原油価格、1週間で24%安 WTI、一時55ドル 世界経済見通し急変
WTIは米中対立の激化を背景に2日から9日にかけて24%下落。OPECプラスの増産前倒しもあり、原油価格に下落圧力がかかり続けている。

原油価格が急落している。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間11日午前の取引では1バレル=59ドル台半ばで推移。9日の取引では一時、55ドル台前半をつけ、約1週間で24%もの値下がりを記録した。アメリカのドナルド・トランプ大統領が2日に発表した相互関税が世界経済の見通しを急激に悪化させたうえ、OPECプラスが原油の段階的増産を前倒ししたことも原油価格急落の要因となっている。トランプ氏は9日に相互関税の一部を停止しつつ、中国との対決姿勢は強めており、混乱の収束は見えてこない。世界の2大経済大国である米中の経済成長が減速するとの不安が高まる中、原油価格の今後の見通しには下落圧力がかかり続けそうだ。
原油価格は4年2か月ぶりの低水準 WTIは約1週間で24%安
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間11日午前11時19分段階で1バレル=59.48ドルで取引されている。ブルームバーグによると、WTIは2日には一時、72.28ドルをつける場面もあったが、9日には55.12ドルまで急落し、2021年2月3日(54.81ドル)以来、4年2か月ぶりの安値に到達した。2日高値から9日安値までの下落率は23.74%安で異例の大きさとなっている。

トランプ氏の相互関税が原油価格急落の発端 OPECプラスの増産前倒しも影響
原油価格急落の引き金を引いたのはトランプ氏が2日に発表した相互関税が約100か国・地域からの輸入品に高関税をかける厳しい内容だったこと。世界経済の混乱が原油需要の低下につながるとの見方が原油価格を下押しした。
さらにサウジアラビアやロシアなどの産油国で作るOPCEプラスは3日に、加盟国中の8か国が4月から始めた段階的増産を前倒しすると発表。2024年12月に発表した計画では7月に到達するはずだった日量3096.3万バレルの生産量に5月に到達するとした。原油供給の想定以上の高まりは、やはり原油安の見通しを強めている。WTIは3日には前日比6.64%安、4日には7.41%安の急落を記録した。

米国の対中関税は145%に EIAは2025年の石油需要の見通しを下方修正
その後、トランプ氏は9日に相互関税の一部を90日間停止すると発表。混乱収束への期待から9日のWTIは4.65%高となった。ただしトランプ氏は中国との対決姿勢は緩めておらず、9日には自身のSNS、トゥルースソーシャルへの投稿で中国製品への関税を125%にするとした。トランプ氏が署名した大統領令は、中国製品に対する相互関税をこれまでの84%から125%に引き上げるとする内容で、3月までに発動されていた20%の関税との合計は145%となる。米国内の物価上昇につながることは避けられない情勢だ。
こうした世界経済混乱への不安は、石油需要が低迷するとの見方につながっている。米エネルギー情報局(EIA)が10日に発表した4月の短期エネルギー見通し(STEO)では、2025年の石油需要の前年比での増加幅は日量90万バレルとされ、前月のSTEOで示された日量130万バレルから引き下げられた。EIAは相互関税がもたらした混乱が世界経済の見通しを悪くしていることを踏まえ、「この予想には大きな不確実性がある」としており、さらなる需要下振れも起こりかねない状況だ。
米国や中国の経済見通し悪化は引き続き、原油価格を下押しか
一方、米国経済の変調が現段階で表面化しているわけではない。EIAが9日に発表した4日時点での原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比255.3万バレルの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想の260万バレル増加をわずかに下回った。原油需要の想定以上の下振れが起きているわけではないようだ。

また、米労働省が10日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は総合指数の伸び率が前年同月比2.4%で、ブルームバーグがまとめた市場予想の2.5%を下回った。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.8%で、やはり市場予想(3.0%)を下回っている。物価上昇に過熱感が出ていないことは、米国経済の堅調さが示されたといえる内容だ。

しかし米国と中国の間の貿易戦争の鎮静化がみえてこない中では、両国の経済活動が低下するとの不安は消えない。WTIの今後の見通しをめぐっては、さらなる原油価格下落の可能性が意識されそうだ。
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