原油価格反発68ドル台 対イラン圧力で上昇 貿易戦争不安は継続
WTI(翌月渡し)は20日終値で約2週間ぶりの高値。米国のイランへの強硬姿勢が材料視された。一方、トランプ氏の高関税政策をめぐる不安は消えない。

原油価格が反発する中でも下落への不安は消えていない。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は20日のニューヨーク市場の終値で1バレル=68ドル台をつけ、約2週間ぶりの高値に到達。アメリカのドナルド・トランプ政権がイランに対する経済面での圧力を強め、原油供給が減少するとの見通しが広がったためだ。しかしトランプ大統領の高関税政策が発端となった世界経済の先行き不透明感は残り、原油需要減少シナリオが意識されやすい状態は続く。原油価格の今後の見通しをめぐっては、トランプ氏が4月2日に発動させる「相互関税」などの内容次第で、改めて下落基調が強まる可能性がある。
WTIは20日終値で68ドル台 約2週間ぶりの高値
WTI(翌月渡し、WTI原油)は20日のニューヨーク市場の終値で前日比1.64%高の1バレル=68.26ドルとなり、終値としては4日(68.26ドル)以来の高さ。21日の東京市場でも68ドル台で推移している。ブルームバーグによると、WTIはトランプ氏がメキシコとカナダからの輸入品への25%関税を発動させた翌日の5日には一時、65.22ドルまで値下がりする場面があったが、回復基調となっている。

米国が中国の精製施設に経済制裁 イラン産原油の供給は低下か
20日に原油価格を上昇させたのはトランプ政権のイランに対する強硬姿勢だ。米財務省は20日、イラン産原油を購入していた中国の石油精製施設などを経済制裁の対象に追加。米国が関与する形でのこれらの組織との商取引は原則として禁じられる。スコット・ベッセント財務長官は中国の精製施設によるイラン産原油の購入について、「世界の代表的なテロ支援国であるイランの体制にとって経済上の主要なライフラインとなっている」としている。原油市場ではイラン産原油が市場から締め出されるとの見通しが価格上昇圧力として働いた。
また米国経済の見通しをめぐる過度な不安も後退しているようだ。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は19日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で足元の米国経済の堅調さを強調。トランプ氏の政策の経済への影響については、通商政策や移民政策、財政政策、規制緩和を含めて総合的に判断せねばならないとし、様子見の姿勢を維持している。
貿易戦争過熱の見通しは原油価格の下落要因 米国の需要にも弱さ
ただ、原油市場では世界経済の成長減速が需要減少につながるとのシナリオも引き続き意識されている。トランプ氏が12日に鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%関税を発動させると、欧州連合(EU)は米国からの260億ユーロ相当の輸入品に関税を課す計画を発表。「貿易戦争」は過熱の様相をみせている。さらにトランプ氏は4月2日に米国製品に関税をかけている国からの輸入品に対する相互関税に加え、自動車などに対する個別関税も発動させる考えだ。
こうした中、米国の原油需要には弱さも感じられる。米エネルギー情報局(EIA)が19日に発表した14日時点の原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で174.5万バレルの増加。ブルームバーグがまとめた市場予想で見込まれていた100万バレル増を上回った。原油在庫の想定以上の上積みは需要の弱さを示す兆候といえる。

トランプ氏は金融市場の価格変動の震源地となっており、原油市場でもトランプ氏の言動への注目度は高い。供給面では4月からのOPECプラスによる段階的増産が予定されていることもあり、4月2日に向けて再び高関税政策と貿易戦争をめぐる展開が材料視されれば、需要面から原油価格に再び下落圧力がかかる可能性がありそうだ。
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