S&P500、5週ぶり反発 トランプ関税は依然不安 エヌビディア反落
S&P500の21日の終値は週次0.51%高。米国経済の堅調さが好材料になった。ただ、4月2日の相互関税発動に向け、緊張感が再燃する可能性もある。

アメリカの株式市場の下落に歯止めがかかった。S&P500種株価指数の21日の終値は1週間前比で0.51%高となり、2月中旬以来5週ぶりの反発。ドナルド・トランプ大統領の高関税政策をめぐる混乱が一服した形となった。足元の米国経済の堅調さが経済指標や米連邦準備制度理事会(FRB)の見立てで裏付けられたためで、投資家の不安も落ち着き始めている。ただしトランプ氏は4月2日に相互関税を発動させるとしており、週明け3月24日以降に改めて緊張感が高まる可能性がある。人工知能(AI)ブームを象徴する銘柄である半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は週次で反落しており、S&P500の今後の見通しをめぐっては不安定な展開も考えられそうだ。
アメリカのS&P500は週次0.51%高 2月中旬以来、5週ぶり反発
S&P500(SPX)の21日の終値は前日比では0.08%高の5667.56。17日に約1か月ぶりの2営業日続伸にこぎつけるなどして週次での上昇を確保した。週次での値上がりは、中国のAI開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」が脚光を浴びた際の下落からの反発が進んだ2月10-14日週(1.47%高)以来だ。S&P500は2月中旬以降、米国の経済指標の弱さやトランプ氏の高関税政策をめぐる混乱で下落基調をたどってきたが、事態の悪化に歯止めがかかった。

2月小売売上高やパウエル氏の記者意見が好材料に 投資家心理に改善の兆し
S&P500の見通しへの不安を和らげたのは、米国経済の堅調さが確認されたことだ。17日に発表された2月の小売売上高は自動車と部品を除いたベースで、ブルームバーグがまとめた市場予想通りの結果を確保。またFRBのジェローム・パウエル議長は19日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で高関税が物価上昇を加速させる効果が一過性である可能性に言及。引き続き追加利下げを見据えている姿勢を明らかにした。
こうした中、投資家心理の悪化にも改善の兆しがみられる。米個人投資家協会(AAII)が20日に発表した週次調査では、S&P500が今後6か月で上昇するとみる「強気」な見通しの投資家の割合は21.6%。前週段階での19.1%は2022年9月下旬以来2年半ぶりの低水準だったが、最悪期を抜け出した可能性がある。

またウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の21日の終値は19.28で、3日連続で20を下回った。やはり3日から18日にかけて12営業日連続で20を超えていた状況から不安は後退したようだ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

4月2日の相互関税発動は波乱要因 エヌビディアの株価は週次3.26%安
ただしS&P500の今後の見通しにとっては引き続き、トランプ氏の高関税政策が波乱要因になりそうだ。トランプ氏は4月2日に米国製品に関税をかけている国からの輸入品に対する相互関税を発動する方針。自動車や半導体、医薬品などを対象にした個別関税についても発表する可能性がある。一方、米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、欧州連合(EU)高官は、トランプ氏が鉄鋼とアルミニウム輸入に対して課した高関税への対抗関税の発動日について、当初表明していた4月1日を先送りする可能性に言及した。とはいえ、トランプ氏の相互関税の内容次第では、製造業のサプライチェーンが大混乱に陥るリスクがある。
こうした筋書きへの警戒は半導体株の反発にブレーキをかけているようだ。エヌビディアの株価(NVDA)の21日の終値は1週間前比で3.26%安の117.70ドル。前週の7.97%高で示した反発ムードが薄れた。ブロードコム(AVGO)も週次1.98%安と反落している。一方、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)は週次0.96%高となったが、前週までの5週続落で27.43%安となっていただけに、見通しが明るくなったわけではない。

テスラなど大手ハイテク株も株価下落続く 米国の経済指標もS&P500の見通しに影響
エヌビディアの半導体を大量に購入するなどしてAI開発を進めてきた大手ハイテク株の見通しも暗い。SNS大手メタ・プラットフォームズ(META)の株価は21日までの1週間で1.87%安となり、5週続落。18日につけた582.36ドルは2月14日の最高値(736.67ドル)から20.95%安の水準だった。また、テスラ(TSLA)は週次0.51%安で9週続落。株価は2024年12月につけた最高値から半減している。アマゾン・コム(AMZN)も週次0.88%安で7週続落だ。

また米国経済をめぐっては27日に2024年10-12月期のGDP確定値が発表され、28日には2025年2月の個人消費支出(PCE)物価指数も発表される。米国の経済成長の弱まりや物価上昇の根強さが意識された場合にも、S&P500に下落圧力がかかる展開が考えられそうだ。
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