米国株の見通しの分かれ目? エヌビディア決算目前 S&P500に不安
アメリカ株式市場は20日のエヌビディア決算を控えた緊張感が漂う。S&P500は3営業日ぶりに反発したが、AIブームの継続性への不安は消えない。
アメリカの株式市場が曲がり角を迎える不安が高まっている。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が20日に発表する2024年8-10月期決算が人工知能(AI)ブームの見通しを揺らす可能性があるからだ。エヌビディアの成長ペースが鈍化すれば投資家の期待が冷え込むことも想定され、18日に3営業日ぶりに反発したS&P500種株価指数が再び失速するおそれもある。一方、米国の株式市場ではドナルド・トランプ次期政権をめぐる思惑が株価を押し上げているほか、引き続きAI関連需要の強さが続くとの期待も大きい。ただ、AIブームは約2年にわたって続いており、継続性への疑念が高まれば、S&P500の今後の見通しには悪材料になりそうだ。
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エヌビディアは20日に決算発表 実績や業績見通しが株価を左右
エヌビディアは20日の取引時間終了後に8-10月期決算を発表する。ブルームバーグがまとめた日本時間19日午前段階の事前予想では、総収入が前年同期比83%増の332.10億ドル、調整ベースの1株当たり利益(EPS)が84%増の0.74ドルと見込まれている。エヌビディアの急成長はすでに一巡しており、8-10月期の実績や同時に示される業績見通し次第では成長減速が悪材料視される可能性がある。
エヌビディア決算への不安は株価の値動きにも表れている。エヌビディアの株価(NVDA)は18日に前週末比1.29%安の140.15ドルとなり、2営業日続落。7日につけた最高値(148.88ドル)からは5.86%安となっている。半導体株をめぐっては台湾積体電路製造(TSMC、TSM)が8日に公表した10月の業績や、米国の半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズ(AMAT)が14日に示した業績見通しが悪材料視され、下落圧力がかかっている。
S&P500は3営業日ぶり反発 長期金利上昇の重荷は変わらず
こうした中でS&P500(SPX)の値動きも冴えない。18日の終値は前週末比0.39%高の5893.62。3営業日ぶりの反発だが、11日の最高値(6001.35)からは1.80%安の水準にとどまっている。長期金利(10年物米国債利回り)はトランプ氏の大統領選挙での勝利が確実になった6日以降、4.4%台へと上昇しており、株式の投資先としての相対的な魅力を低める結果となっている。トランプ氏の減税路線や高関税が物価上昇圧力として働くことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げペースが鈍化するとの見通しが成り立つことが影響している。
テスラの株価は急騰 トランプ次期政権下での規制緩和をめぐる報道で
一方、株式市場には明るい材料もある。電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)は18日に前週末比5.62%高と急上昇。ブルームバーグが、トランプ氏が完全自動運転を可能にする連邦政府としての枠組みづくりを運輸省の最優先課題のひとつにする方針だと報じたことが材料視された。テスラは10月10日にAIを活用した無人タクシー「サイバーキャブ」の生産を2026年に始める考えを示したが、実現には政府による規制緩和が必要とみられている。トランプ氏の政権運営の具体像が明らかになっていけば、テスラの株価の見通しがさらに明るくなる局面も出てきそうだ。
AI関連の半導体需要には強さ 2年にわたるAIブームの継続見通しは?
また、半導体各社や大手ハイテク企業の決算発表ではAI関連需要の強さも示されており、エヌビディアが20日の決算発表で力強さを見せる可能性もある。英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)のルネ・ハースCEOは決算会見で顧客企業がAIの未来や普及に向けた投資を続けていると強調。アマゾン・コム(AMZN)のアンディ・ジャシーCEOはAIサービスについて「人生に一度あるかないかというレベル」のビジネスチャンスだとしている。逆にAI関連以外の半導体への需要は盛り上がりを欠いているものの、AI向け半導体で圧倒的な強みを持つエヌビディアの成長力は損なわれないことも考えられる。
とはいえ、AIブームの発端となったオープンAI社の「ChatGPT」が公開されたのは2022年11月末。AIへの期待を背景としたS&P500の上昇は2023年から続いており、これまでのようなペースを維持できるかどうかは確かではない。成長鈍化が予感されれば、今後の見通しにとっては大きな悪材料となりえる。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は15日には16.14をつけており、13日につけた直近の安値(14.02)からの反発傾向も感じられる。VIXの上昇はS&P500の今後の値動きが荒くなることへの警戒感を示すだけに、エヌビディアの決算次第で投資家の不安が改めて高まる可能性も考えられそうだ。
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