米国株に強気見通し S&P500週次5連騰 軟着陸期待で上昇
アメリカのS&P500は週次で1.11%高。物価上昇鎮静化への期待が見通しを明るくした。ただし決算発表シーズンを前に投資家の緊張感は緩んでいない。
アメリカの株式市場に上昇期待が強まってきた。S&P500種株価指数の11日の終値は1週間前比で5週連続の上昇。最高値更新の末、5800の節目を超えており、勢いを感じさせる結果となった。10日発表の9月消費者物価指数(CPI)などで示された米国の物価上昇鎮静化への期待が、株式市場の見通しを明るくしていようだ。ただし2024年7-9月期決算発表シーズンが始まる中、株価の急変が起こるシナリオは残る。投資家の先行きに対する警戒感は高まったままで、決算発表の内容や中東情勢の進展などがショックとなって、S&P500の今後の見通しが暗転する可能性もぬぐえない。
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アメリカのS&P500は週次1.11%高 5週連続の上昇
S&P500(SPX)の11日の終値は1週間前比1.11%高の5815.03。中東情勢悪化が上昇の足を引っ張った前週(0.22%高)から伸びが大きく加速し、勢いを感じさせた。5週連騰は4月下旬から5月下旬にかけて以来だ。11日の終値は前日比では0.61%高で、2日ぶりに最高値を塗り替えている。9月以降では7回目の記録更新だ。
物価上昇鎮静化に期待 軟着陸の見通し上昇か
S&P500の見通しを明るくしているのは、物価上昇鎮静化と景気悪化回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)への期待の高まりだ。10日発表の9月CPIは食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が1年半ぶりに前月よりも高くなるなど、物価上昇の根強さをみせたが、家賃の伸び率が下がるなどの好材料もあった。また11日発表の9月の卸売物価指数(PPI)は前月比で横ばいとなり、ロイターがまとめた市場予想の0.1%を下回った。4日発表の9月雇用統計が労働市場の底堅さを感じさせてから、堅調な数字が連続している形だ
中小型株はS&P500超える上昇 長期金利8営業日ぶり低下
こうした情勢に対しては金融界から歓迎の声があがっている。大手銀行JPモルガン・チェース(JPM)は11日朝に7-9月期決算を発表。金利収入は234.05億ドルとなり、LSEGがまとめた市場予想の227.26億ドルを上回った。ジェレミー・バーナムCFOは決算会見で業績について「軟着陸と合致する結果だ」と述べ、米国経済の見通しに自信を示した。
米国経済への安心感は中小型株の値動きにも表れた。中小型株の代表的な株価指数であるラッセル2000(RUT)の11日の終値は前日比2.10%高。S&P500の上昇率を大きく上回った。景気変動の影響を受けやすいとされる中小型株の上昇期待は、軟着陸観測の高まりの結果、より強く後押しされたようだ。また、株式市場にとっての逆風となる長期金利(10年物米国債利回り)は11日に8営業日ぶりに低下。引き続き4%を超える高水準とはいえ、やはり物価上昇鎮静化への期待を反映した値動きとなった。
テスラは8.78%安 サイバーキャブ公表でも市場は沸かず
ただし決算発表シーズンを控える中、今後の株価は神経質な値動きをみせる可能性がある。電気自動車(EV)大手のテスラは10日夕方、人工知能(AI)を活用した無人タクシーの試作車「サイバーキャブ」を公開。2026年に生産に入り、3万ドル以下で販売するとの見通しを示した。しかし11日のテスラの株価(TSLA)は前日比8.78%安の急落。技術革新や規制対応といったハードルの高さを考えれば、テスラの公約が実現される可能性は低いとみなされたようだ。
S&P500の今後の見通しに警戒感 VIX指数は高止まり続く
また、世界経済に大きな波乱をおこしかねない中東情勢の緊張感も続く。イスラエルは10日もレバノンの首都ベイルートを攻撃しており、イランへの攻撃も検討中だ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(WTI原油)の11日の終値は20.46で、5日連続で20を超える水準で推移している。S&P500の今後の見通しについて、値動きが荒くなることへの警戒感が高いことを示しており、S&P500の最高値更新の裏側では不安も強まっているといえそうだ。
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