原油価格が安値圏 OPECプラス「増産」方針 WTI下落見通しか
原油価格は約4か月ぶりの安値圏。OPECプラスが段階的な減産幅縮小を発表したためで、価格への下落圧力が増していく可能性もある。
原油価格が安値圏で推移している。原油先物市場の指標価格であるWTIは5月29日から6月4日にかけて5営業日続落。5日の終値では反発したものの約4か月ぶりの安値水準にある。背景にあるのは、産油国で作るOPECプラスが2日、一部参加国による自主減産を10月以降に段階的に縮小していくと発表したこと。原油市場では原油生産量が増加して供給過多になるとのシナリオが意識されているようだ。原油価格引き上げを狙って減産を続けてきたOPECプラスが方針転換していく可能性もあり、原油価格の下落見通しを強めている。
原油価格は4か月ぶりの安値圏
LSEGのデータによると、WTI(WTI 原油)の終値は5月29日から6月4日にかけての5営業日で8.24%下落し、73.25ドルをつけた。5日は前日比1.12%高の74.07ドルと反発したものの安値圏にあるといえる。
原油安の背景にあるのは、サウジアラビアを盟主とする石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟産油国が作るグループ「OPECプラス」の動向だ。OPECプラスは2日に閣僚級会合を開催。加盟8か国が2023年11月30日までに発表した追加減算分について、段階的に縮小していくとした。2024年10月から2025年9月にかけて、日量216.7万バレルの減産が解消されていくため、市場に供給される原油は増えていく見通しだ。
OPECプラスの自主減産幅の段階的縮小が原油価格に影響
一方、OPECプラスは2023年4月に発表した日量116万バレルの減産については2025年末まで継続するとしている。2022年10月に合意した日量200万バレルの協調減産もほぼ同規模で維持する。こうした発表内容を踏まえ、日本総合研究所は5日付のレポートで「世界の需給バランスは2024年末にかけては需要超過となる」とすると同時に、10月以降の減産幅縮小を主な原因として、「年末から来年にかけて徐々に価格下落圧力が高まる公算」との見通しを示した。
また、原油市場をめぐっては需要の弱さも感じられている。アメリカのエネルギー情報局(EIA)が5日に発表した週次の原油在庫(戦略備蓄除くベース)は5月31日時点で4億5592万バレル。前週から123万バレルの増加で、ロイターがまとめた事前予想(231万バレル減)を大きく上回った。中国経済の内需の弱まりも原油需要の減衰を感じさせる要素だ。
今後の原油価格には下振れ圧力がかかる見通し
こうした中でもOPECプラスが秋以降に生産量を増やしていくと表明したことは、これまでの原油価格引き上げを狙った減産方針が転換していくシナリオも感じさせる。OPECプラスの減産にも関わらず原油価格が80ドルをこえる水準で定着することはなく、加盟国の財政状況へのマイナス影響が増している可能性があるからだ。
OPECプラスは自主減産幅の段階的な縮小について「市場の状況によって停止したり、反転したりする可能性もある」としている。それでも今後、事実上の増産方針が維持されていけば、原油価格の見通しは下振れしていくことになりそうだ。
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