エヌビディア、株価下落に底なし不安 米中対立激化 S&P500も下落
エヌビディアの株価は8日、1.37%の反落。最高値から35%超安に低迷している。米中対立の激化は強い逆風で、決算発表シーズンを控えた不安は大きい。

アメリカの半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価の底値が見えてこない。エヌビディア株の8日の終値は前日比1.37%安。前日の反発の勢いは続かず、最高値から35%超の安値となった。S&P500種株価指数も同様の値動きで、投資家のリスク回避姿勢は弱まっていない。ドナルド・トランプ大統領の相互関税が中国との貿易戦争に火をつけたことで、エヌビディアの業績に強い逆風が吹くおそれがあることが大きな悪材料となっている。人工知能(AI)ブームを背景として急騰を続けてきたエヌビディアの株価への期待は大きく削がれたままだ。一方、株価急落は割安感につながっているものの、今後、半導体企業の2025年1-3月期の決算発表会見などで業績見通しへの危機意識が感じられれば、エヌビディアの業績への不安も高まる可能性がありそうだ。
エヌビディアは8日に1.37%安 最高値からの下落率は35.56%に
エヌビディアの株価(NVDA)の8日の終値は96.30ドル。午前11時台には前日比8.25%高まで上昇が勢いづいたが、その後は下落に転じ、午後3時台には3.06%安まで値下がりする場面も出た。終値は1月6日につけた最高値(149.43ドル)から35.56%安の水準で、4日につけた年初来安値(94.31ドル)に接近している。S&P500(SPX)も日中に大幅高の後で下落する同様の値動きで前日比1.57%安となり、4営業日続落。投資家のリスク回避姿勢は依然として強いようだ。

相互関税で米中対立激化 米国の中国製品への関税は104%へ
米国の株式市場を揺らしているのはトランプ政権の通商政策をめぐる期待と不安だ。スコット・ベッセント財務長官は7日、相互関税をめぐって日本をはじめとする貿易相手国との協議に意欲を表明。株式市場では交渉の進展次第で相互関税が引き下げられ、経済の混乱の悪化が止まるとの期待も出た。
しかし米国製品に34%の対抗関税をかけるとしている中国との対立激化は治まっていない。米国が中国製品にかける関税は9日から、3月までに発表された20%と、相互関税の34%、さらにトランプ氏が7日に表明した中国の対抗関税への対抗措置としての50%の上乗せ関税を加え、最低でも104%に達することになる。米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は8日、米上院金融委員会での証言で中国の反応について「米国との交渉に向けた兆しはない」と言及。相互関税は予定通りに9日に完全発動されるとの見通しを示した。
エヌビディアの業績に中国市場の存在感 中国政府の動向は株価を揺らす
米中対立の激化はエヌビディアにとっては大きな不安材料だ。2025年1月通期の業績ではエヌビディアは総収入の約13%を中国市場で稼いでいる。また全体の約24%を占める「シンガポールなどその他市場」への輸出からも一定割合が中国市場に再輸出されているとの見方もある。

このためエヌビディアの株価は中国政府の動向で大きく値下がりする場面が目立つ。3月26日には英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が中国政府の省電力規制がエヌビディアの業績を下押しする可能性があると報じ、エヌビディアの株価は前日比5.74%安と大きく下落。2024年12月9日には、中国政府が独占禁止法違反の疑いでエヌビディアの調査を始めたと報じられ、株価は2.55%安となった。

また米国のジョー・バイデン前政権が退陣間際の1月13日に半導体輸出規制の見直し案を発表し、エヌビディアの中国向け半導体輸出が難しくなるとの見方が広がった際も、エヌビディアの株価は1.97%安となっている。エヌビディアへの期待を高めてきた大手ハイテク企業のAI関連投資は2025年も続く見通しだが、度重なる逆風はエヌビディアの株価が復活するとの期待を削いでいる。
エヌビディアの株価の割安感は続く TSMCの業績見通しなどで波乱の可能性も
一方、エヌビディアの株価が低迷する中で、割安感は続いている。ブルームバーグによると、エヌビディアの株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は8日時点で約21倍。AIブームが本格化した2023年以降の平均値(38倍程度)を大きく下回っている。今後12か月の1株当たり利益(EPS)の予想は4.55ドルで、2024年末時点での水準からは16%増。現段階ではエヌビディアの業績への期待が後退したわけではないようだ。

ただ、金融市場が見込む業績見通しは今後、大きく低下する可能性もある。半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)が17日に開く1-3月期決算発表会見で4月以降の業績の見通しについて慎重さが感じられれば、TSMCの大口顧客であるエヌビディアが生産に慎重になっているとの見方が成り立ち、エヌビディアへの期待縮小にもつながりかねない。また、その後の大手ハイテク企業の決算発表でAI投資への慎重姿勢が示されることも考えられ、エヌビディアの株価の今後の見通しにとっては、いくつもの難所が待ち構えているといえそうだ。
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