原油価格上昇も WTI停滞解消か OPECプラス増産延期見通し
OPECプラスは5日の閣僚会合で増産延期を決める見通し。小幅な値動きが続くWTIへの上昇圧力となりえるが、米国の増産姿勢もちらつく。
原油価格に上昇機運が高まる可能性が出てきた。原油先物市場の指標価格であるWTIの値動きは低調だが、産油国で作るOPECプラスは開催が5日に後ずれした閣僚会合で、段階的増産の3か月延期を決める見通し。同時にアメリカの原油需要をめぐるデータにも強さがみられ、投資家の値上がり期待を後押しする材料となっている。ただしOPECプラスの協議の難航からは産油国の足並みの乱れも感じられ、米国で1月に就任するドナルド・トランプ次期大統領が原油増産に向けた体制を整えていることも原油供給の上振れを予感させる。原油価格の今後の見通しをめぐっては、OPECプラスの決断後も下落要因の多さが意識されそうだ。
WTIは69ドル台後半 直近4週間は約5ドルの小さな値幅
WTI(中心限月、WTI原油)は3日のニューヨーク市場の終値で1バレル=69.94ドル。前日比1.84ドルの上昇となった。原油価格の終値は、直近4週間は71.96ドルから66.92ドルの間で推移。約5ドルという7月下旬以来の狭い範囲での取引が続いている。10月初めには直近4週間の値幅が11ドルを超える場面もあっただけに、値動きは均衡状態にあるといえそうだ。
OPECプラスは後ずれした閣僚会合で増産の3か月延期を決める見通し
ただ、原油価格の落ち着きは上昇方向に変化する可能性がある。サウジアラビアとロシアが主導するOPECプラスは5日の閣僚会合で、2025年1月から予定している加盟8か国による段階的な増産を延期する見通し。ブルームバーグは3日、関係者の話として、増産開始の3か月延期案について「現段階では反対は出ていない」と報じた。増産が先送りされれば、原油供給の過剰感が抑えられ、価格上昇要因になりえる。閣僚会合は当初、1日に開催予定だったが、11月28日に開催日の5日への変更が発表されていた。
また米国の原油需要をめぐっては強さも感じられた。11月27日に米エネルギー情報局(EIA)が発表した22日時点の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前から184.4万バレルの減少。ブルームバーグがまとめた市場予想の100万バレルの減少よりも大きな在庫の取り崩しとなった。予想よりも在庫が少なくなるのは4週ぶりだ。12月4日午前10時30分(日本時間5日午前0時30分)に発表される11月29日時点のデータは、182万バレル減少の見通しとなっている。
産油国には足並みの乱れか アメリカのトランプ次期政権は原油増産へ体制作り
とはいえ、OPECプラスの閣僚会合の実施が後ずれした事実からは協議の難航も感じられる。OPECプラスは後ずれの理由を1日にクウェートで湾岸諸国による首脳会議が開かれたためだと説明しているが、5日に発表される合意内容から産油国の足並みの乱れが感じられれば、原油価格にかかる上昇圧力が弱まる可能性がある。最終的には日量216.7万バレルの原油供給増加につながる段階的増産は当初、10月開始の予定だったが、すでに2度にわたって延期されてきた。
さらに原油市場をめぐっては米国の増産見通しもちらつく。トランプ次期大統領が財務長官に指名した著名投資家のスコット・ベッセント氏は財政赤字抑制などとともに「日量300万バレル相当の原油などの増産」を提言していると報じられている。また、トランプ氏がエネルギー長官に指名したクリス・ライト氏はシェールオイル開発企業に関連技術を提供しているリバティ・エナジーのCEOで、トランプ次期政権の原油増産に向けた体制が整ってきた。
OPECプラスが原油増産を延期しても、米国の増産姿勢が意識されれば、やはり原油価格の上昇が限定的になる可能性もある。原油市場の今後の見通しでは、下押し圧力の根強さも材料視されることが考えられそうだ。
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