米国株、エヌビディアで揺れる S&P500見通しに影 11日にCPI
S&P500は9日に3週間ぶりの大幅下落。中国当局によるエヌビディアへの調査が悪材料となった。11月CPIへの警戒も感じられる。
アメリカの株式市場が米中対立のリスクで揺れた。S&P500種株価指数の9日の終値は3週間ぶりの大幅な下落。中国政府が半導体大手NVIDIA(エヌビディア)に対して独占禁止法違反の疑いで調査を始めたと伝わったことが悪材料となった。米中関係はドナルド・トランプ次期大統領の再登板で緊張が高まるとみられており、中国の反撃姿勢が投資家の不安を高めている。一方、米国株式市場では11日に発表される11月消費者物価指数(CPI)への関心も高い。物価上昇の根強さが感じられれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ予想が後退し、S&P500の今後の見通しにとって悪材料となる可能性もありそうだ。
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アメリカのS&P500は0.61%安 3週間ぶりの下落率
S&P500(SPX)の9日の終値は前週末比0.61%安の6052.85。下落率はFRBの利下げへの慎重姿勢などが材料視された11月15日(1.32%安)以来の大きさとなった。S&P500は11月18日から12月6日にかけて、値下がりが2回しかなかっただけに上昇基調の継続見通しに影が差した形だ。
エヌビディアは2.55%安 中国の独禁法当局による調査が悪材料に
S&P500の足を引っ張ったのはエヌビディア(NVDA)だ。9日の終値は前週末比2.55%安で、11月25日(4.18%安)以来の下落率となった。中国政府が独禁法違反の疑いでエヌビディアの調査を始めたと伝わったことが不安材料となっている。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、中国当局は、エヌビディアが2020年にイスラエル企業買収の承認を受けた際の合意に違反している疑いがあるとみている。エヌビディアは中国への画像処理半導体などの供給を滞らせないことや中国の顧客を差別的に扱わないことなどを約束していたという。
米国政府はエヌビディア製品を含む高性能半導体の中国への輸出を規制してきた。また、トランプ氏は中国との対決姿勢を繰り返していることから、今後も規制が強化される可能性がくすぶっている。一方、中国企業のエヌビディア製品に対する需要は根強く、エヌビディアは製品の性能を規制対象から外れるように抑えた半導体を中国向けに輸出。エヌビディアの2024年8-10月期決算での中国での売上高は全体の15%程度を占めている。今回の中国政府によるエヌビディアへの調査は、米国によるさらなる規制強化を牽制する狙いがあるとみられている。
VIX指数は上昇 11月下旬以来の高さに
こうした中、9日の金融市場ではウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)が上昇した。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの9日の終値は14.19で、11月25日(14.60)以来の高さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほどS&P500の値動きが荒くなる見通しが警戒されていることを意味する。
11月CPIは総合指数で物価上昇加速の予想 FRBの利下げ見通し後退も
投資家の警戒感の背景には、米労働省が11日午前8時30分(日本時間11日午後10時30分)に11月CPIを発表することもありそうだ。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、総合指数の伸び率は前年同月比2.7%、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は3.3%になるとみられている。総合指数は10月の2.6%から加速、コア指数は横ばいになるとの見通しだ。
11月CPIの結果はFRBの利下げ見通しを揺らす可能性がある。CMEグループのデータによると、17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間10日午前11時現在で約86%。その後の利下げは2025年3月に行われるとの見方が有力だ。ただ、11月CPIが予想よりも強い結果になれば、2025年の利下げペースが鈍化するとの見方が広がり、S&P500の今後の見通しを悪くすることも考えられる。
また、日本時間10日には半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)の11月の総収入の発表も予定されており、エヌビディアを含む半導体株の株価を左右する可能性もありそうだ。
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