米国株、波乱の見通し S&P500週次反落 中国AIはエヌビディアに傷
S&P500は週次1%安。ディープシークの衝撃が影響した。トランプ政権は高関税政策の実施に前進しており、株式市場の不安材料になる可能性がある。
アメリカの株式市場が波乱に見舞われた。S&P500種株価指数の1月31日の終値は1週間前比で1.00%安となり、3週ぶりの反落。27日に金融市場を揺らした、中国の人工知能(AI)開発企業が低コストで高性能のAIを開発したとのニュースの衝撃は、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価を週次16%安に陥れ、傷跡を残した。大手ハイテク株の決算発表への評価も分かれ、株価は勢いづいていない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、ドナルド・トランプ政権が2月1日実施を明言している高関税政策という不安材料もあり、週明け3日以降の株式市場が再び荒れ模様になる可能性もありそうだ。
アメリカのS&P500は3週ぶり反落 ディープシークのショック後は一進一退
S&P500(SPX)の31日の終値は前日比では0.50%安の6040.53だった。週次での下落は12月雇用統計の強さが金利の先高観を招いた6-10日週(1.94%安)以来だ。27日には中国の「DeepSeek(ディープシーク)」のAIがエヌビディアの最先端半導体を使わない開発で高い性能を発揮したとのニュースが米国半導体企業の優位性を脅かすとの見方につながり、S&P500は前週末比1.46%安。その後は反発と反落を繰り返す展開となり、見通しは晴れないままだ。
エヌビディアは週次15.81%安 ブロードコムやアームも値下がり
ディープシークの衝撃は半導体株の不振につながった。エヌビディアの株価(NVDA)は27日に前週末比16.97%安。その後は反発の動きもみられたが、週次でも15.81%安に終わった。米国政府の中国に対する半導体輸出規制が性能が抑えられた製品にまで拡大されるとの報道が、エヌビディアの業績を下押しするとの見通しを強めた。半導体株では、ブロードコム(AVGO)も週次で9.57%安。アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も5.61%安となった。S&P500構成銘柄ではないものの、5日に2024年10-12月期決算を発表する英半導体大手アーム・ホールディングスの株価(ARM)も週次1.83%安となっている。
マイクロソフトは週次6.53%安 メタは6.44%高 決算発表への評価分かれる
こうした中、AIの開発とサービス展開に巨額の資金を投じてきた大手ハイテク企業への評価は分かれた。29日に10-12月期決算を発表したマイクロソフトの株価(MSFT)は週次6.53%安。AIサービスの提供基盤となるクラウド事業の成長が鈍化する中、10-12月期だけで総収入の3割超にあたる226億ドルの設備投資を行ったことが株価の見通しへの不安材料となった。これに対して、同じく29日に決算を発表したSNS大手のメタ・プラットフォームズの株価(META)は週次6.44%高。メタも10-12月期に総収入の3割超にあたる148億ドルの設備投資を行っているが、総収入の伸びが加速したことが安心感につながった。
一方、米国経済の実態をめぐるデータには目立った悪材料はでていない。31日に発表された12月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数が前年同月比2.6%、食品をエネルギーを除いたコア指数が2.8%で、いずれもブルームバーグがまとめた市場予想や米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が示した見通しと一致する結果だった。FRBは29日に利下げ見送りを決めている。また、30日に発表された10-12月期の実質成長率は前期比年率換算で2.3%。7-9月期(3.1%)からは減速したが、個人消費は4.2%と大きく伸びており、株式市場では悪材料視されなかった。
トランプ氏は石油や半導体への課税にも言及 S&P500の今後の見通しに波乱も
ただ、S&P500の今後の見通しをめぐってはトランプ氏の高関税政策という悪材料もあり、投資家の不安材料はくすぶり続けている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の恐怖指数とよばれるVIX指数(VIX)の31日の終値は16.61で、30日から0.77ポイント上昇した。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が高いほどS&P500の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は31日の記者会見でカナダとメキシコに対する25%の関税を2月1日から実施すると明言。中国製品に対しても10%の関税を課すという。ブルームバーグによると、トランプ氏はその後、ホワイトハウスで記者団に対し、高関税政策の加速に言及。「われわれは半導体にも関税を課す。石油やガスにもだ。すぐに実施されることになるし、2月18日になると思っている。鉄鋼にも高い関税を課す」と述べた。
トランプ氏が半導体や石油、鉄鋼への課税を口にしたことは、金融市場で、世界経済のサプライチェーンを混乱に陥れるとの見通しを強める可能性があり、S&P500にとっては逆風といえそうだ。3日には米サプライマネジメント協会(ISM)の1月の製造業景況感指数(PMI)、7日には1月雇用統計が発表される予定で、波乱の展開も見込まれる。
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