米国株、見通し不安継続 S&P500反落 エヌビディアに規制強化か
S&P500は29日に反落。中国のAI開発が火をつけた株式市場への不安が消えていない。時間外取引ではマイクロソフトも下落している。
アメリカの株式市場の見通し不安が消えない。S&P500種株価指数の29日の終値は前日比0.47%安。2日ぶりの値下がりで、中国企業の人工知能(AI)開発が火をつけた下落傾向の継続を感じさせた。29日には米政府がAI開発向け半導体の対中国輸出規制のさらなる強化を検討していると報じられ、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価が下落している。また29日の時間外取引では、AI開発の先陣を切ってきたマイクロソフトの株価も決算発表が嫌気されて値下がりした。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は29日に連邦公開市場委員会(FOMC)を終え、物価上昇への警戒を維持している。AIブームに冷や水がかかり、FRBの利下げの難しさが示される中、S&P500の今後の見通しは晴れない。
アメリカのS&P500は0.47%安 ディープシーク後の反発は続かず
S&P500(SPX)の29日の終値は6039.31。23日につけた最高値(6118.71)からは1.30%安の水準となった。S&P500はドナルド・トランプ大統領の就任を挟んで上昇が勢いづいてきたが、27日に中国のAI開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」が高性能のAIを低コストで開発したとのニュースが材料視されたことをきっかけに見通しが悪くなっている。
エヌビディアは4.10%安 半導体の中国向け輸出規制強化の報道を嫌気
29日のS&P500の下落の背景にはエヌビディアをめぐる悪材料もある。ブルームバーグは29日、関係者の話として、トランプ政権がエヌビディアの半導体の中国向け販売に対する追加的な規制を検討していると報じた。対中輸出向けに性能が抑えられた半導体も規制の対象にする狙いだという。29日の取引ではエヌビディアの株価(NVDA)は前日比4.10%安。ディープシークが材料視された27日に16.97%安と急落した後、28日は8.93%高の反発をみせていたが、改めて見通しが悪くなった。エヌビディア以外の半導体株では、S&P500構成銘柄ではないものの、2月月5日に決算を発表する英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も1.25%安となっている。
FRBは事前予想通りに利下げを見送り 物価の見通しに警戒感
こうした中、29日にはFRBがFOMCを終え、4会合ぶりに利下げを見送り。政策金利を4.25-4.50%で維持した。米国経済の堅調さが続いていると同時に、物価上昇率が目標とする2%に向かいつつも、「いくらか高め」となっているためだ。ジェローム・パウエル議長は記者会見で、2024年9月から12月にかけての3度の利下げで政策金利が1.00%ポイント下がったことを踏まえ、金融政策の現状は「以前に比べて引き締め度合いが大きく低下している」と指摘。「金融政策の調整を急ぐ必要はない」と述べた。
また、パウエル氏は記者会見で、31日に発表される12月の個人消費支出(PCE)物価指数について、総合指数の伸び率は2.6%となり、前月(2.4%)から物価上昇が加速するとの見通しを示した。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は前月と同じ2.8%になるとの予想だ。パウエル氏の見立てはブルームバーグがまとめた市場予想と一致している。
FRBの利下げ見送りは事前予想通り。ブルームバーグによると、長期金利(10年物米国債利回り)の29日のニューヨーク債券市場での終値は4.530%で、前日とほぼ同じだった。また、CMEグループのデータによると、2025年中に2度の利下げが行われることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間30日午前11時現在で61%で、前日午前の63%程度からわずかに低下した。
時間外取引ではメタやテスラは上昇 マイクロソフトと明暗
一方、29日の時間外取引では、明るい動きもあった。マイクロソフトと同様に10-12月期決算を発表したメタ・プラットフォームズの株価(META)は直前の終値から2%程度上昇。同じく決算を発表したテスラ(TSLA)も値上がりしており、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株への評価が暗転したわけではない。ただし2023年以降の株価上昇の背景となってきたAIブームに不安が広がり、期待されてきたFRBの利下げも見込みづらくなっているという現状は、S&P500の今後の見通しにとっては下落要因として意識されそうだ。
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