原油価格上昇再燃　イランがイスラエル攻撃　サウジ増産見通しで相殺も

原油価格に再び上昇圧力がかかった。原油先物市場の指標価格であるWTIの1日の終値は前日比2.44％高。イランによるイスラエルへのミサイル攻撃が原油生産をめぐる不安を高めたことが影響した。今後、イスラエルがイランに対して強硬な姿勢をとれば、中東情勢が一気に緊迫化するおそれもある。ただし原油価格は一方的な上昇には至っていない。原油価格の水準は4月のピークからは大きく下がっており、このところはサウジアラビアの増産見通しをめぐる報道で大きく下落していた。とはいえ、中東情勢はこの1年で悪化の一途をたどっており、原油価格の上昇圧力が今後も強まっていく可能性もある。

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WTIは2.44％高　一時、1バレル＝71.94ドルも

LSEGによると、WTI（翌月渡し、WTI原油）の1日のニューヨーク市場での終値は前日比2.44％高の1バレル＝69.83ドル。上昇率は9月12日（2.47％高）以来、約2週間半ぶりの大きさだった。取引時間中には一時、71.94ドルの高値をつける場面もあった。

イランがイスラエル攻撃　ネタニヤフ首相「イランは代償」

原油価格上昇の要因は中東情勢の緊迫化だ。イスラエルは1日未明にレバノン南部への地上侵攻を開始したと発表。イスラム教シーア派組織のヒズボラの拠点に対する限定的な地上作戦だと説明した。これを受け、イランはイスラエルを攻撃。約180発の弾道ミサイルが発射されたとみられている。ロイターによると、ベンジャミン・ネタニヤフ首相は1日、「イランは今夜、大きな間違いを犯した。代償を支払うことになるだろう」と述べた。

イランによるイスラエルへの攻撃は4月13日以来。この際は、1日にイスラエルが行ったシリア首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺への攻撃が契機だった。イランは今回、イスラエルのレバノン侵攻に即時に反応しており、中東情勢の緊迫化が加速する見通しも感じさせる。

原油価格は一方的には上昇せず　背景にサウジの増産見通し

ただしWTIは日本時間2日午前の取引では1バレル＝70ドル台後半で推移。1日の高値を超えるような上昇には至っていない。また、年初来の高値にあたる4月12日の87.67ドルからは大きく値下がりした水準だ。

足元で原油価格に下落圧力をかけているのはサウジが原油価格の引き上げを諦めたとの観測だ。英紙フィナンシャル・タイムズ（FT）は9月26日にサウジが非公式に維持してきた1バレル＝100ドルの価格目標を放棄する方向だと報道。12月以降の段階的な減産縮小を計画通りに実施するとした。減産縮小は、サウジを含む石油輸出国機構（OPEC）プラスの8つの加盟国が6月2日に10月からの実施を決め、9月5日に2か月先送りを発表していたが、これ以上の延期はないとの見通しが強まった。サウジには他の産油国から市場シェアを取り戻す狙いがあるという。

とはいえ、原油価格には需要面からも上昇圧力がかかる。米エネルギー情報局（EIA）が2日午前10時30分（日本時間2日午後11時30分）に発表する9月27日段階の原油在庫（戦略備蓄除く）は、ロイターがまとめた事前予想によると、1週間前比で130.1万バレルの減少となる見通し。在庫の取り崩しが予想を上回る大きさになれば、アメリカの原油需要の強さが原油価格の値上がり要因として意識される可能性もある。

原油価格は、1年前にあたる2023年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃して以降、供給不安にさらされてきたが、世界経済の見通しへの懸念もあって目立った上昇は起きてこなかった。しかしイスラエルとイランの緊張の高まりは、原油生産や輸送への直接的な影響も連想させるだけに、投資家心理が大きく揺れ動くことも考えられそうだ。