米国株への不安消えず S&P500急騰 相互関税停止も経済混乱見通し
S&P500は9日、相互関税の一部停止で急騰。エヌビディアは18%高となった。ただ、中国との対立や自動車関税などは重荷で、見通しには不安も残る。

アメリカの株式市場が急騰した。S&P500種株価指数の9日の終値は前日比9.52%高の5456.90で、約16年5か月ぶりの上昇率。ドナルド・トランプ大統領が相互関税の一部を90日間停止すると発表し、米国経済の混乱拡大がスローダウンするとの期待が広がったためだ。9日の取引では半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価が18%超の値上がりとなるなど、大手ハイテク株も急反発している。ただ、トランプ氏は相互関税の一部停止と同時に中国製品への関税を125%に引き上げたとも表明。米国経済の先行き不透明感が消えたわけではない。自動車輸入に対する25%関税なども引き続き米国経済にとっての重荷となるとみられ、S&P500の今後の見通しには不安が付きまといそうだ。
【関連記事】米国株にリスク山積 S&P500週次反発 米中対立、経済悪化不可避か(2024年4月12日)
アメリカのS&P500は9.52%高 16年5か月ぶりの上昇率
S&P500(SPX)は9日午前に前日終値付近で取引された後、午後1時18分にトランプ氏が自身のSNS、トゥルース・ソーシャルへの投稿で相互関税について、今後90日間、中国を除く全ての国に対する税率を10%にすると発表すると、一気に急騰。ブルームバーグによると、終値での9.52%高は、リーマン・ショックから約1か月半後にあたる2008年10月28日(10.79%高)以来の大きさだった。

トランプ氏が相互関税の一部を90日間停止 長期金利は上昇後に低下
9日午前0時1分に発動したばかりだった相互関税は約100か国からの輸入が対象で、日本製品には24%、欧州連合(EU)製品には20%が課されるといった厳しい内容だった。トランプ氏は9日、記者団に対して、相互関税の一部停止の理由について「人々が少しびっくりしたようだった」と述べ、金融市場の混乱が決定の背景にあることを認めた。株式市場の急騰は、トランプ氏が金融市場の暴落を受け入れているわけではないとの安心感が要因といえそうだ。
9日の金融市場ではS&P500と同様に、長期金利(10年物国債利回り)も大きく変動。ブルームバーグによると、9日午前中には4.446%まで上がる場面もあったが、トランプ氏の発表後は一時、4.291%まで下がった。相互関税が米国経済を縮小させるとの懸念は米国債の価格下落につながっていたが、不安は一定程度は和らいだ。
エヌビディアの株価は18.72%高 テスラは22.69%高
S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株では、底値が見えない状況となっていたエヌビディアの株価(NVDA)が9日の終値で前日比18.72%高。電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は22.69%高となった。このほか、アップル(AAPL)は15.33%高、メタ・プラットフォームズ(META)は14.76%高、アマゾン・コム(AMZN)は11.98%高、マイクロソフト(MSFT)は10.13%高、アルファベット(GOOGL)は9.68%高となっている。

中国に対する関税は125%に 鉄鋼・アルミや自動車への25%関税も重荷
ただ、トランプ氏は高関税による通商政策の大転換を断念したわけではないようだ。トランプ氏は9日のSNSヘの投稿で中国に対する関税を125%とし、即時に発動したと発表。トランプ氏が中国製品への関税を合計104%にまで引き上げたことへの対抗措置として、中国が米国製品への関税を84%にしたことを念頭に、「中国が敬意を欠いていることが世界市場に示された」と批判した。米国にとって中国は、メキシコやカナダに次ぐ3番目の規模がある貿易相手国なだけに、米中対立のさらなる激化はS&P500にとって重荷になりそうだ。
またトランプ氏は3月12日には鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%関税を発動済み。さらに4月3日には自動車や自動車部品の輸入に対する25%関税も発動させており、世界の製造業のサプライチェーンに影響を与えることは避けられない見通しだ。トランプ氏は相互関税について米国との協議を申し入れた75以上の国とは、関税だけでなく、非関税障壁や為替操作も含めた幅広い問題を協議するとしており、交渉の難航も想定される。
S&P500の見通しは依然不安 長期金利やVIX指数は高水準のまま
このため米国の株式市場の見通しへの不安は完全に払しょくされたとはいえない。S&P500の9日の終値はトランプ氏の相互関税発表直前につけた4月2日終値(5670.97)からは7.70%安の水準。4日の上昇で3日から8日にかけての4営業日続落で失った688.20ポイントの3分の2を取り戻したとはいえ、今後も上昇が勢いづくかには不透明感も残る。また、長期金利の9日の終値(4.446%)は日中の高値からは落ち着いた半面、前日終値よりは0.041%ポイント高い水準だった。

実際、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は引き続き高水準にある。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの9日の終値は33.62。前日には52.33をつけており、9営業日連続で20を上回った。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが激しくなることへの警戒が強いことを示す。

S&P500の見通しは3月CPIや企業決算でも揺れる可能性
S&P500の今後の見通しをめぐっては、10日午前8時30分(日本時間10日午後9時30分)に発表される3月の消費者物価指数(CPI)にも注目が集まる。物価上昇率が予想よりも上振れるなどすれば、米国経済の健全性はすでに損なわれているとの不安から、S&P500が下押しされる可能性もある。また4月下旬以降には大手ハイテク企業の決算発表も相次ぐ予定で、投資家の不安が消えることはなさそうだ。

本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。

こんなに豊富?IG証券のCFD銘柄は17,000以上
外国為替、日本株・外国株、株価指数、債券先物、商品(エネルギー、農産物、貴金属)など多彩な資産クラスをFX取引、CFD、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションで提供
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。