルの突破が焦点に
一方、2月の物価指数が株高の要因となれば、S&P500は5,700レベルまでの反発を想定したい。この水準は、昨年の9月下旬から11月上旬にかけてサポートラインとして意識された。ゆえに現在は、レジスタンスラインへ転換する可能性を意識する局面にある。また直近では、5日線が5,707ポイント付近まで低下している。テクニカルの面でも5,700レベルがレジスタンスラインとして意識される可能性があろう。S&P500が5,700ポイントをトライするサインとして、15分足にプロットしたサポートラインの攻防に注目したい。

・最初のレジスタンスラインは、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準5,626レベルとなろう。すぐ上の水準5,640レベルはレジスタンスラインへ転換するムードにある。5,625~40をレジスタンスゾーンと想定したい(15分足、黒矢印を参照)

・S&P500がレジスタンスゾーンを突破する場合、次の焦点は5,660レベルの攻防となろう。この水準は、昨日の取引時間序盤に相場の上昇を止めたレジスタンスラインである。5,660レベルの突破は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準5,686レベルをトライするサインと想定したい

・S&P500が61.8%戻しを突破する場合は、5,700ポイントのトライを想定したい。このラインがレジスタンスへ転換する場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。一方、5,700ポイントを突破する場合は、10日線のトライが焦点に浮上しよう。後者の移動平均線は、5,793ポイント付近まで低下している

レジスタンスライン
・5,793:10日線(日足)
・5,700:レジスタンスライン、5日線(日足)
・5,685:61.8%戻し(15分足)
・5,660:レジスタンスライン(15分足)
・5,626~40:レジスタンスゾーン(15分足)


S&P500のチャート

日足:24年8月以降

日足:24年8月以降

出所:TradingView

15分足:3月8日以降

15分足:3月8日以降

出所:TradingView


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