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S&P500への期待回復 パウエル会見に安堵 エヌビディア反発に弱さ

S&P500は19日に1.08%高。FOMCの結果は米国経済への不安を高めなかった。ただしエヌビディアなど大手ハイテク株の反発には弱さもみれらた。

S&P500への期待回復 パウエル会見に安堵 エヌビディア反発に弱さ 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場への期待が回復した。S&P500種株価指数の19日の終値は前日比1.08%高。2営業日ぶりの反発で、前日の下落分を帳消しにした。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見が米国経済の先行きへの懸念を強めなかった結果だ。ただしFRBは2025年の成長率の見通しを下方修正しつつ、物価上昇率の見通しは引き上げており、経済の先行きが悪化方向に振れていることは否めない。こうした中、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)をはじめとする大手ハイテク株の19日の値動きには弱さもみられた。S&P500の今後の見通しをめぐっては、米国経済の先行きに関する強気と弱気がせめぎあう展開も想定される。

アメリカのS&P500は1.08%高 前日の下落分を帳消しに

S&P500(SPX)の19日の終値は5675.29。FOMCへの警戒感が背景となった前日の下落分(1.07%安)を取り戻し、17日終値(5675.12)とほぼ同水準となった。2月19日の最高値(6144.15)からは7.63%安で、13日に10.13%安まで下落した不振からの回復が感じられる。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

FRBは金融政策を維持 トランプ関税の物価押し上げ効果は「一過性」の可能性も

19日の反発の要因はFOMCの結果とパウエル氏の記者会見が米国経済への不安を落ち着かせたことだ。FRBは19日までのFOMCで事前予想通りに政策金利を据え置き。声明文では「労働市場は堅調で、物価上昇率は2%の目標に向かって近づいている」との判断を維持し、ドナルド・トランプ大統領の政策がもたらす影響については通商政策、移民政策、財政政策、規制緩和を含めた全体として見極めることの重要性を指摘した。そのうえで「金融政策の調整を急ぐ必要はない」とし、引き続き経済への影響を見極める考えを示している。経済見通しでは、2025年の利下げ回数は2回になるとの方向性が示され、2024年12月時点の見通しから変化はなかった。

またパウエル氏は記者会見で、トランプ氏の高関税政策について、一定程度の物価上昇を引き起こす可能性を認めつつも、FRBが金融政策で対応しなくても鎮静化する「一過性」の現象に終わる可能性にも言及。この場合は「金融を引き締めることは正しい政策ではない」と述べた。パウエル氏はトランプ氏が2017-2020年にかけての任期中に打ち出した高関税の物価への影響は一過性だったとの見方も示している。

VIX指数は13営業日ぶりに20割れ 経済の安定と利下げの方向性を好感

経済の安定と利下げの方向性が確認されたことは株式市場の投資家の不安を和らげる材料となり、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は低下している。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの19日の終値は前日よりも8.29%低い19.90で、13営業日ぶりに20を下回った。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが激しくなることへの警戒が強いことを意味する。

VIX指数とS&P500の推移のグラフ

FRBは2025年の成長率見通しを引き下げ 物価上昇率は上振れで先行きに不安

ただしFRBが経済の行方を楽観しているわけではなさそうだ。FRBの経済見通しでは、2025年10-12月期の前年同期比でみた実質成長率は1.7%とされ、12月時点の2.1%から大きく下方修正された。同時に10-12月期の個人消費支出(PCE)物価指数の、食品とエネルギーを除くコア指数でみた物価上昇率に関する見通しは前年同期比2.8%で、12月時点の見通し(2.5%)から上振れしている。経済成長の減速と物価上昇の加速が同時に進み、米国経済の健全性が損なわれるシナリオがちらつく。

FOMC参加者による実質経済成長率の見通しのグラフ

エヌビディアの株価は1.81%の反発 直近2日間の下落率には届かず

こうした中、19日の株式市場には不安要素もみられた。株式市場での人工知能(AI)ブームを象徴するエヌビディアの株価(NVDA)は前日比1.81%高と反発したものの、直近2日間での下落率(5.13%安)を取り返すには至っていない。このほか19日には、株価が3か月で半減している電気自動車(EV)大手テスラTSLA)も4.68%高となったが、やはり直近2営業日での下落率(9.87%安)との比較では勢いに欠けている。時価総額が大きい大手ハイテク株はS&P500への影響度が大きいだけに、株式市場のムードを暗くする要因といえそうだ。

エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、テスラ、アルファベット、アマゾン・コム、アップルの株価の推移のグラフ

半導体株にも弱さ トランプ氏の高関税政策の影響度がS&P500の見通しを左右

また、エヌビディア以外の半導体株ではブロードコム(AVGO)が19日に前日比3.66%高の195.57ドルをつけ、2月28日(199.43ドル)以来の高値に回復している。一方、S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングスの株価(ARM)は19日に1.51%安と続落しており、半導体株全体への期待には弱さも感じられる。

エヌビディア、アーム・ホールディングスなど半導体株の推移のグラフ

米国の株式市場は19日はFRBの情報発信を好感したが、米国経済の先行きへの懸念が消えたわけではない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、トランプ氏の高関税政策の経済への影響の度合いをめぐる思惑次第で、値動きが左右される展開も考えられる。


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