原油価格下落続く WTIが66ドル台 中東の緊張緩和見通しに期待
WTIは29日に1か月ぶりの安値を記録。中東情勢の緊張緩和の兆しが要因となっている。米国大統領選挙の動向も引き続き、原油安要因として働いていそうだ。
原油価格の下落基調が続いている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は29日の取引で、約1か月ぶりの安値となる1バレル=66.72ドルを記録。前週までの72ドル台から大きく値下がりしている。イスラエルが26日に実施したイランへの攻撃が報復の連鎖につながっておらず、中東情勢の緊張緩和への期待が出ていることが影響しているようだ。また原油市場ではアメリカでの需要縮小見通しも出ており、原油価格を押し下げる効果を生んでいる。さらに原油価格下落には米国大統領選挙の動向も影響しているとみられ、当面は下押し圧力が維持されそうだ。
WTIは一時、66.72ドル 約1か月ぶりの原油安水準
LSEGのデータによると、WTI(WTI原油)の29日の安値(1バレル=66.72ドル)は、1日の安値(66.33ドル)以来の低さ。22日には72.66ドルを付ける場面もあったが、1週間で8.18%の下落を記録したことになる。
イスラエルのイラン攻撃は限定的 レバノンとの間でも緊張緩和か
原油安のきっかけとなったのはイスラエルが26日未明に行ったイランへの攻撃が「限定的」とみなされたことだ。ブルームバーグによると、イスラエルは「イラン国内の軍事施設に対する精密で標的を絞った攻撃を完了した」と発表。懸念されていた石油関連施設や原子力施設への攻撃はなかったとみられている。週明け28日の原油市場ではWTIの終値が1バレル=67.38ドルとなり、前週末比6.13%安となった。
また29日には、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相が同日夕方にレバノンとの外交上の問題解決のための会合を持つと報じられたことも、中東情勢の緊張緩和見通しを後押ししているようだ。イスラエルは1日にイスラム教シーア派組織のヒズボラが拠点を置くレバノンの南部に侵攻。ヒズボラを支援するイランがイスラエルへのミサイル攻撃を行い、2国間の緊張が高まるきっかけになっていた。
アメリカの原油需要に弱まりも 大統領選挙の見通しも価格下落要因に
さらに米国の原油需要が弱まっているとの見通しも原油価格の下押し圧力として働いている。米エネルギー情報局(EIA)が30日午前10時30分(日本時間30日午後11時30分)に発表する25日段階での原油在庫量(戦略備蓄除く)は、ロイターがまとめた市場予想によると、1週間前比で230万バレル増となる見通し。原油在庫の積み上がりは需要の弱さを印象付けそうだ。EIAが23日に発表した18日段階の在庫量は547.4万バレル増で、予想の27万バレル増を大きく上回る結果だった。
原油価格下落の背景には、米国の大統領選挙の動向もありそうだ。選挙戦で有利に立っているドナルド・トランプ前大統領が実際に勝利すれば原油安要因とされるドル高を招くとみられているうえ、米国内の原油開発に積極的な姿勢が供給増を通じた原油安につながることが考えられるからだ。産油国の盟主であるサウジアラビアも原油価格引き上げを諦めて減産縮小に進むと報じられており、やはり原油価格下落見通しを強める材料になっている。
一方、中国経済復活への期待は、原油価格の今後の見通しを上振れさせる材料だ。また中東情勢の緊張緩和が期待通りに進むことへのハードルが高いことも間違いなく、1バレル=66ドル台まで下がったWTIが反発する可能性も残されている。ただ、米国の政権交代の可能性といった大きな潮流による下落圧力は当面の間は続くとみられる。
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