ポンド安再進行 英中銀総裁が利下げ見通し言及 中東情勢への警戒も
ポンド円相場で3円のポンド安が進行。イギリス中銀総裁が利下げに言及し、石破発言による円安効果を削いだ。
ポンド円相場にポンド安材料が加わった。ポンド円相場は4日の東京市場では1ポンド=192円台で推移。石破茂首相の発言で円安が進んだ3日午前の195円台から約3円のポンド安が進んだ。イングランド銀行(BOE)のアンドリュー・ベイリー総裁がインタビューで追加利下げに言及したためで、金融市場では年内2度の利下げが行われるとの見通しが強まっている。ただしベイリー氏は中東情勢悪化がエネルギー価格の上昇を通じて経済を混乱させることへの警戒も表明。世界の金融市場の不透明感が増しているといえそうだ。
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ポンド円相場は192円台 石破発言での円安効果薄まる
ポンド円相場(GBP/JPY)は4日午前の東京市場では1ポンド=192円台前半で取引されている。LSEGによると、日本時間の3日深夜には、192.11円をつける場面もあった。ポンド円相場はこの日の午前には195.15円をつけたが、一気に3円超のポンド安が進んだことになる。3日午前のポンド高は前日夜に石破氏が日本銀行の追加利上げに慎重な立場をとったことが要因だが、その効果が大きくそがれた形だ。
ポンドはドルに対する下落傾向も鮮明だ。ポンドの対ドルレート(GBP/USD)の3日のニューヨーク市場の終値は前日比1.08%のポンド安水準。ポンドの下落は9月27日以来5営業日連続で、この間の下落率は2.17%となっている。
イギリス中銀のベイリー総裁が利下げへの積極姿勢を示唆
ポンド安を進めたのは英国の中央銀行にあたるBOEのベイリー総裁のインタビューだ。ベイリー氏は英紙ガーディアンの3日付のインタビューで、物価上昇をめぐる良いニュースが続けば、BOEが利下げについて「少し積極的になる」可能性があるとの見通しを示した。BOEは8月に2020年3月以来の利下げを発表し、政策金利を5.00%に引き下げた。ベイリー氏は足元の物価情勢について「生活費にかかる圧力は想定していたほど持続的ではなかった」としており、物価上昇鎮静化に自信をもっているようだ。
こうしたベイリー氏の発言を受け、金融市場ではBOEが11月と12月の理事会で追加利下げするとの見通しが強まった。LSEGによると、金融市場で見込まれる12月理事会後の政策金利の水準は、日本時間4日午前11時30分段階で4.54%。2日までの4.6%程度から低下した。11月での利下げについての確率は96.2%で、9月30日段階での89%程度から上昇。12月までに2回の利下げが行われる確率も64.3%あると見込まれている。
中東情勢悪化は世界の金融政策への波乱要因に
ただし中東情勢の緊迫は英国の物価情勢を左右する可能性がある。1日にはイスラエルのレバノン南部への地上侵攻とイランによるイスラエルへのミサイル攻撃が起き、原油先物市場の指標価格であるWTIが上昇。WTI(WTI原油、翌月渡し)の3日のニューヨーク市場での終値は1バレル=73.71ドルとなり、3営業日で8.13%の値上がりとなっている。3日にはアメリカのジョー・バイデン大統領が、イスラエルによるイランの石油施設への攻撃を支援することについて「議論している」と述べたと報じられ、原油価格上昇見通しを強めた。
ベイリー氏はガーディアンでのインタビューで「地政学上の懸念は非常に深刻だ」と指摘。1970年代の石油ショックが金融政策にも影響を及ぼしたことに言及した。ベイリー氏は関係者は市場安定化を目指す姿勢で一致しているとしつつも、「事態が極めて悪化すれば、こうしたコントロールが機能しない状態に陥る」との認識も示した。
中東情勢の悪化が物価や経済活動に及ぼす影響は英国を含めた世界各国の金融政策を揺さぶりかねない。実際に中東有事が深刻な事態に陥れば、FX市場でも激しい値動きが起きることが考えられそうだ。
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