原油価格、増産延期に冷静 WTIは68ドル台 下落見通しか
OPECプラスは段階的増産計画の延期を決定。増産にかける期間も長くして、原油価格の下支えを狙った。しかし原油価格は下落傾向が続いている。
原油市場が産油国の増産延期に冷静な反応をみせている。サウジアラビアやロシアなどで作るOPECプラスは5日、参加国中の8か国が計画していた1月からの段階的な増産を延期すると発表した。市場で予想されていた3か月延期に加え、増産のペースを緩やかにする内容も含まれており、原油価格を下支えする狙いがあるとみられる。ただし原油先物市場の指標価格であるWTI(中心限月)は6日の取引で1バレル=68ドル台で推移しており、価格押し上げ効果はみられなかった。米国のドナルド・トランプ次期大統領の原油増産姿勢などが材料視される中、原油価格の今後の見通しは下落方向への動きが意識されそうだ。
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OPECプラス内の8か国が段階的増産を3か月延期 ペースも緩やかに
段階的な増産は2025年1月から始まる予定だったが、4月からに延期される。サウジ、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーンの8か国が2023年11月に発表した日量220万バレルの減産を2026年9月までの18か月かけて段階的に縮小する。8か国はOPECプラスが5日に開いた閣僚会議にあわせて協議を行った。
段階的な増産は2024年6月に、10月からの実施が発表され、サウジは原油価格下落を容認してでも市場シェアを確保する狙いがあるともみられていた。しかしその後、段階的増産の開始は2度にわたって延期。今回の延期は3度目で、増産にかける期間も従来の12か月から伸ばされている。増産ペースを緩やかにすることで、原油価格への下落圧力を弱める狙いがあるとみられる。
WTIは68ドル台に下落 米国の原油需要の強まりは影響せず
ただ、原油市場の反応は冷ややかだった。ブルームバーグによると、5日のニューヨーク市場でのWTIの終値(WTI原油)は1バレル=68.30ドルで、前日から0.35%の下落。一時、67.98ドルをつける場面もあった。6日の取引も68ドル台で推移しており、原油価格の上昇見通しは強まらなかったといえる。
一方、原油市場をめぐっては米国の原油需要の強まりも感じられている。米エネルギー情報局(EIA)が4日に発表した原油在庫量が市場予想よりも少なくなっていたためだ。EIAが発表した11月29日段階での原油在庫(戦略備蓄除く)は1週間前よりも507.3万バレル少なく、ブルームバーグがまとめた直前の市場予想(141万バレルの減少)よりも大きな在庫の取り崩しだった。
こうした中でも原油価格の上昇見通しが強まらない背景には、米国のドナルド・トランプ次期大統領が打ち出している原油増産姿勢や、中国経済の不振が原油需要を下押しするとの観測がありそうだ。OPECプラスは増産を延期したとはいえ、原油供給を増やすという方針を転換したわけではなく、原油価格の今後の見通しにとっては引き続き下落圧力として働いていきそうだ。
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