原油価格が再上昇 WTIが72ドル台 大統領選挙後に下落見通しも
WTIは5日までの1週間で9%近く値上がりした。OPECプラスの増産延期や中東情勢の緊張感が背景だが、今後、下落圧力が高まる可能性もある。
原油価格が再び上昇している。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は5日の取引で1バレル=72ドル台に到達。1週間前には66ドル台で取引される場面もあったが、9%近い値上がりを記録したことになる。サウジアラビアやロシアで作るOPECプラスが計画していた増産が延期されたことや、中東情勢をめぐる緊張感が再び高まったことが影響した。ただし市場の注目が集まるアメリカの大統領選挙の結果次第では再び原油価格に値下がり圧力がかかる可能性もあり、今後の見通しをめぐっては下落方向の値動きも意識されそうだ。
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WTIは一時、72.67ドル 1週間で8.9%の上昇
LSEGによると、WTI(WTI原油)の5日のニューヨーク市場の終値は1バレル=71.99ドル。取引時間中には72.67ドルをつけ、10月14日(75.08ドル)以来の高値となった。原油価格は中東情勢の緊張緩和への期待などから、10月29日には66.72ドルをつける場面もあったが、その後の1週間で8.92%の上昇をみせたことになる。なかでも週明け4日の終値は前週末比2.85%高となった。
OPECプラスは増産延期 イランはイスラエルなどへの報復示唆
原油価格を上昇させたのはOPECプラスが11月3日に発表した、増産計画の1か月延期だ。12月から始まる予定だった日量216.7万バレルの減産の段階的な縮小を2025年1月開始に変更するという内容で、原油価格を上昇させる狙いがあるとみられる。減産の段階的縮小は6月2日に、OPECプラス加盟8か国が10月から実施すると発表されたが、9月5日に2か月延期が発表されていた。
また原油価格上昇の背景には中東情勢をめぐる緊張感もありそうだ。ブルームバーグによると、イラン最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師は2日のテヘランでの演説で、イスラエルやアメリカに関して「破壊的な反攻を受けることは間違いない」と述べた。中東情勢をめぐってはイスラエルが10月26日に行ったイランへの攻撃が石油関連施設や原子力施設を対象としなかったことから、緊張緩和への期待が出ていたが、ハメネイ師の反発で見通しが再び悪化したといえる。
アメリカの原油備蓄量は増加見通し トランプ氏勝利なら下落圧力か
さらに直近のデータでは米国の原油需要の上振れも感じられている。米エネルギー情報局(EIA)が10月30日に発表した25日時点の原油備蓄量(戦略備蓄除く)は1週間前から51.5万バレル減少。ロイターがまとめた市場予想では230万バレル増加が見込まれていたが、想定外の備蓄取り崩しで需要の強さを感じさせた。米国東部時間11月6日午前10時30分(日本時間7日午前0時30分)に発表される1日時点のデータでは、110.3万バレルの増加が予想されているが、下振れれば原油価格の値上がり材料となりそうだ。
ただし原油価格の今後の見通しは米国の大統領選挙の結果に大きく左右されることも考えらえる。なかでも共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利した場合には、米国内の原油生産が加速する可能性が材料視され、原油価格の下押し圧力として働くことも想定されそうだ。また高関税や減税を重視するトランプ氏の政策が物価上昇圧力になるとみなされれば、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げペースの鈍化が意識され、原油価格の下落要因とされるドル高を招くこともありえる。
また、4月以降の原油価格の下落基調の背景には中国経済復活の期待が高まらないことも影響しているとみられ、OPECも2024年の中国の石油需要の見通しを下方修正している。原油価格は足元では上昇に転じているが、引き続き値下がり方向に動きやすい状況にあるともいえそうだ。
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