米国株、上昇勢い不足 S&P500最高値失敗 エヌビディア見通しに光
S&P500は週次で3週ぶり上昇。エヌビディアも急落からの復調を進めた。しかし最高値更新には失敗しており、勢い不足も感じられる。
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アメリカの株式市場の上昇にためらいが感じられた。S&P500種株価指数の14日の終値は1週間前比で1.47%高となり、3週ぶりに反発。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)も1月以降の急落からの復調を進め、見通しが明るくなってきた。しかしS&P500の14日の終値は目前に迫っている最高値更新には届かず。14日発表の1月の小売売上高は市場予想を大幅に下回る結果で、米国経済の先行きに対する不安を感じさせている。また、投資家が期待する米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げにはドナルド・トランプ大統領の経済政策運営が障害となる可能性もあり、S&P500の今後の見通しが上向くには後退傾向にある企業業績への期待回復が求められそうだ。
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アメリカのS&P500は週次1.47%高 3週ぶりの週次上昇
S&P500(SPX)の14日の終値は前日比では0.01%安の6114.63だった。週次での上昇はトランプ氏の大統領就任直後の言動が歓迎された1月20-24日週(1.74%高)以来、3週ぶりだ。S&P500はこのところトランプ氏の高関税政策への警戒もあって値下がり傾向だったが、トランプ氏は米国製品に関税をかけている国・地域に対する「相互関税」について交渉の余地を残しているとみられ、過度な不安は後退している。
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エヌビディアの株価は急落の3分の2を回復 見通しに明るさ
こうした中、1月下旬に急落に見舞われたエヌビディアの株価(NVDA)も見通しに光がさしてきた。14日の終値は週次6.94%高の138.85ドル。3日につけた直近の安値から22.11ドルの値上がりとなった。エヌビディアの株価は中国の人工知能(AI)開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」への脚光などを背景にして1月6日の最高値(149.43ドル)から直近の安値まで32.77ドル(21.93%)下落していたが、約3分の2を取り返したことになる。エヌビディアは26日に2024年11月-2025年1月期決算発表を予定しており、好業績への期待が株価上昇を後押しすることも考えられそうだ。
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エヌビディア以外の半導体株では、ブロードコム(AVGO)が週次3.63%高、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も週次5.15%高となった。一方、S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)は週次1.83%安と冴えない値動きだった。
ただ、S&P500が週次での反発を果たしたとはいえ、14日の値動きには上昇へのためらいも感じられた。S&P500は前日の終値段階で1月23日につけた最高値(6118.71)まであと0.06%の上昇で到達する水準。14日の取引時間中には最高値を超える時間帯も多かったが、取引終了にかけて失速した。最終的には期待された最高値更新に失敗しており、上昇見通しが強まったとはいえない。
1月の小売売上高は予想を裏切る悪さ 物価上昇への不安もくすぶる
また、このところの経済指標は米国経済の変調も感じさせている。14日に発表された1月の小売売上高は前月比の伸び率が0.9%減となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.2%減を大幅に下回る結果。自動車・部品を除いたベースでも0.4%減で、市場予想の0.3%増を裏切る結果だった。さらに12日発表の1月消費者物価指数(CPI)の伸び率は市場予想を上回る大きさ。1月小売売上高で示された消費の弱さとあわせて考えれば、物価高が消費減速につながる悪いシナリオも浮かぶ。
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一方、13日に発表された1月卸売物価指数(PPI)の結果は、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数を大きくは押し上げないとも受け止められているが、米国経済の見通しが明るいとばかりはいえなさそうだ。
テスラは4週続落 企業収益への期待低下はS&P500の見通しに影
こうした中、エヌビディア以外の大手ハイテク株の値動きには弱さもみえる。テスラの株価(TSLA)の14日の終値は週次1.60%安で、4週続落。マイクロソフト(MSFT)は週次0.32%安の3週続落、アルファベット(GOOGL)も週次0.06%安の2週続落となった。逆に、2024年10-12月期決算発表が好感されたメタ・プラットフォームズ(META)は14日までの20営業日続伸で週次3.10%高となり、4週続伸となっている。
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経済見通しへの不安がくすぶる中、企業収益への期待も後退傾向だ。ブルームバーグによると、S&P500構成銘柄の今後12か月の予想収益に基づいた1株当たり利益(EPS)は258ドル台で推移しており、1月中旬につけていた264ドル台からの低下が進んでいる。
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経済の不調には、FRBの追加利下げへの期待を高めてS&P500の値上がりを後押しする側面もあるが、様子見姿勢を示しているFRBが利下げに前向きになるかは不透明。米国の物価はトランプ氏の高関税政策や減税路線で上昇圧力がかかることも考えられ、FRBが利下げに慎重になる筋書きも想定される。米国経済への不安やトランプ氏がもたらす不確実性が今後の見通しを揺らす中、S&P500が最高値を大きく突破するにはエヌビディアなど大手ハイテク企業の業績への期待復活が待たれそうだ。
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