米国株の興奮冷める S&P500週次2%下落 半導体株見通しに暗雲
アメリカのS&P500は週次下落。大統領選挙の結果が好感された前週からムードが一変した。利下げペース減速や半導体企業の業績への不安が要因だ。
アメリカの株式市場の楽観ムードが冷え込んだ。S&P500種株価指数の15日の終値は1週間前比で2%超の値下がり。9月上旬以来の大きな下落率となり、大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利が起爆剤となった勢いは失われた。米国経済の強さを背景として、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが減速するとの見通しが悪材料視されているほか、半導体関連企業の業績への不安も拡大。株価の重荷となっている。20日には人工知能(AI)ブームの立役者である半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の決算発表も控えており、S&P500の今後の見通しに対する投資家の警戒感は続きそうだ。
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アメリカのS&P500は週次2%安 大統領選挙後の上昇から反落
S&P500(SPX)の15日の終値は1週間前比2.08%安の5870.62。トランプ氏の勝利が米国の経済活動を刺激するとの見通しが追い風になった前週(4-8日)の4.66%高から反落した。週次での下落率は8月雇用統計の結果が悲観された9月2-6日週(4.25%安)以来の大きさだ。
10月小売売上高は予想を超える強さ FRBは利下げへの軸足を修正か
S&P500の下落を招いたのはFRBの利下げペースが減速するとの見通しだ。FRBのジェローム・パウエル議長は14日のテキサス州での講演で利下げを急ぐ必要性がないことを強調。ボストン連銀のスーザン・コリンズ総裁も15日のブルームバーグテレビでのインタビューで12月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げについて「選択肢には確実に入っている」としつつ「決まった道筋はない」とも言い添えた。株式市場では利下げへの慎重姿勢として受け止められたようだ。
FRBの利下げペースが遅くなるとの見通しは15日に発表された10月の小売売上高でも裏付けられている。10月小売売上高の伸び率は前月比0.4%で、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.3%を上回る実績。また、9月の伸び率は0.8%とされ、従来の0.4%から上方修正された。米国の消費の強さが物価上昇圧力を高める効果となって現れれば、利下げは難しくなるとの見立てが成り立つ。パウエル氏は7日のFOMC後の記者会見では利下げ継続に軸足を置いていたが、物価上昇の根強さへの警戒もあってトーンの修正を迫れられているようだ。
利下げペースの遅れは中小型株の見通しも悪くした。中小型株の代表的な株価指数であるラッセル2000(RUT)は15日まで4日続落。週次での下落率は3.99%安となり、S&P500よりも見劣りする結果となった。中小型株企業は変動金利での借り入れが比較的多く、業績が金利高の悪影響を受けやすいとされる。
半導体株の見通しは悪化 アプライド・マテリアルズの業績予想への失望も
米国の株式市場では、企業業績への不安も続いている。半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズ(AMAT)をめぐっては、14日の2024年8-10月期決算発表に際して示した2024年11月-2025年1月期の総収入の見通しが、ブルームバーグがまとめた市場予想を下回った。アプライド・マテリアルズの株価は15日に前日比9.20%安と急落。エヌビディア(NVDA)も3.26%安。ブロードコム(AVGO)も3.25%安となった。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手のアーム・ホールディングスの株価(ARM)も5.59%安となっている。半導体株をめぐっては台湾積体電路製造(TSMC)が8日に発表した10月の総収入が不調だったこともあり、下落圧力がかかっていた。
S&P500の今後の見通しをめぐっては、20日に行われるエヌビディアの8-10月期決算発表に注目が集まる。アプライド・マテリアルズと同様に11-1月期の見通しが市場予想を下回れば失望を買うおそれがある一方、好業績が続いていくとの期待が高まれば株価上昇につながる可能性もある。AI開発やAIサービス展開に不可欠な半導体を供給するエヌビディアの業績はAIブームの継続性の確度を表す要素といえ、投資家心理を左右することになりそうだ。
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