米国株に上昇機運 S&P500雇用統計好感 利下げ見通しは急減速
アメリカのS&P500は4週連続の上昇。雇用統計が労働市場の底堅さを示したためだ。ただし中東情勢の緊迫もあり、投資家心理は改善していない。
アメリカの株式市場で上昇機運が高まった。S&P500種株価指数の4日の終値は小幅ながらも4週連続の値上がり。4日に記録した前日比0.90%という高い伸びが貢献した。株価上昇の要因は、4日発表の9月雇用統計で労働市場をめぐる不安が緩和されたこと。この結果、金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが後退したが、株式市場に動揺は起きなかった。ただし株式市場の今後の見通しをめぐっては中東情勢の緊迫という懸念材料も残る。投資家の不安度を示すVIX指数は下がっておらず、事態急変への懸念は和らいでいないともいえそうだ。
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アメリカのS&P500は4週連続で値上がり
S&P500(SPX)の4日の終値は5751.07で、1週間前比で0.22%高。4週連続での値上がりは、4月下旬から5月下旬にかけての5週連続以来だ。S&P500が4日にみせた前日比0.90%の上昇は、FRBが利下げを決めた翌日にあたる9月19日(1.70%高)以来の高い伸びだった。
S&P500の4日の上昇は朝方に発表された9月雇用統計が要因だ。非農業部門の就業者数は前月比25.4万人増となり、3月(31.0万人増)以来の高い伸び。市場予想の14.0万人増を大きく上回った。また、発表時に労働市場の不安材料となった7月と8月の増加幅についても、合計7.2万人分、上方修正されている。また、失業率は4.1%となり、2か月連続で前月から低下した。平均時給の伸び率は前年同月比4.0%で、前月の3.9%から加速した。
FRBの利下げ見通しは後退 11月と12月は0.25%幅か
こうした雇用統計の結果は労働市場の堅調さと同時に物価上昇圧力の根強さも感じさせる。金融市場ではFRBの利下げ見通しが後退し、11月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅はそれぞれ0.25%になるとの見方が強まった。
CMEグループのデータによると、11月のFOMCでの利下げ幅が0.5%になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間5日午前の段階で0%となり、前日の31%から大きく低下。また11月と12月のFOMCで合計0.75%以上の利下げが行われる確率は25%程度となり、やはり前日の58%程度から低下した。LSEGによると、長期金利(10年物米国債利回り)は4日のニューヨーク市場の終値で3.981%となり、8月8日(3.997%)以来の高さとなっている。
労働市場の強さがもたらした金利上昇見通しは、株式の投資先としての魅力を低くする側面もある。しかし株式市場では8月以降、物価上昇の鎮静化と景気後退回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)が労働市場の悪化で難しくなるというシナリオが意識されてきただけに、4日の株式市場ではS&P500の見通しを明るくする効果が大きかったようだ。
VIX指数は高止まりが続く 中東情勢悪化懸念が重荷に
ただしS&P500の4日の終値は9月30日に記録した最高値(5762.48)には届かない水準。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の4日の終値は19.21で、高止まりといえる状況だ。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出され、数字が大きいほど、S&P500の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを意味する。
10月に入ってからの金融市場では中東情勢の緊迫が不安材料となっている。1日のイスラエルによるレバノン南部侵攻とイランによるイスラエルへのミサイル攻撃が報復の連鎖が起きるとの見通しを強めているからだ。中東情勢が原油の安定供給を不安定化させれば、物価上昇や経済活動の縮小が起きるおそれもあり、株式市場の今後の見通しに関しては下落圧力がかかる可能性も残っている。
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