原油価格に下落圧力 2年9か月ぶり安値圏 需要見通しに懸念
WTIの11日の終値は67ドル台。前日からは反発したが、引き続き安値圏だ。需要後退懸念やリスク回避姿勢が重荷となっている。
原油価格の下落圧力が消えていない。原油先物市場の指標価格であるWTIの11日の終値は1バレル=67ドル台。前日につけた2年9か月ぶりの安値からは値上がりしたものの、引き続き安値水準で推移している。アメリカをはじめとする世界経済の見通し不安が足かせになっているもようだ。一方、足元の原油在庫の動向には需要の弱まりはみられず、今後は供給が抑えられていくことで原油価格が押し上げられる兆しも出ている。ただ、投資家の間ではリスク回避姿勢が強く、原油価格の今後の見通しは、世界経済の先行きに対する不安が後退していくかどうかにかかっていそうだ。
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WTIは65ドル台まで下落 その後も安値圏で推移
LSEGによると、WTI(翌月渡し、WTI原油)の11日のニューヨーク市場の終値は前日比2.37%高の1バレル=67.31ドル。上昇率は8月26日(3.46%)以来の大きさだった。しかし前日終値の65.75ドルは、2021年12月1日(65.57ドル)以来の安値だったこともあり、WTIは11日も引き続き、安値圏での値動きだったといえる。12日の東京市場では68ドル台まで買い戻されている。
WTIは、米国の8月雇用統計で就業者数の伸びが市場予想を下回った6日まで、5営業日連続で値下がり。米国経済の先行きへの懸念が原油需要の見通しを悪くしたことがマイナス材料になっていた。また10日には石油輸出国機構(OPEC)が公表した月報で、2024年の世界の石油需要が2023年よりも日量203万バレル増えるとの見通しが示された。これまでの予想値(日量211万バレル増)から下方修正されており、10日のWTIは前日比4.31%安となっていた。
足元の原油需要には底堅さ 供給制約の見通しも
一方、足元のデータでは、需要が弱まっているとの印象は強くない。11日に米国のエネルギー情報局(EIA)が公表した9月6日時点での原油在庫(戦略備蓄除く)は前週から83.3万バレルの増加。ロイターがまとめた市場予想の98.7万バレル増を下回った。在庫の積み上がりが予想よりも小さかったことは需要の上振れを感じさせる。原油在庫は8月30日分のデータでも、市場の想定以上に減少しており、やはり需要の根強さを示していた。
また、今後の原油市場では、供給量が制約されていくとの見通しもある。OPECとロシアなど非加盟国で作るOPECプラスは5日、10月から始める予定だった減産量の段階的な縮小を2か月先送りすると発表。また、米国ルイジアナ州などに被害をもたらしているハリケーンはメキシコ湾周辺の石油関連施設の操業を停止させている。さらに原油供給への潜在的な懸念となっている中東情勢をめぐっては、イスラエルとイスラム組織ハマスの間での停戦協議が膠着状態となったままだ。
こうした中でも原油価格が安値で推移する背景には、投資家のリスク回避の姿勢の強まりがある。米国で11日に発表された8月消費者物価指数(CPI)は総合指数の伸び率が市場予想を下回り、物価上昇の鎮静化を感じさせる面もあったが、株式市場は家賃の上昇が加速したことを悪材料視した。原油価格の値下がりが本格的に反転するかどうかは、投資家が世界経済の見通しに対する自信を取り戻すかどうかにもかかっていそうだ。
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